マイルドヤンキーが本気の就活!? 沖縄CMものがたり[10] ラジカル沖縄


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 屋外の階段下に座り込む中年男性に、やんちゃな格好の若者4人が話しかける。「え、おっさん。ぬーそーがー(何している?)」。中年男性はおもむろに答える。「リストラ」。おやじ狩りが始まらないかという視聴者の心配をよそに、若者は「元気出せ!」と求人誌を渡す。そして、仲間内で相談し始める。「リストラって何の動物か?」「えとよ」「子(ね)、リス、トラ、卯(う)…」。思わず吹き出してしまうような掛け合いが記憶に残るCMだ。このCMはどうやって生まれたのだろうか。

 印象的なCMを放送しているのは県内で求人誌Rookieを発行したり、求人ウェブサイトを運営したりしているラジカル沖縄だ。やんちゃな格好の若者が登場する「マイルドヤンキー」シリーズの放送を始める2016年11月までは「はたらくってなんですか〜」と子どもたちが歌うCMをメインに打ち出していた。

同じ目線で

「働くことの意義を伝えたい」。ラジカル沖縄はそれまで流していたCMにそんなメッセージを込めていたが、ある疑問も内部で湧き起こっていた。「CMのメッセージが『働きなさい』と上から目線になっていないだろうか。求職者の反発を生んでないだろうか」。CMのリニューアルを考えた際に意識したのが「求職者と同じ目線」。加えて、インパクトを残す内容にしたいという思いが交錯し「マイルドヤンキー」編の構想にたどり着いた。「ヤンキーたちが仕事を探す姿は心に響くはずだし、若い人たちはお笑いが好きなので面白いやりとりにしたら、記憶に残るのではないか」。広告営業部次長の長濱健二さんは狙いを明かす。

どんどん昭和感が…

求人誌Rookieをアピールする(左から)AD・ベンチャーの宮里真作さんとラジカル沖縄の長濱健二さん

 オーディションの結果、FECとオリジンの芸人計4人を出演者に選んだ。撮影日当日の早朝、出演者の髪型がリーゼントやそり込み、スキンヘッドと仕上がっていくのを見て、担当者は「全然マイルドじゃない」と苦笑いしたが「『昭和感』が出ていて、こっちの方が面白い」と好評だったという。

 放送後の反響は大きく、求人広告を出してくれる企業から「CM面白いね」「頑張っているね」と声を掛けてもらえるようになったという。一方で「(内容が)不快だ」という声が寄せられたのも、インパクトが強いがゆえか。放送した年の16年には沖縄広告賞総合グランプリを勝ち取るに至った。冒頭紹介した「リストラ編」は動画投稿サイトYouTubeで4月現在、47万回の再生回数を記録している。

 ラジカル沖縄と関連会社の広告業、ADベンチャーの宮里真作営業部課長は「頑張った分だけ報われるストーリーになっている。就職で県外に行くことを通して成長できるんだと伝わればと思う」と期待した。これからも「求職者と同じ目線」にこだわる考えだ。

(随時掲載)

(2018年4月8日 琉球新報掲載)