SNSアンケート モバプリの知っ得![44]


この記事を書いた人 仲程 路恵
イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

この10年間、スマートフォンとSNSはお互いを補完しあう形で成長してきました。

当初はシンプルだったTwitterやInstagramも機能がどんどんと追加されています。

そうして追加された中に「アンケート機能」があります。

投稿を見ている人が、簡単に投稿できる仕組みです。

特にTwitterでのアンケートは作成も簡単で、慣れると数秒で投稿することが可能。

投票は1人1票で、アンケートの期間中は投票をしなければ結果を見ることはできません(アンケート終了後は全員見ることができます)

投稿したアンケートの拡散しだいではありますが、多いと数万回投票されることもあります。

一見すると、手軽にTwitterで「社会調査」が可能になったと思いがち。

しかしながら「そもそもTwitterをやっている人」「そのアンケートに触れる人」「投票をする人」には一定のバイアス(偏り)があるため、投票結果の取り扱いには注意しなければなりません。

とにかく「偏り」やすいTwitterアンケート

総務省が行なった「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代のTwitter使用率が61.4%、20代が59.9%と半数を超えているのに対し、50代では14.2%、60代は4.6%になっています。

平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

こうして見るとTwitterの利用者は若者が多く、年齢が上がっていくと共に減ることが分かります。

つまりTwitterでアンケートを取っても、結果が若者向けに偏りやすくなるのは必然と言えます。

また、先ほどのTwitter利用調査は「対象者は13歳から69歳までの男女1,500人」を「住民基本台帳の実勢比例」で「全国125地点にてランダムロケーションクォータサンプリングにより抽出」して行われています。

こうした調査を国内の人全員に行うのは難しいため、サンプルを抜き出さなければいけません。このサンプルが偏らないために、バランスよく選ぶ必要があるのです。

Twitterのアンケートでは、投稿を見かけた人が任意で回答をします。

アンケートを最初に見るのは、自分のことをフォローしてくれているフォロワーの人々です。単純に「フォロー=支持者」とは言えませんが、考えや属性が近い人たちがフォローしあっている事が多いため、アンケートを投稿してもそれを見かける人には一定の偏りが出るということです。

さらにはアンケートに答える人も、わざわざ答えるという偏りが発生します。

例えば「○○に興味・関心はありますか?」と社会問題についてのアンケートをTwitterで行なった場合、興味・関心が高い人たちは積極的に「はい」と答えるでしょうし、関心が低い人たちは、(ワンクリックとはいえ)なかなか回答しないでしょう。

その結果、「社会問題に興味・関心が高い」という結果が必要以上に高く出てしまうバイアスが働きます。

こうした形で、Twitterでのアンケートは何重にも偏りやすい構造になっているのです。

エコーチャンバーに気をつけよう

Twitterアンケートで表面化する様々なバイアスの中でも「似たような考えの人たちでフォローしあっている」現象のことを、エコーチェンバー(エコーチャンバー)、サイバーカスケードなどと呼びます。

同じような人たちが集まり、同じような意見を出し合うことで、考えが補完され、さらには精鋭化していくのです。

Twitterのアンケートは、エコーチェンバーによって偏った結果になり、さらにエコーチェンバーでの偏りを高める「望ましくない相乗効果」が発生します。

例えば、現政権を強く支持している人が「今の内閣を支持しますか?」とフォロワーに対してアンケートをとります。すると「支持する95%・支持しない5%」などの極端な結果が出てきます。

逆に、現政権を全く支持していない人が同じ質問をすると「支持する5%・支持しない95%」などの結果になるのです。

両方とも同じ質問をしているにも関わらず、エコーチェンバーの結果、全く違った結果になります。これは政治的な主張・立ち位置を問わず、SNSをやると少なからず発生する現象で、その部分を常に割り引いて考えるバランス感覚が必要になってきます。

偏った果てに一線を超えた政治家

エコーチャンバーによって、まともな「バランス感」を失う人は多々います。

これは政治家も例外ではありません。

今年1月には、和歌山県安堵町の町議が自身のFacebookにて、女性国会議員を名指しし在日コリアンと決めつけた上で「両足を牛にくくりつけて股裂きの刑にしてやりたい」などと書き込み、問題となりました。

町議は「自分の投稿にファンがいて、興奮して書いた」と話しており、問題発覚後に辞職しています。

この町議もFacebookで自分の考えを書き込み、賛同のコメントや「いいね!」と肯定的なリアクションをもらうにつれ、徐々に感覚がマヒし、酷い書き込みに至ったのだと察します。

政治家がSNSを使い、自らの支持者に考えを発信して考えを広めて行くことは今の時代に問われているものかもしれません。

しかしながら支持者の方だけを向き、その賛同に酔いしれてエコーチェンバーを突き進むと、この町議のように一線を越えることになるでしょう。

改めて「アンケート」を疑ってみる

話をTwitterのアンケートの話に戻します。

例えば、アイドルが「髪を切ってショートカットにした方がいいと思いますか?」とファンに聞いて交流する使い方はありです。また、「Twitterで調査した意見です」と最初からある程度の偏りを明示・意識した上で使うのもありです。

しかしながら賛否を踏まえて丁寧に考えないといけない社会問題や、正確性が求められる統計調査には全く向いていません。

そしてピュアに結果を信じ込むと、エコーチェンバーを加速させ、一線を越えることになりますので、Twitterアンケートを見かけた時点で「結果は偏る!」と注意する姿勢が必要です。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月4日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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