未来の種が散りばめられた場所 沖縄県産本☆ バックヤード便り[50]

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加


第50回 未来の種が散りばめられた場所



近くの中学校の生徒さんが職場体験にいらっしゃることがあります。いろいろと質問されるのですが、「書店とは何であるか」「書店で働くとはいかなることか」といった直球が容赦なく飛んできます。次のように答えます。

書店にはいろいろな本があります。料理の本であったり、勉強の本であったり、旅行のガイドブックであったり……。それらが買われていくのは、明日のお弁当をよりおいしく作るためであったり、来週のテストでよりよい点を取るためであったり、来月の旅行をより充実させるためであったりします。つまり書店は、来店される方が、今よりも少し、よりよき未来をつくるための、手がかりが散りばめられた場所であるということです。「書店は、この世界で最も善き場所の一つである」とある作家は言いましたが、それはそうした「よりよき未来の種が散りばめられた場所である」といった意味あいで私は理解しています。そして私たちは、そこで本を買う人が、そうした、いまよりもほんのちょっと「よりよき未来」をつくるためのお手伝いをしている。そんな意識でいます。
 




また、文学と呼ばれるジャンルの本については、こうも言えます。それらは、来週とか来月といった、ある予定された未来のためのものではなく、もう少し広がりをもった「私たちの生き方の可能性の幅」のようなものを教えてくれるものです。例えば、いまから遠い昔や、ここから遠く離れた場所に生きた人々は、どのように喜び、怒り、畏れ、悲しみ、生きていたのか。人間はどれほど深く、どれほど広くものを考えられるのか。あるいは、人間はどれほどのことを受け止め、また乗り越えうるのか。人間は、どんなことを拠りどころとして生きうるものなのか……。そういったことの果てしなさ、あるいは可能性の広がりといったものについて私たちに教えてくれるものです。

あなた方がふだん接する、家族や先生など、身近にいる人たちとは違った生き方や考え方に触れることができると思います。そうしたものは、あなた方がこれからじぶん自身の生き方をじぶん自身でつくりあげていくための、良い手がかりとなる(こともある)と思います。言うなれば、世の中には「ある目的を叶える」ために役立つ本がある一方で、むしろ「目的そのものを自分でつくりだす」ために役立つ本というものがある、ということなのかもしれません……。

まっすぐに聞かれたのでまっすぐに答えたら、「難しいです!」と言われました。そだねー。
 



田中寛行(たなかひろゆき) 1981年生まれ。福井県出身。2015年3月より戸田書店豊見城店店長。さいきん『語る歴史、聞く歴史』(岩波新書)を読み、得るところ大でした。おすすめです★



戸田書店  
http://todabooks.co.jp/sp/ibent/far.php?s=56




前の記事「琉球」に笑顔をくれる街 @ok...
次の記事横澤夏子語る「6年間の婚活で経験...