思わずみんな歌っちゃう 沖縄CMものがたり[11] まえさと


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♪「まえさとね〜 まえさとね〜 豆腐、こんにゃく、太モヤシ〜」

 メロディーを聴けば、思わず「ところてん!」と合いの手を入れたくなる。

 食品業のまえさと(西原町、前里雅也社長)のコマーシャルは約20年にわたり放映が続いている。2006年に架空の合唱団が歌う「合唱編」としてリニューアル。09年には「まえさとファミリー」が登場した。まえさとのバラエティー豊かな商品とともに、おなじみのテレビコマーシャルは県民の食卓をにぎやかにしてきた。

合唱団の正体は?

 まえさとの前身である「前里商店」は1952年に那覇市で創業した。創業時は主にこんにゃくやしらたきを製造し、農連市場などで販売していた。83年にモヤシとカイワレ、2001年に豆腐の製造と販売も始めた。前里社長は「初めはこんにゃくなどの商品を紹介するコマーシャルだったが、扱う商品の種類が多くなったので『まえさと』のコマーシャルを制作した」と話す。

 コマーシャルソングの原曲が生まれたのは約20年前。取り扱う商品が増えるとともに歌詞も変わっていった。元々は「こんにゃく、カイワレ、太モヤシ〜」だったというが、「『ところてん』を入れるのを忘れ、差し込む形になったらしい」と前里社長。06年のリニューアル時には「豆腐」が加わった。

 同年の「合唱編」では合唱団が見事な歌声を披露した。一体、何者なのだろう? コマーシャルを制作したBBDO J WEST沖縄支店の担当者によると、県内のとある小学校のPTAのメンバーが、口パクで歌っているという。

理想のファミリー

自慢の商品を紹介する前里雅也社長=7日、西原町のまえさと本社

 09年4月から放映中のコマーシャルでは「まえさとファミリー」が登場し、仲良く手をつないでおなじみの歌を歌っている。登場人物は当初、母親と息子、犬だけだった。「今は男性も料理をする時代。父親も登場させ、ファミリーが増えていった」と担当者。

 まえさとファミリーには細かなキャラクター設定がある。32歳の父・正志は釣りとキャンプが趣味のアクティブタイプ。30歳の母・陽子の手料理のおかげで会社の健康診断はいつも優良らしい。ポケモン好きの長男・海斗は7歳で、飼い犬シロの散歩が日課だ。4歳の長女・夏美はお手伝いをするしっかり者。4人の好きな食べ物はところてんに豆腐、モヤシのキムチあえなどで、まえさとの商品が多く食卓に並ぶようだ。犬のシロはドッグフードが好物という真面目さも笑える。

 数年前にはテレビから歌が流れると子どもが泣きやむと口コミで広まり、「DVDが欲しい」との問い合わせが何十件も寄せられることもあった。前里社長は「昼の時間に流すせいか、子どもを中心に浸透している」と話す。沖縄の食卓の定番商品と同じく、ご当地コマーシャルの一つとして親しまれているようだ。

(随時掲載)

(2018年5月13日 琉球新報掲載)