外国人観光客に突撃取材してみた。→知らない沖縄が広がっていた。 「てみた。」33


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日本屈指の観光立県、沖縄。沖縄と海外を結ぶ格安航空会社(LCC)や大型クルーズ船の就航も相次ぎ、人気は右肩上がり。わずか10年前までは年間9万6800人だった外国人入域観光客数は212万人(2017年度)に達するなど、ハワイに並ぶリゾートアイランドに成長した。

「外国人から見た沖縄の魅力って何だろう?」。島の善しあしを知り尽くした(?)ウチナーンチュとは異なる感性を持つ外国人観光客に突撃取材してみた。

沖縄観光の定番と言えば、首里城や美ら海水族館を見て回り、国際通りでショッピング。沖縄そばやタコライスを食べ、泡盛で乾杯でしょ!ウチナーンチュが信じてやまない定番がどれだけ外国人観光客に浸透しているのか。実態を探るべく、空港や国際通りなどで外国人観光客74組にアンケートを取ってみた。

えっ、飲まないの…
 

沖縄グルメの中で最も認知度が高そうなのが「沖縄そば」。今回のアンケートでも56組(75%)が「食べた」と回答した。「泡盛」に挑戦したのは31組(41%)にとどまった。

沖縄そばについてはおおむね「おいしい」「また食べたい」など肯定的な意見が寄せられたが、中には「ラーメンの方が好き」「コクがない」などの辛口コメントも…。

泡盛はまだまだ認知度が低いのが実情。欧米やアジアで空前のブームとなっている「SAKE(日本酒)」人気にあやかり、泡盛も今後PRを強化していきたいところだ。


えっ、世界遺産なのに…
 

アジアを代表する美ら海水族館へは51組(68%)が「行った」と回答。「行かなかった」と答えた人も、ほとんどが時間的な都合でやむなく断念していた。回答者の多くが“今回の旅のメーンイベント”に掲げていたというのも納得できる。

世界遺産・首里城に足を運んだのは33組(44%)だった。琉球王朝の歴史などに興味があるというよりも「ツアーに組み込まれていたから」との回答が若干目立ったのが残念だ。

突撃取材を重ねる中で、とりわけ若者の多くがインターネットやSNSで沖縄情報を収集していたこと、観光客が「沖縄で食べたいグルメ」は、必ずしも沖縄料理だけではないということが浮き彫りとなった。口コミやSNSで話題の店を探ってみた。

新定番は「焼き肉」!
 

ラーメンと並び高い支持率を集めたのが「焼き肉」。ブランド牛・豚などを食べさせてくれる高級店がアジア圏の観光客を中心に受けているようだ。

焼き肉の本場韓国出身のリーさん一家も厚切り肉にメロメロ=19日、琉球の牛北谷店

県内に3店舗を構える「琉球の牛」はネットや口コミでたちまち話題となり、客の8割以上を外国人が占める。釜山から訪れたリーさん一家は沖縄旅行の“最後の晩餐(ばんさん)”に同店を利用。脂ののった極上厚切りカルビやロースを堪能した。

一方、小さな子ども連れのファミリー層には1人2千円程度で楽しめる食べ放題が大人気。有名チェーン店などでは連日、昼時となれば店舗前に長蛇の列ができている。

#インスタ映え
 

斬新なアイデアとおしゃれなルックスでアジア圏の女子に大人気。「マーケットSS43」の沖縄カップライス=那覇市の国際通り

若者が流行に敏感なのは万国共通。台湾や中国のおしゃれ女子から絶大な支持を集めるのは、タコライスやゴーヤーチャンプルーなどの沖縄料理をプラスチックカップに詰めたカップライス専門店「マーケットSS43」。

訪れた観光客らはカラフルなカップライスを片手に写真を撮り、インスタグラムに即アップ。

台湾人のアリスさん(21)は「沖縄は絵になるお店が多い。地元の友達に自慢しよう」と声を弾ませた。


ホエールウォッチングも楽しんだウォンさん一家

聖地巡り
 

Tシャツのバックプリントには「沖縄空手」の太文字が踊る。ブルーシールアイスクリームを片手に国際通りを闊歩(かっぽ)するのは米コネチカット州から訪れたノエル・タルマンさん(43)とシド・ワーサンさん(44)。2人は米国で空手道場を営む空手マニアだ。

沖縄旅行の目的はただ一つ、琉球空手のルーツ巡り。初来沖のシドさんは「やっと空手発祥の地を訪れることができた。琉球空手の歴史、文化、精神-どれをとってもファビュラス(素晴らしい)だ」と感慨深げ。ノエルさんも「尊敬する先生方にお会いしたり一緒に稽古したりできて夢みたい」と顔をほころばせる。最も印象深い思い出は首里城での型の演技。「ビーチもショッピングも良いけど、やっぱり琉球空手が最高だよ!」(シドさん)

空手マニアのシドさん(右)のもう一つのお目当ては“金物店巡り”。購入したクジラ型のペーパーナイフを自慢げに披露

暖かい沖縄で待ち合わせ
 

平日の昼下がり。牧志公設市場2階の飲食店でほろ酔い気分で会話に花を咲かせているのは、京都在住のサージさん(36歳、コンゴ人)とオーストリア在住のリンダさん(32歳、ドイツ人)。「最低でも1年に1回は世界のどこかで会っている」という2人は共に医療従事者。学生時代にアフリカで出会って以来、大の仲良しだ。

昼からほろ酔い気分の2人。「カラフルな魚がおいしかった」とリンダさん(左)、サージさんは「今夜こそハブ酒に挑戦するぞ」と意気込んだ=15日、牧志公設市場

今回の旅のテーマは「暖かいところで自然を満喫すること」。今夏に世界自然遺産登録を見据える西表島でトレッキングやマングローブカヤックに挑戦し、石垣島では一足早い海水浴を楽しんだという。「後はひたすらおいしい沖縄料理とお酒を味わい、積もり積もったことを語り尽くすの」

リンダさんがウインクで同意を求めると、2人はビールグラスを付き合わせた。

期待を胸に沖縄を訪れたはずの外国人観光客。ただ実際に旅を振り返ってみると「ちょっと残念…」だったポイントもあったようだ。


「那覇周辺は良いが、中北部までは個人ではとても行けない。タクシーは高いし、本国とは交通ルールが異なるため運転も不安…」

そう話すのはルーマニア出身のエナケ・ラドゥさん(67)。滞在日数が短かったこともあるが、結局中北部の観光や南部の戦跡巡りを断念した。

「県内全域で公共交通機関が充実すれば、もっと多くの若年層バックパッカーや高齢の観光客に旅先として沖縄が選ばれるはずだよ」と助言する。


上海発の大型クルーズ船で沖縄に寄港した米ニューヨーク在住のジュリアさんとスティーブさんのローマン夫妻(共に60代)はWi-Fi環境の整備強化を訴える。

「国際通りから一本入った小道で迷子になりかけたの」とジュリアさん。ニューヨークや欧州の大都市では町中でWi-Fiが使えるといい「観光客はスマートフォンがあれば現在地も確認できるし、母国語で行きたい場所、食べたいものなど何でもすぐにリサーチできる」と話す。

「現地の人との会話も楽しいけれど、やっぱりネットがあれば観光の幅が広がるね」とスティーブさん。


慶良間諸島でスキューバダイビングを楽しんだフランス人のトーマスさん(38)とビンセンティさん(38)は「外国語表記の標識が探せず、とまりんで迷子になり、あやうく船に乗り遅れるところだった」と苦笑い。

トーマスさんは「フランス語までとは言わないけれど、せめて英語、中国語、スペイン語の標識は設置してほしい」と注文した。

ビンセンティさんは「豊かな自然に触れたくて沖縄を訪れる外国人も多い。多言語対応ができるダイビングインストラクターやネイチャーガイドは絶対に重宝するよ」と教えてくれた。

こんな声も…

たばこの煙が充満した沖縄料理店(居酒屋)が多い。家族連れの観光客も多いため禁煙個室を整備してほしい。(Nさん 37歳・マレーシア人)

事前予約をしたが、レンタカーを借りるのに2時間待たされた。日によると思うが貴重な時間を台無しにしたくなかった。(Wさん 42歳・台湾人)

滞在中はサラダと海ぶどうばかり食べていた。豚肉をよく使う食文化は理解するが、宗教的、体質的に食べられない外国人のための選択肢がもっとあればうれしい。(Mさん 22歳・トルコ人)

音楽ガンガンの若者向けダンスクラブではなく40代以上がゆったりお酒を楽しめるナイトスポットが少ない。(Rさん 47歳・フランス人)

 

(2018年3月25日 琉球新報掲載)