内閣府が募集していた「国政モニター」制度のサイト上に、在日コリアンへの差別的なコメント、特定政治家への誹謗中傷が掲載されていたことが問題となっています。
コメントの存在が知られたあとからサイト上では全てのコメントが見られなくなりました。しかしながら公的機関、しかも内閣府のサイトに堂々と差別的な言説が掲載されていた事実は重く、私たちもしっかりと考えなければいけません。
国政モニターとは?どうして掲載されたのか?
問題となった国政モニターは、内閣府政府広報室が行なっていた、国民の意見を聞いて政策の立案や実地の際に参考にするという企画です。
モニターはインターネットで募集され抽選で決まります。選ばれた人は、国や地域への意見を自由に投稿し、それがサイトに掲載されるという仕組みです。国政モニターは2012年度から始まり2016年度まで続き、終了後もサイトにはコメントが掲載され続けていました。
事態が動いたのは4月30日。個人ブログ「ロジ・レポート」が“差別デマを拡散する内閣府のプロパガンダ装置”というタイトルで、国政モニターに差別的なコメントが掲載されていることを指摘しました。
このブログ記事がネット上で拡散し問題視されました。国政モニターのサイトは5月2日に閉鎖され、現在は全ての投稿が見れなくなっています。
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今回問題視されているのは、差別的な言説や誹謗中傷。例えば在日コリアン、中国人を敵視するコメントです。
“国会前で12万人(主催者発表)が集まったデモをテレビ各局は「国民の声」として取り上げ、繰り返し報道する。悔しいです。決して本当の国民の声ではありません。民主党をはじめ売国勢力がここまで必死で潰そうとするのですから、何としても法整備を整えなければならないのだと、より一層思わされました。「日本を日本人の手に取り戻す。」これ以上、在日朝鮮・中国人やその本国の利益のために日本が利用されてはなりません。日本と日本人を正しく守れるように、先ずは安保法案が国会で成立されることを願っています。
(栃木県 女性 50代 主婦)”
元投稿URL:https://monitor.gov-online.go.jp/report/kokusei201504201603/detail.php?id=897599
※現在は「https://web.archive.org」にて遡って確認が可能
https://web.archive.org/web/20180430115045/https://monitor.gov-online.go.jp/report/kokusei201504201603/detail.php?id=897599
こうした差別と沖縄の基地反対活動を混ぜて、問題視した投稿もあります。
“帰化したのに、何故か民族の誇りと称して反日行為に勤しむ国会議員や在日2世・3世が居るが、こんなのは放置してはいけない。最早五族共和を目指した戦前ではなく、大戦により各国が独立の契機としたのは、民族自決、日本で言うならば日本民族であって、韓国朝鮮人・中国人は含まない。移民国家米国と異なり、日本の地で生まれてもそれは変わらない。嫌なら自分の民族国家へ帰るのが、民族自決主義の本旨。ヘイトではない。米国ではグリーンカードを貰う時に聖書に手を置いて米国に忠誠を宣誓する。日本国籍を付与する時はどうか。指紋押捺を免除するのは言語道断、再開すべきだし、大使を帰任させている戦争状態一歩手前の韓国や国交のない北朝鮮に遠慮することはない。入国にはビザを必要とし、入国拒否乱発でも可。沖縄の基地反対は中韓人ばかりというようなことを招かない様、断固として本国送還すべし。
(神奈川県 男性 50代 管理職)”
元投稿URL:https://monitor.gov-online.go.jp/report/kokusei201702/detail.php?id=1297725
※現在は「https://web.archive.org」にて遡って確認が可能
https://web.archive.org/web/20180501081551/https://monitor.gov-online.go.jp/report/kokusei201702/detail.php?id=1297725
国政モニターでは上記した2つ以外の投稿にも、差別的・攻撃的な言説・誹謗中傷などが多数掲載されていました。
この国政モニターでは留意事項として「誹謗中傷、差別的な内容などは公表しません」と明記されていました。行政機関が運営するサイトであれば当たり前です。
しかしながら、差別的な言説は掲載されてしまいました。チェックをせずに載せたのであれば管理体制が問われますし、チェックをした上で載せたのであれば、国が差別や偏見の助長を後押したことになります。
インターネットは差別に満ちている
「公的機関に掲載された」ということで問題となりましたが、インターネット上にはこのレベルでは済まない、差別的な言説や誹謗中傷が多く転がっています。
こうした差別のターゲットとなるのは、経済的に恵まれない人々、女性、外国人・外国にルーツを持つ人や、障がいを持った人々やセクシャルマイノリティ当事者などなどです。
また当事者でなくとも、こうした人たちに理解を示したり、後押しする活動をしている人たち(弁護士やNPO団体など)も誹謗中傷の対象となることがあります。
最近では沖縄の基地反対活動をしている人たちも対象に入り、攻撃を受けるようになっています。
ターゲットとなる人たちは、社会的に弱い立場にあるか、少数派(マイノリティー)であることが「事実上」の条件になっています。さらに、上記で挙げたような条件が幾つか合わさった人たちは、より強い攻撃に合う傾向もみられます。例えば在日コリアンの女性、辛淑玉(シンスゴ)さんや李信恵(リシネ)さんはネット上で誹謗中傷され続け、名誉毀損の裁判をしています。
また、このような差別的な言説は、そのほとんどが同じパターンで構成されています。
- こいつらは社会的な弱者を装っているけど
- 本当はお金や特別な権利をもらっている
といった具合です。
しかしながら、この「2」の部分にはデマや詭弁が多く含まれており、「そもそもお金をもらっていない」「話を膨らませている」「特殊な例を一般化する」などがあります。
(例えば生活保護に関して「生活保護は不正受給が横行している!」などの言説がネットに多く出ていますが、不正受給は全体の数パーセントですので、特殊な例を一般化した詭弁ということになります)
こうした差別的な言説を投稿する人たちは、正義感でやっているのかもしれません。国や地域を良くしていこうと考えているのかもしれません。
しかしながらその言説の根拠となるものはデマや流言、あるいは詭弁です。
それらを基に他人を攻撃していいわけはないですし、差別の対象となる「弱い人」「マイノリティー」は追いやられることで、安全・安心を奪われてしまいます。。
「鶏が先か、卵が先か」ではないですが、今回の国政モニターに差別的なコメントが掲載されたことは「国が先か、国民の意識が先か」は分かりません。
いずれにしても、こうした差別的な言説が広がると、いつかは自分や自分の大切な人が対象となり、苦しめられる日がきます。
絶対に加担せず、事実を確認し、広がらないように食い止めることが必要です。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」5月13日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。