遺産相続でもめたくないなら…知っておきたい遺言書の書き方①【沖縄の相続】暮らしに役立つ弁護士トーク(12)
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“沖縄の相続問題”のエキスパート・尾辻克敏弁護士の事務所に、10年前に会社を定年退職されたという安次嶺さんが、相談に訪れました。安次嶺さんは、同居するご長男に自宅とトートーメーを継いでほしいようです。

安次嶺さん
私は、会社を定年して10年になります。妻と3人の息子がいます。財産は那覇市の自宅(土地・建物)だけです。
長男家族は、私の自宅に同居していて、毎日孫とも会えて幸せな日々を送っています。長男の一郎に、トートーメー(位牌)を継いでもらうために、自宅をあげようと思っています。
弟の次郎や三郎には残してあげられる財産はないけど仕方ないと考えています。遺言を作ろうか悩んでいるので、相談にきました。

財産の分け方は自由! 決め手は「遺言」

尾辻弁護士
相続について、高齢の方からのご相談で多いのは「遺言」に関する問題です。「遺言」とは、生前に自分の財産を誰にどのように分けるかなどを決めることです。本シリーズではこれまで、相続にまつわるさまざまなケースの解決策として、遺言の作成を紹介してきました。
ご自分の財産を死後にどのように分けるのかは自由です。ただし、それは「遺言」がある場合です。
相続においては、遺言に書かれた内容が優先されます。そのため相続の検討を始めるときには、まず遺言があるか無いか、遺言がある場合にはその内容を確認することになります。
遺言書は3種類! お勧めは「公正証書遺書」

安次嶺さん
遺言はどのように作成すればいいですか。自分でも作れるのですか。

尾辻弁護士
遺言は作成方法や条件が決められているため、それらを守って作成しないと無効になります。そのため、遺言を作成する際には、弁護士に相談して作成すると安心です。
遺言には大きく分けて、〈普通方式の遺言書〉〈特別方式の遺言書〉―があります。今回は、より一般的な普通方式について詳しく説明します。
普通方式の遺言にも種類あります。
ア.自筆証書遺言 イ.公正証書遺言 ウ.秘密証書遺言 ―の3種類です。
アの自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、捺印することによって作成する遺言書です。自筆証書遺言は、安次嶺さんがお尋ねのように、自分一人で作成することができます。
イの公正証書遺言とは、証人が2人以上の立ち合いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に話すなどして、公証人が作成する遺言書です。
ウの秘密証書遺言とは、遺言者が遺言書を作成して、署名・捺印し、これを封筒に入れて封印し、これを公証人1人及び証人2人以上の前に提出して、公証人に認証してもらう遺言書です。
これらの3種類の遺言には、それぞれメリット・デメリットがあります。どの形式を用いるかは個別具体的な状況にもよりますが、私は通常、公正証書遺言の作成をお勧めしています。
相続争いの防止には遺言は大切!

安次嶺さん
遺言の作成が大切なのは分かるのですが、実際どうなのでしょう。遺言を作る人は多いのですか。

尾辻弁護士
まだまだ遺言が作成されているケースは少ないです。「まだ元気だから必要はない」「うちの子に限って相続争いをするはずがない」と言われる方が多いです。
しかし、被相続人の死後、泥沼の相続争いとなり相続で苦労される方がたくさんいるのも事実です。相続争いにより、「清明祭やお盆などに身内が集まれない」といった悩みを聞くこともよくあります。
相続争いを未然に防止するためにも遺言を作成することは非常に大切です。
作成するタイミングは…!?

安次嶺さん
どのようなタイミングで遺言を作ればいいですか。

尾辻弁護士
遺言を作成する時期というのは本当に難しい問題です。自分がいつ亡くなるのか、誰しも分かりませんから。「いずれ作ろう」と考えて、結局作成されないケースも多いのが現状です。
また、作成する時期が遅れてしまい、いざ作成するときに作成者が認知症などになっている場合には、遺言能力(誰に何を相続させるのかを理解・判断する能力)がないとみなされ、遺言は無効になってしまいます。
そのため、遺言を作成するタイミングは早ければ早い方がいいと思います。
安次嶺さんのように、ご自身の相続や子どもの将来を考えるようになったときが作成のタイミングだと思います。

安次嶺さん
早く作成しすぎて、その後、状況が変化したり、財産をあげたい相手が変わった場合、遺言の内容は変更できますか。

尾辻弁護士
遺言は、遺言者の気持ち次第で、いつでも撤回することや変更することができます。実際、親の死後に複数の遺言書が見つかるケースもあります。その場合、日付が新しい遺言が有効となります。
― 執筆者プロフィール ―

弁護士 尾辻克敏(おつじ・かつとし)
中央大学法学部、中央大学大学院法務研究科卒業。司法試験合格後、県内にて1年間の司法修習を経て、弁護士業務を開始。常に相談者の話を丁寧にお聞きし、きめ細やかな法的サービスを的確かつ迅速に提供し、全ての案件に誠心誠意取り組んでいる。
相続問題・交通事故、企業法務等を中心に取り扱う。相続問題では、沖縄の風習や慣習、親族関係にも考慮した適切な解決を心がける。
~法律問題でお困りの際は、お一人で悩まず、私と共によりよい解決を目指しましょう!~
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