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改憲なら家族も変わる? 100cmの視界から―あまはいくまはい―(23)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 5月3日は憲法記念日。普通に生活していると憲法について考えることは少ないし、憲法と聞くだけで難しいと感じがちです。でも憲法は私たちの生活に深く関係しています。そして現政権は憲法改正に取り組もうとしています。その案を見て、私はショックを受けました。

GW、みなさんは何をしますか?私は子ども二人を連れて、自然を楽しみたいです(撮影・佐藤健介)

 今の憲法24条では「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」ですが、改憲草案では「のみ」が削除されています。私は結婚の時、夫の親戚一同から大きな反対を受けました。何度も話し合い、説得を重ねましたが、理解を得ることはできず、結婚式では夫の両親・親族は誰も参列しませんでした。私たち二人の意思が一番大切だと信じ、悩みながらも貫きましたが、憲法草案ではそれが軽視されていて複雑な気持ちになります。

 同じく24条の草案には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければいけない」が新設され、「家族、扶養、後見」という言葉が追加されています。つまり、家族で支え合うことが大事だと書かれているのです。私は障害があり、1日10時間ヘルパーに来てもらい生活をしています。ヘルパーがいるからこそ、ご飯が食べられるし、子育てができています。もし家族で支え合うことや、扶養が重要視されたら、ヘルパー制度そのものがなくなるかもしれないと危機感を募らせました。

 もちろん、家族で助け合うことは大切です。でも、障害があるとあまりにもできないことが多く、それを家族だけでカバーしていては、家族は仕事をはじめあらゆる生活が制限され、介護で倒れ、障害のある人は家で生活することができません。結婚においても、障害者と結婚すると、パートナーは面倒を見ることが義務になり、夫婦は「パートナー」というよりも、「介護する側・される側」になってしまいます。子どもをもつ選択も難しくなります。障害者がいる家族だけに限らず、他の家族でも、家族以外に助けを求められないので、よりワンオペ育児が増え、虐待される子どもも増えるかもしれません。そこまで想像するのは考え過ぎ? と思う人もいるかもしれませんが、私は草案を読んでとても怖くなりました。

 私は、私の生活を守るため、草案のように改憲するのはやめたい、と強く思います。今、私ができることは、改憲反対の候補者に選挙で一票を投じること。そして思いを口にし、仲間を増やすこと。みなさんも一緒に「理想の生活」を思い描きながら、憲法について考えてみませんか?

(次回は5月14日に掲載します)

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2018 年5月1 日 琉球新報掲載)