人間離れした美技の連続に息をのみ、コミカルな掛け合いに会場が沸く―。
スリルと笑顔が詰まった「木下大サーカス」が2月26日まで、豊見城市の豊崎タウン特設会場で開催されている。今回の「てみた。」は、好評(?)の記者による体当たりシリーズ! 創業115年の歴史と伝統を誇るサーカス団の一員になってみた。
なるか「100人に1人」
編集局きってのアスリートを自負するのりちゃん記者。観覧車で足が震えるほど高所は苦手だが、「一生に一度のチャンス」とサーカスの華・空中ブランコ挑戦に立候補した。
昨年12月末、テント裏の練習場で、高さ3メートルほどの棒を使って飛び出す練習に臨んだ。本番では反対側にいる受け手の腕をつかめば成功だ。指導役の中園栄一郎さんや団員の皆さんに「度胸があるし、女性にしてはセンスがある」と褒められた。気をよくして成功率を聞き、後悔した。「100人いて1人か2人」
本番当日は、朝からの大雨で直前練習が中止に。不安をごまかそうと近所の公園で鉄棒にぶらさがった後、会場入りした。
迎えたクライマックス。挑戦者として紹介され、一心不乱にはしごを登った。スポットライトに照らされた地上13メートルの舞台。観客の視線が一点に注がれる中、バーを握る。心臓はバクバク、脂汗もにじむが不思議と恐怖感はない。「がんばれー」。声援がしみる。観客席のどこかにいる家族の顔も浮かんだ。と、団員に脚を押され、反射的に飛び出す。
風を切り、気付けば目の前に受け手の両腕。必死でつかみかかる。右手の指先が触れたと思った瞬間、ネットに落下していた。一瞬の出来事。だが、今も残像が目に焼き付いている。楽しかった! 皆さんも機会があればお勧めします。
演者と観客つなぐ
運動は苦手、でも楽しいことは大好き。みわっち記者はピエロ姿で夢の舞台に立った。
女性2人組のピエロ、ジェシーとロージーが記者にぴったりサイズの衣装を選び、メーク開始。「照明が明るくて白飛びするからあえて少し暗めに…」。マル秘テクニックを聞きながら、あっという間に赤い丸鼻と眼鏡がポイントのみわっちピエロが完成した。
ジェシーからは「クラウン(ピエロ)は演者と観客をつなぐ役割」とアドバイスをもらい、ロージーには「何より楽しくやりましょう!」と力強い言葉を受け、2人と一緒にステージへ向かった。お客さん、特に小さい子どもにハイタッチを求め観客席にも。突然現れたピエロに戸惑いながらも頑張って手を伸ばしてくれる姿に、こちらも気分が盛り上がる。
できる限りのアドリブで場内をスキップして回ると笑い声と拍手が耳に届く。心から「やってよかった」とピエロの魅力を感じ、特別な一日になった。
社長に聞いてみた。
4代目社長・木下唯志
団員の普段の生活など舞台の裏側はどうなっているのかな? 木下大サーカスの4代目社長、木下唯志社長に気になる質問をぶつけてみた。
Q
年にどのくらい公演しているの?
A
4、5カ所を回り、各地で2カ月少しから3カ月ほど行います。
Q
団員はどんな所で暮らしているの?
A
テント裏に団員たちが居住するコンテナがあります。冷暖房完備で、シャワールームやキッチンを備えているものもあります。
Q
家族がいる人は単身赴任? それとも家族で移動しているの?
A
現在家族で移動している団員は9世帯あります。彼らは家族用のコンテナで生活しています。家族を地元に残し単身赴任をしている人もいます。
Q
住民票はどうしているの?
A
多くの団員が地元に住民票を置いていますが、木下サーカス本社(岡山県岡山市)にしている人もいます。
Q
社長も昔は団員だったと聞いたけど、どの演目に出演していたの? 団員時代の苦労や楽しさは?
A
入団3カ月後から約3年間、空中ブランコに出演していました。仲間と共に練習し、芸を磨いていくことが楽しかったです。体操の経験がなかったので、苦労しました。
Q
団員になるための試験はあるの?
A
腕立て伏せや懸垂などでの体力測定やこれまでの経験などをチェックします。でも、中には体操などの経験がない人もいます。一番重視するのは人柄ですね。
(2018年1月14日 琉球新報掲載)