沖縄美人(16)サンゴも美も守りたい! 社会起業家・呉屋由希乃さんが沖縄の海から始めた挑戦

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加

社会起業家として国内外を飛び回る沖縄市出身の呉屋由希乃さん(38歳)。「サンゴに優しい日焼け止め」の開発・販売を通して、海や環境を守るためのチャレンジを続けています。活動の原点となった出来事や願い、ひたむきでエネルギッシュな生き方に迫ります。

◇聞き手・朱瞳碧晃(ビューティーライター)


人生を変えた出来事は?



3年ほど前にシュノーケルをするため座間味島へ行った時、日焼け止めを塗って海へ入ろうとしたら、ダイバーの方に「サンゴが死んじゃうよ」と言われたのがきっかけでした。自分の何気ない行為がサンゴにダメージを与えていると知り、ハンマーで殴られたような衝撃を受けました。

日焼け止めの害について、すぐにインターネットで調べてみました。日本語ではなかなか探せないのに、英語で検索すると200~300倍の情報が出てきたんです。日本では、日焼け止めの害からサンゴを守る取り組みを見つけられなかった事実にショックを受けました。

海外ではサンゴに優しい日焼け止めがたくさん売られているのに、観光資源でもあるサンゴの海をもつ沖縄には一つもなかった。「サンゴに優しい日焼け止めを作らなくては」という強い衝動に駆られました。

私がサンゴに敏感に反応したのは、10代の頃に海から自信をもらっていたからだと思います。よく海へ行き、魚と戯れることが好きでした。沖縄県外の友人をシュノーケルに連れて行っては自分のことのように自慢していましたね。社会的ステータスも何もない自分に自信を与えてくれたのがサンゴ礁の海だったんです。でもその行為がサンゴを傷付けていたと知り、居ても立ってもいられなくなりました。

別のブランドでオーガニックコスメを手掛けていたので化粧品の知識は多少ありました。だから、サンゴに優しい日焼け止めとなると原価が高くなること、啓蒙PRも大変で、他のブランドが取り掛からない理由も知っていました。

だからこそ「自分でやるしかない」「みんなに使ってもらえるように量が少なくても安いものを作りたい」と考え、ビーチの入場料で買える商品を考案し、2017年に商品化しました。JTAの機内で販売がスタートし、最近ではオーガニック&アロマ ペタルーナの全店舗、ビーチやホテルのアメニティーなどでも少しずつ扱ってくれる所が増えてきました。


活動に込めた願いは?



サンゴに優しい日焼け止めを使うことで、自然とサンゴに優しくしようという気持ちになります。そこから「サンゴって何?」という疑問が湧いて、考えるきっかけになる。すると、海でもサンゴを踏まないように気を付け、サンゴに優しくなる人が増える。日焼け止めの害が気になると、他のことも気になりはじめます。例えるなら、意識の柱を植えることだと思います。

沖縄では下水処理が機能していない離島が多いのですが、無理のない範囲で楽しく、できることからやっていけたらいいと思います。

環境の話は面白く、「一緒に良くしていこう」と心が通じ合ういいトピックになります。特に海外ではそうです。サンゴに優しい日焼け止めを通して、沖縄から“海モラル”を発信していきたい。沖縄でサンゴに優しい日焼け止めの存在を知り、自国でも取り組もうと考えてくれたら、その国にとってもいい影響になります。沖縄から環境的なインフルエンサーが増えたら面白いと思います。

ハッピーでいるためにしていることは?

すべてにおいて明るく取り組むことです。そして、いい人や優しい人、ハッピーな人、志が近い人と付き合うようにしています。できる限りネガティブ要素を入れないこと。これは、無理な付き合いで体を壊した経験から学んだことです。

悩むと老けるので女性の大敵です。私のシワを増やさないでと思います(笑)。だから無理して人と付き合わないこと。勉強になる人、好きな人と一緒にいるのがベストだと思います。

座右の銘は?

「コツコツ」です。何事も時間がかかると理解していると大変なことでも続けられます。結果がすぐに出ると思わないこと。私はゆるい性格ですが、難儀だけど勉強だと思って続けています。前向きじゃないけど文句を言いながらもやっている(笑)。やるべきことをコツコツ積み上げていくことが大事だと思います。

サンゴに優しい日焼け止めを開発・販売する事業は、「今やらなければ間に合わない」「絶対に深刻な環境問題になる」という使命感に駆られてやっています。サンゴが無くなると人間が困るんです。

実は、サンゴにはアマゾンと同じくらいのCO₂削減能力があります。日焼け止めが原因で、何億年かかってつくりあげられた自然が30年で半分が死滅したとの指摘を聞いたことがあります。アマゾンが半分焼けたら世界中が注目するのに、サンゴが失われても誰も気にしないのは、その事実を知らないからです。

そんな事実を誰にでも分かりやすく伝え、広めてくれる人が必要だと思います。サンゴが増えたら、魚も増えてたくさん獲れるようになり、自然災害も減り、生活は豊かになります。単にサンゴが美しいから守ろうではなく、世界的に深刻な問題として取り組む人が増えることを願っています。

だからこそ、もっと自然の中に遊びに行くことをお勧めしたいです。自然に触れていないと環境の変化が分かりませんから。世の中には何かを良く変えようと一生懸命な人はいっぱいいます。そんな人と話すと楽しいですし、好奇心を持って話を聞くと自分の世界が広がります。いいと思う価値観を取り入れて、みんなが幸せになってくれたら嬉しい。自分にできることからゆるく取り組むこと。ピンとくるものを続けていけばいいのではないでしょうか。


理想の女性像は?


バランスのとれた女性です。いつもニコニコ、ストレスも上手に解消でき、常に学ぼうという姿勢を持っている。そんな女性からは学びがあり刺激をもらえます。

世の中はとても広いのに、世間を知っているフリをする人や、自分が全て持っていると思っている人はもったいないと思います。後輩に厳しく当たる人も意味が分かりません(笑)。自分より人生経験が浅い人に「こんなこともできないの」というのはナンセンス。分からないことは教える。そんな心の余裕がある女性を目指しています。

これまで「女性の美」に携わる仕事をしてきましたが、女性は笑顔が一番。ニューヨークに住んでいた頃、メキシコ人の友人に可愛いなと思う子が多かったのですが、彼女たちの共通点は「いつも笑顔」だったと気付きました。すごく苦労しても笑顔って、その人のカルチャーだと思います。もちろん人間なので笑顔でいられない時もあって、どんな時も、とは言いませんが、できる限り考え方はプラスでいたいものですね。


理想のパートナー、好きな人のタイプは?


優しい人です。一緒にいて楽しい人と明日も明後日も会えるといいかな。優しさって強さだから。自分よりも相手に優しくできる人に惹かれますね。思いやりや配慮は大切です。女性として包まれていない感は許せません(笑)。やっぱり心根の優しい人が好きです。優しさに包まれてこそ、女性はキレイになれると思います。


落ち込んだ時の対処法は?


寝ることです(笑)。落ち込んだ理由を頭の中で解決しないといけないので、理由を理解してこれからどうすればいいのか考えます。私は寝ている間にプロセスを考えているみたいで、起きるとスッキリしているんです。

すっきりしない時は人に相談もします。それでも答えが出ない時は本屋へ。悩んでいるトピックの本を探して、どうクリアしたらいいのかを探ります。ラッキーなことに本をくれる友人も多く、もらう本が素晴らしかったりします。

どうしていいのか分からず、パニック状態の時には、頭の中を整理するために悩んでいることを全部書き出します。サンゴに優しい日焼け止めの事業を始めていいかどうか悩んだ時もそう。生半可な気持ちではできないと分かっていたので、清水の舞台から飛び降りる覚悟を決めて取り組みましたが、覚悟した通りの苦労が待っていました(笑)。でも、いろいろなミッションができ、見聞も広がりました。

事業を始めて人を紹介されることが増えましたが、繋がる人には気を付けています。権力やお金があるかではなく、いい人かどうかを確認します。忙しいので人的ストレスは減らしたい。いい人だけを紹介してもらえるよう努めています。志が近い人が協力してくれるようになり、その協力者の皆さんを親しみを込めて“サンゴ友達”、その中でもサンゴ養殖の第一人者の金城浩二さんは私のスーパーヒーローなので “サンゴ先輩”と呼んでいます(笑)。

一生懸命やっていても批判されることもあります。やはり言われ過ぎると何もできなくなってしまう。厳しくても愛情を感じる助言なら聞きますが、協力してくれない人からの批判はきついんですよね。だから仲間を増やすことです!

何度も心が折れましたが、クラウドファンディングを通して応援してくれるようになった250人のサポーターが背中を押してくれました。支援してくれた人々の存在、自分を信じてお金を出してくれた人を裏切れないという思いが、前に進む勇気をくれました。これまでの人生でこんなに大きな勇気をもらえたことはなかったので、とてもありがたく、本当に感謝しています。

チャレンジしたいことは?


サンゴに優しい日焼け止めのコンセプトを日本、そして沖縄からアジアに広めたいです。アメリカやヨーロッパでは既に浸透していますが、アジアではまだまだ。多くの国と関わることはビックチャレンジですが、できない理由はないと思っています。

日本で認めてもらうには、まず海外で認められることも必要です。今後はタイに拠点を置き、タイで広めながら、フィリピンなどASEAN諸国に普及させたいです。リゾート好きな人がプーケットやモルディブ、パラオ等の観光拠点でサンゴが大切だと気付くことができれば、沖縄に来るときにもサンゴに優しい過ごし方をしてくれるはずです。そうなれば、観光客が増えても沖縄の海は汚れないし、サンゴも踏みつぶされません。意識的に「サンゴに優しくしよう」と思う人を増やすことにつながるのではと考えています。

沖縄という観光立県で生まれ育った私だからこそできることがある。この事業も、お金もなかったのにアイデアを人に話すことで始めることができました。「やろうと思えばできる」という実績があるので、お金がないのはもう理由にできません。千里の道も一歩からです。経験がないなら経験の一歩を踏み出せばいいんです。

自分が言い訳をした時は、なぜこの言い訳をしたのか理由を考えてみることです。私は鍵っ子でしたから一人で考える時間が多く、親の意見を聞く習慣が自分の中にありませんでした。先生の言うことを聞こうと思ったこともありません(笑)。自分がなぜ、そんな思考になるのか考え、読み解くのは大事だと思います。


一押し美容法は?


食べ物に気を付けています。悪い油をとるとすぐニキビができてしまうので、フレッシュないい油をとるようにしています。

眉間のシワやたるみは、顔ヨガの動画を見ながらすぐに対処します。顔って筋力だから、頬のたるみや法令線は化粧品など外からのものではよくならないと思います。広告に踊らされず、自分で検証してみるのもいいですよ。

私は普段、肌に負担のあるケミカルなものは一切使いません。明らかに違うからです。ファンデーションも紫外線吸収剤が入っているものや、洗浄力が高すぎるものも使いません。世の中、刺激が強いものが多いんじゃないかと思うくらい合わないものがいっぱいあります。以前エステに行った時もひどい状態になって帰ってきたこともあって(笑)。

私自身、日焼け止めで肌荒れするタイプなので、「日焼け止めがサンゴに悪い」と聞いて、すぐに理解できたんです。サンゴと一緒で「肌に優しく」が私の美容の基本です。


呉屋 由希乃(ごや・ゆきの)

大学休学中に東京でイベント会社を起業し中退。その後、結婚を機にニューヨークへ移住、個人バイヤーとしてウェブ販売を経験した後、地元沖縄に戻りアパレルショップを開業。

ある時、日焼け止めがサンゴに害を与えていると知り、観光と環境の問題に取り組むべく8年間経営した店舗を売却。「サンゴに優しい日焼け止め」をつくるため、クラウドファンディングで資金を募り2017年に製造・販売を開始した。サンゴの美しい慶良間諸島など離島を中心に啓蒙活動や販売に取り組んでいる。

沖縄市立美東中学、沖縄県立南部商業高校卒業 、琉球大学中退。

2017年DBJ女性新ビジネスプランコンペティションファイナリスト 
東京都女性ベンチャー成長促進事業 APT Women第1期生 

 


【インタビュー後記】

信念を貫き、社会の問題に前向きに挑み続ける呉屋由希乃さん。そのひたむきな情熱に胸が熱くなりました。語り口から感じられる強さと優しさ。客観的な分析、冷静な判断、勇気のある決断。それらは社会起業家としての経験から培われた強さなのかもしれません。

パフォーマンスがもてはやされる昨今。実際に行動し、努力している人の言葉には説得力があり、人を動かす力があるということを改めて気付かされました。「言葉には真実が宿る」。そう思いながら、社会全体を良くしていきたいと願う呉屋さんの生き方に尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。

(記事、写真 朱瞳碧晃)

 



朱瞳碧晃

朱瞳碧晃(あやとうみき) 

ビューティーライター、フォトグラファーとして活動。美魔女フォト(ヘアメイク込)、出張撮影、HP・広告用の商用写真撮影やセールスライティング代行を行う。

リポーター経験より、白霧未來でイベントMC、披露宴司会としても活動中。



(月1回掲載)



前の記事「セクハラ」報道を受け絶対にやっ...
次の記事沖縄県警察に潜入(?)してみた。...