その行動はファンとして正しい? 知るべき海賊サイトの正体とはモバプリの知っ得![51]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

漫画やアニメ、ドラマなどを無料で見ることができる「海賊サイト」が問題になっています。

漫画やアニメなどのコンテンツが違法アップロードされており、無料で見ることができるサイトです。
海賊サイトは海外にサーバーを設置し運営者が特定されにくくなっており、検挙が難しくなっています。

コンテンツは、コミックスやDVDなどが売れて制作者にお金が入り、そのお金を元に生活をして次の制作に繋げます。
しかし、みんなが海賊サイトを使い、コンテンツが無料で消費されると、制作者にお金が入らなくなり、次の作品が作れなくなります。

日本の漫画やアニメは国際的な人気も高く、海賊サイトがキッカケで新たな作品が作られなくなると大変です。

こうした問題を解決するため政府は、早ければ今年の秋にも海賊サイトを取り締まる法律を国会に提出することを明らかにしました。
そして法律が制定されるまでの間、特に悪質な3つの海賊サイトにアクセスできなくなる「ブロッキング」をインターネット事業社に求めました。

ブロッキングが行われるとそのサイトにアクセスできなくなるので、そのサイトは潰れることが予想されます。

しかしながら、政府がブロッキングを行うことが憲法21条で定められた「通信の秘密」を侵害するのでは?と反発も出ています。

海賊サイトの対策は、多角的な視点で考えることが必要です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

海賊サイトを使うのはダサい

海賊サイトは、人が作成したコンテンツを勝手にアップロードし、無料で見れるようにしています。この行為は著作権侵害で、違法アップロードに当たります。

彼らがこうした違法行為をしながらも海賊サイトを運営する理由は、広告収入が目当てだと考えられます。
海賊サイトにはいろんな企業の広告が貼り付けられており、見に来た人がその広告をクリックすると、海賊サイト運営社にお金が入る仕組みです。

人様のコンテンツを違法で公開し、自分たちは広告料で儲ける。とても恥ずべきずうずうしい行為です。

消費者の立場からするとコンテンツが「無料」であるのは嬉しい一方、制作者にお金が入らずに、海賊サイトを運営する人たちにお金が入る仕組みは許してはいけません。
「海賊サイトを使うのはダサい、かっこ悪い。」このような意識をみんなが持つことが、この問題を解決していく上で大切になります。

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こうした海賊サイトは昔からありましたが、存在があまり知られていなかったり、使う人もこっそりと見ていました。
それが良かったわけではありませんが、ここ最近の海賊サイトは一見すると「公式サイト」のように見えるデザインに仕上がっています。そうしたデザインの働きもあり、利用者の抵抗感が薄れたためか、利用者が急増し問題が深刻化しています。

ブロッキングと通信の秘密

そのため政府は「海賊サイト対策」としてブロッキングを使おうとしています。

ブロッキングは、インターネット事業社(プロバイダー)がユーザーのインターネット接続先を監視し、ブロックする方法です。

ここで問題になるのが憲法21条で定められた「通信の秘密」です。
通信の秘密では、第三者が電話や手紙、そして通信の中身を見てはいけない、と定めています。

日本では戦中・戦後と検閲が行われており、手紙などは政府(戦後はGHQ)が厳しくチェックし、政府に都合の悪い部分が黒塗りにされるなど、言論統制を行なっていました。

なお、お隣の中国は現在でも通信の秘密がないため、「金盾(きんじゅん)」と呼ばれるインターネット検閲が行われています。インターネットへの書き込み、メッセンジャーアプリでのプライベートなやりとりが監視されており、政府に都合の悪いことを書き込むと、削除される仕組みです。

今回政府は「海賊サイトを撲滅するためで、法律ができるまでの緊急避難でブロッキングを行う」と説明しています。

しかしながら、簡単にブロッキングの実績を作ってしまうと、次からその範囲を恣意的に拡大し、検閲とつながる可能性があります。
確かに日本のコンテンツを守ることは大事ですが、こうした副作用・懸念の強いブロッキングは最終手段・奥の手として使うべきです。

こうした政府の手法に、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)なども反発しており、今後の動向に注目が集まります。

「広告収入」の罠

政府の対応と同時に、こうした海賊サイトが成り立つ仕組みを考えてみましょう。

違法にも関わらず、このようなサイトを運営する理由は、広告収入が理由と考えらます。
Webサイトに広告を貼り付け、閲覧者がアクセス、あるいは広告をクリック、またはクリックした先のサイトで商品を購入することで広告収入として売り上げになります。

こうした仕組みは海賊サイトに限らず、大手メディアを中心にほとんどのWebサイトで使われています(この琉球新報Styleもそうですね)

広告収入の仕組みがあるため、私たちはネットで多くの記事を無料で読むことができる一方、「お金を稼ぐためならなんでもする」人たちが、違法アップロードで海賊サイトを立ち上げたり、意図的に嘘を流して注目を集めるフェイクニュースサイトなどを運営しています。

今回の一連の騒動では、違法アップロードを行ってコンテンツ市場を破壊する海賊サイト、「通信の秘密」を侵害する恐れのあるブロッキング、アクセスがお金になる広告収入それぞれに問題があり、それぞれ別個で考える必要があるでしょう。

引き続き、海賊サイトと政府の対応を注視しつつ、多角的な視点から考えてみましょう。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」4月22日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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