「顔出しパネル」巡礼してみた。→なりきる快感にハマった。 「てみた。」44


社会
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昔から観光地などでよく見かける「顔出しパネル」。顔の部分がくり抜かれていて、記念写真を撮れるあれだ。

最近は多様化が進み、マニアも各地に存在するらしい。ご多分に漏れず、観光立県・沖縄も顔パネ天国だ。

今回は「コレクター」のりちゃん記者がちえ記者を弟子に引き連れ、琉装やご当地キャラといった“王道”をあえて外し、地元愛あふれるものや、個性的な顔パネを探す旅に出た。

石垣島が生んだスーパースター・具志堅用高さんの記念館。父の代わりに記念館を管理するようになった具志堅さんの姉・宮里圭子さんが「何か面白いものを置きたい」と2014年に設置した。

観光客にも人気だが、ファイティングポーズをとる具志堅さんの輪郭そのままの形で顔出し部分がまん丸ではないため、はめるのには四苦八苦するという。

今回初めて顔を出したという宮里さんも「やっぱり入れるの難しいね」。

どこを向けばいいのか 笑顔でいいのか…?

具志堅用高さんの姉・宮里圭子さん

うるま市を代表する文化・闘牛と平敷屋エイサーがモチーフになっている。

市観光物産協会に一番古くからいるという職員によると「私が6年前に入ったときには、既にあった」という年季の入ったパネル。闘牛とエイサーの他にもうひとつあったらしいが「台風で飛ばされた」そう。

「メッカ」「伝説の地」の文字に気合いを感じる

京都と滋賀から訪れた下野達郎さん(右)と村岡修明さん

おっぱソフトのパーラー前にあるパネル。何度見てもすごい絵だ。

顔を出す位置、そこで正解?

台湾から家族旅行中だったロジャー・チェン君

「日本最南端の駅」をキャッチコピーに7年前に設置された。ちなみに、日本最西端の駅は那覇空港駅。

穴が小さめなのがかえってリアルさを演出

駅務係の照屋出さん

沖縄市で毎年開かれる「沖縄国際カーニバル」でのサンバパレードから着想したパネルと、ハードロックをコザから発信したレジェンド・かっちゃんとツーショットが撮れるパネルが向かい合って立つ。地域活性化の一環として設置されたもので、そのインパクトで人気のサンバパネルは8年ほど前からあるという。

沖縄市観光物産振興協会の正木ひかるさんいわく「インスタ映えのはしり」。看板を製作した「サイン沖縄」会長の大城貞夫さんにも話を聞いたところ、「サンバの写真は米ニューオーリンズに行った際に撮った写真」とのこと。

かっちゃんと一緒♪

砂川由美子さん

なりきり度が重要!

仲榮眞伸さん

動物ふれあい広場に設置されたパネル。昨年、体験スタッフの照屋みのりさんが先輩スタッフとのアイデアを基に手作りした。照屋さんは「一番、目にする動物はなんだ?人間も動物だよねって半分冗談からできた」という。

人がヒトに顔をはめるシュールさ…

セールス・マーケティング部の外間咲帆さん

センターは「国立研究開発法人海洋研究開発機構」の拠点。顔パネに描かれているのは、同機構の有人潜水調査船「しんかい6500」。この調査船には研究者1人とパイロット2人が乗船するため、顔パネの3人組もそれを表現しているという。

F1レーサーのような2人と白衣1人の構図が気になる…

GODACインタープリターの澤野健三郎さん(左)らスタッフのみなさん

今年4月にリニューアルオープンした「お魚屋」前にある。以前は同じ名前で北谷町漁業協同組合女性部が食堂を運営していた。

描かれているのはガサミとミーバイ。オーナーで漁業協同組合長の妻でもある座喜味あさみさんは大の顔パネ好きで、「変身できるのが楽しい」。娘の百菜さんも「丸い穴があれば(顔を)はめたくなる」と負けていない。

頭にカニを乗せてピース!底抜けの明るさ

座喜味あさみさん(カニ)と娘の百菜さん。
顔で笑って、しかし後ろ姿は真剣だ


東京のテレビプロデューサー・鎮目(しずめ)博道さん(49)は全国約300カ所で撮影してきた、顔出しパネルのマニアだ。愛好家の仲間たちと結成した「顔パネ未来研究所」の所長を務め、ことし5月には「第1回全日本顔ハメシンポジウム」を開くなど、精力的な活動を展開している。

■SNS時代にマッチ

 これほど多くの人が魅了される理由について、鎮目さんは「一つはSNS時代」と指摘する。「インスタ映え」や「盛れるアプリ」などと同じ感覚で、顔パネは簡単に変身願望を満たすことができ、他人の反応を得ることもできる。鎮目さんは「顔パネは昔からあるものだけど、今の時代にマッチしていて新しいコミュニケーションツールとして盛り上がっている」と語る。

■楽しみ方もいろいろ

 パネル前に設置された鏡を使って一人で撮影できるものや、20人同時に顔をはめられるものなどバリエーションも豊富になっているという。楽しみ方も人それぞれで、「パネルに敬意を表し」無表情で撮りだめるマニアや、イベントで楽しさを広めるマニアも。鎮目さん自身は「顔パネは一つの演劇だと思っているので、その世界になりきり演技するのが好き」だそう。

■県産はカラフル

 鎮目さんによると、沖縄の顔パネは線が太く、カラフルで楽しい作品が多いという。「沖縄は顔パネの“聖地”かもしれない」とも。顔出しパネルの甲子園「顔子園(かおしえん)」も構想中で、「沖縄で『うちは顔パネの街だ』と手を挙げてくれるところはないですかね」と笑った。

(2018年7月15日 琉球新報掲載)