「エルサゲート」動画、その問題点と対策を考える。 モバプリの知っ得![40]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

 動画サイト「YouTube」に、子ども向けを装い、暴力的・グロテスクな表現をする「エルサゲート」と呼ばれる動画が多数投稿されており、世界中で問題になっています。

 エルサゲート動画は、最初は普通のストーリーで動画がはじまりますが、途中から急変します。例えば正義のヒーローが急に暴力をふるう、お姫様がひわいな動きをする。人形であれば口やお腹から虫が出てくるなどです。

とあるエルサゲート動画では、子どもが正義のヒーローによっていじめられる「児童虐待」と見られる描写も。

 エルサゲート動画では、ディズニーやアメコミヒーローなど子ども向けのキャラクターが使われます。実際の人間がコスプレ用の衣装を使って扮している動画や、人形を使ったもの、粘土を使ったクレイアニメで表現しているものなどさまざまです。

 手法こそ違えど、人気キャラクターを使い、一見すると「子どもに見せても大丈夫」と油断してしまうところがミソです。

 こうした動画を投稿する動機は不明で「子どもにいやがらせをしたい」「再生回数を増やしたい」「こうした動画をおもしろいと思っている」などが予想されますが、いずれにしても倫理的、道徳的に許されるものではありません。

 このエルサゲート問題と前後して、YouTubeでは人に迷惑をかける「過激な動画」も問題となっています。

「過激な言動」に振り回されない。 モバプリの知っ得![39]

 誰でも動画が投稿できるがゆえ人気となったYouTubeですが、誰でも投稿できるがゆえ、問題となる動画も出てきます。

 YouTubeを運営するGoogleの適切な対応を見守りつつ、問題点を意識して利用者側での対策も求められています。

とばっちりを受ける『アナと雪の女王』 「エルサゲート」と呼ばれる由来

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

 こうした暴力的・グロテスクな動画が「エルサゲート」と呼ばれる理由は、日本でも大ヒットした映画「アナと雪の女王」のキャラクター「エルサ」が由来です。

 動画でエルサのコスプレをした女性や人形が度々使用されることから名称が使われるようになり、「ウォーターゲート」「ロシアゲート」などと同じく疑惑・スキャンダルを意味する「ゲート」がくっついて「エルサゲート」です。

 アナと雪の女王を作っているのはディズニーですが、勝手にキャラクターを使用された上に名称にまで使われ、完全にとばっちりを受けています。(そう思いつつ、この記事でも便宜上エルサゲート動画と呼ばせていただきます)

 エルサゲート動画は、英語圏を中心に作られ、広がりました。

 ただし、使用されているキャラクターが日本でも人気であること。また子ども向けで言葉を使用していないものもあるため、日本の子どもたちが見る可能性も十分考えられます。

 また海外と比べて刺激度は低いものの、日本の人気キャラクター、アンパンマンなどのエルサゲート動画も確認されています。

 そのため「海外の話」と対岸の火事でとらえるのではなく、自分ごととして意識すべきでしょう。

見た子どもはどうなる? エルサゲート動画2つの問題点

 このエルサゲート動画ですが、改めて、私は2つ問題があると思っています。

 1つ目は、子ども向けのキャラクターが使われているということ。
 2つ目は、幅広い年齢の人が見るYouTubeに投稿されていることです。

 エルサゲート動画は、子ども向けのキャラクターで過激な表現を用い、視聴している人にトラウマをうえつけます。

 見た子どもが恐怖を覚えると、これからおもちゃ屋さんには入れなくなるかもしれません。
 おもちゃ屋さんはおろか、ショッピングセンターそのものに入ることを拒むかもしれません。

 テレビなどでそのキャラクターが出てくることが怖く、テレビなどが見れなくなるかもしれません。

 刺激を求めていない子どもに不意打ちでショッキングな映像を見せる行為は、大好きで安心できるキャラクターを、恐怖の対象に変え、娯楽を奪うことになる。とても許せるものではありません。

 そしてこうした動画が、大人向けの専用サイトでなく、幅広い年代の人が視聴するYouTubeに投稿されているのも問題です。
 YouTubeには「関連動画」「自動再生」という機能があり、視聴した動画に似ている動画がどんどん再生されていきます。

 エルサゲート動画は子ども向け動画をよそおっているため、初見では「見せてもいい動画かどうか」の判断が、大人でもすごく難しくなっています。
 「最初は問題のない動画を見ていたけど、気がついたらエルサゲート動画に…」となりかねないのです。

 みんな見ているYouTubeで、いつ出てくるか分からない。

これもまた問題です。

子を持つ親のみなさんに特に知ってほしい エルサゲート動画から子どもを守るには?

 こうしたエルサゲート動画が問題となり、YouTubeを運営するGoogleはさまざまな方法で問題の動画を削除しています。

 しかしながらGoogleが頑張って動画を削除しても、次々と投稿する人が出てくるため、しばらく「いたちごっこ」の状態が続くでしょう。

 そのため、私たちユーザー自身での対策が必要です。

 原始的な方法ですが、保護者にできる対策は
「子どもに見せる前に自分で確認してみる」
「そのキャラクターの会社が出している公式の動画を見る」
などでしょう。

 また子ども向けの動画しか見られない「YouTube Kids」というアプリもあります。
このアプリを使っても、エルサゲート動画が紛れ込むことが確認されていますが、通常のYouTubeアプリよりはましでしょう。

 ちなみに、YouTube Kidsは動画視聴のタイマー機能があるため、時間を守った使い方ができるのもオススメするポイントです。

 また、YouTube以外の動画配信サービスを使うなどの方法もあります。

 例えば、通販サイトAmazonが提供する「Amazon プライムビデオ」は月額350円でドラマ・映画・アニメの視聴が可能です。子ども向け作品も充実しています。
 料金は発生しますが、安全な動画視聴環境を買うと思えば安いかもしれません。

 前述したように、YouTubeではエルサゲート動画以外の問題も出て来ています。
 無料で、手軽に見れるメリットはありますが、問題が落ち着くまではユーザー自身で警戒しながら使う必要があるでしょう。

 皆さまが安全で楽しくスマホ・インターネットを使えることを願っています。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」2月4日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/