ティラノサウルス“ジェーン”が沖縄に上陸! 進化の謎に迫る見どころをずらり紹介


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「ティラノサウルス展―進化の謎に迫る―」(主催・琉球新報社、沖縄美ら島財団)が、那覇市の沖縄県立博物館・美術館で開催中だ。全長12㍍に及ぶティラノサウルスや、若きティラノサウルス“愛称:ジェーン”の全身骨格をはじめ、約80点の貴重な標本が展示されている。人気No.1の恐竜・ティラノサウルスの謎に迫ってみよう!

見て、触って太古のロマンを実感 超肉食恐竜・ティラノサウルスの姿に迫る

約6600万年前の北アメリカ大陸で、恐竜たちの王者として君臨した超肉食恐竜・ティラノサウルス。いったいどんな生き物だったのだろうか。その姿や生態、進化の過程を探ってみよう。

11歳と推定される若きティラノサウルス (愛称:ジェーン)の全身骨格

どんな恐竜だったの?

全長12メートル、体重6トンにおよぶ巨大な恐竜・ティラノサウルスが生きていたのは、今から約6600万年前の中生代白亜紀末。現在の北アメリカ西部、ララミディア大陸で、生き物たちの頂点に君臨していた。標本によっては30センチ近くにも及ぶ大きな歯を持ち、頭骨の形から立体視が可能だったことが分かる。獲物との距離を測ることのできる立体視の能力は、ティラノサウルスが優れたハンターだったことをうかがわせる。近年の研究では、肉食恐竜としての能力が非常に高いことが判明し、「超肉食恐竜」とも呼ばれている。

名前の意味は?

ティラノサウルスの正式な学名は「ティラノサウルス・レックス」(映画『ジュラシック・パーク』で使われている「T.rex(ティー・レックス)」は、これを略したもの)。日本語に訳すと、「暴君トカゲの王」という意味だ。

なぜ化石から生態が分かるの?

ティラノサウルスは、約6600万年前をさかいに地球上から姿を消してしまった恐竜。図鑑や映画などで描かれるのは、骨格標本から再現した想像図だ。しかし、残された骨格標本やそのほかの証拠を手がかりに、科学的に推理を重ねていくことで、生態が浮かび上がってくる。「最新の研究成果」が示すティラノサウルスの生態を紹介しよう。

ティラノサウルスの頭部生体モデル(天草市立御所浦白亜紀資料館蔵)

全長12メートルを超えるティラノサウルスの全身骨格の迫力の頭骨(天草市立御所浦白亜紀資料館蔵)

1日に約2キロ成長

恐竜の骨には、「成長停止線」という植物の年輪に似た線が刻み込まれている。これを調べることで、1年にどのくらい成長したか、成長期は何歳ごろか、寿命は何歳ぐらいだったかが分かる。研究の結果、卵からかえったときの体重は約2キロ、全長は60センチ。14歳ごろから急激な成長期を迎え、20歳ごろまで1年で約760キロ(1日約2キロ以上!)もの速度で成長したと推測されている。推定平均寿命は28歳程度。本展で展示されている“ジェーン(愛称)”は、推定11歳(約680キロ)の若いティラノサウルス。12メートルを超える“AMNH5027”は推定21歳(約5670キロ)。

羽毛を持つティラノサウルス類ユティランヌスの生体モデル

視覚、嗅覚、聴覚が発達

脳そのものは化石として残っていないが、骨格標本を詳しく調べることで、脳の形が推測できる。その結果、ティラノサウルスは立体視のできる視覚、獲物の匂いを嗅ぎつける鋭い嗅覚、遠くにいる動物の足音を聴き分ける聴覚を持っていた可能性が示された。

メスのほうががんじょう?

ティラノサウルスのオスとメスの違いは、座骨(ざこつ)や大腿骨(だいたいこつ)に現れると考えられている。ティラノサウルスの骨格を調べると、「がんじょう型」「きゃしゃ型」に分けられるが、座骨から推定される性別と照らし合わせると、がんじょう型はメス、きゃしゃ型はオスと推定される(自然界には、メスのほうが体が大きい生き物がよく見られる。ただし、異なる説もある)。

走る速度は人間と同じくらい?

どのくらいの速度で走れたかは、いろいろな説がある。有力なのは、人間と同じぐらいの速さ(秒速8メートル)で走れたとする説だが、最新の研究では、後足の筋肉とともに尾にある大腿筋(だいたいきん)という筋肉の発達も考慮すると、もっと早く走れたのではないかとする説も出ている。

羽毛を持つティラノサウルス類の発見

中国遼寧省の後期ジュラ紀(約1億6千万年前)の地層からは、鳥の羽毛のような繊維をもつ恐竜の化石が発見されている。

前期白亜紀では、2004年に遼寧省の義県層(ぎけんそう)で発見された小型のティラノサウルス類・ディロンが、原始的な羽毛が体を覆っていたと考えられている。2012年には、原始的な羽毛を残した体長9メートルの大型ティラノサウルス類・ユティランヌスが報告されており、体長10メートル近くになる大型の種類の中にも羽毛を持つものがいることを証明した。

本展では、体長9メートルの羽毛恐竜・ユティランヌスの迫力の生体モデルを展示。間近でその大きさを体感できる

なぜ絶滅したの?

肉食恐竜としての優れた能力から、王者として君臨したティラノサウルスだが、約6600万年前、地球上から姿を消してしまう。直径10キロほどの巨大隕石(いんせき)が現在のメキシコ・ユカタン半島に落下したこと、隕石の落下にともなう火山活動の活性化などが原因だと考えられている。

骨格標本の見どころ

  • 頭部
    ティラノサウルスの大きな特徴は、長さ1・5メートル、幅60センチにおよぶ巨大な頭部。歯は大きいもので約30センチもあり、こんな歯でかまれたらひとたまりもないだろう。
  • 後肢(うしろあし)、前肢
    約6トンもの体重を支えていた太い後肢は圧巻。一方、前肢は不釣り合いなほど小さい。

  • 太くがんじょうな尾を作る一部の筋肉は、最初の一歩の踏み出しやバランス、方向転換に役立ったと推定されている。
ほぼ完全な頭骨や、状態のいい脊椎が発見された最初のティラノサウルス”AMNH5027″の全身骨格。体長は12メートル以上

かむ力はワニの約10倍

80年代頃までは、尾を地面につけたゴジラのような姿で描かれることが多かったが、最近では尾を地面につけない姿で描かれるようになっている。また、体の一部に羽毛が描かれた復元画が描かれる場合もある。

研究の進展に合わせ復元画も変化

かむ力は前の歯で3万1千N(ニュートン)。アリゲーター(ワニ)の約10倍の恐るべきパワーだ。

化石や隕石を触ろう!

会場内には、ティラノサウルスの尾椎(びつい)の化石や宇宙から地球に落下した隕石も展示しており、手で触れることができる。恐竜の息吹、宇宙の神秘を感じよう。

ティラノサウルスの尾椎の化石にさわってみよう
ティラノサウルスの尾椎の隕石にさわってみよう

グアンロン(右)、ケラトサウルス(左)の生体モデル

恐竜たちと写真を撮ろう!

本展の展示物は、すべて写真撮影が可能。恐竜たちと一緒に写真を撮ってSNSにアップしよう!

グッズ販売も充実

受け付け横には、グッズ販売コーナーを設置。本や本物の化石発掘が体験できるキットなど学習に役立つグッズをはじめ、フィギュアやぬいぐるみなどの模型、マグカップやキーホルダー、ピンバッジなど約200点以上の豊富な恐竜グッズを販売。お気に入りのアイテムを見つけて。

講座やワークショップも開催
博物館文化講座
博物館文化講座「最新恐竜学」
日時:8月18日(土) 14時〜16時(開場 13時半)
講師:真鍋 真 氏(国立科学博物館 標本資料センター・ディレクター、分子生物多様性研究資料センター・センター長) 
場所:講堂(定員200人、当日先着順)。 入場無料
 
ワークショップ
化石のレプリカ作り体験
日時:8月18日(土)、19日(日)各10時〜、12時半〜
講師:廣瀬浩司 氏(天草市立御所浦白亜紀資料館学芸員) 
場所:博物館実習室
   (各回30人。当日先着順)。 参加費無料
 
このほか、学芸員教室など関連イベントも開催。詳しい情報はhttp://okimu.jp

インフォメーション

〜9月9日(日)まで。毎週月曜休館

開館時間:9時〜18時(最終入館 17時半)

※金曜・土曜は20時まで(最終入館 19時半)

観覧料:一般1200円、高校生・大学生1000円、     

小学生・中学生800円、3歳〜小学生未満300円

問い合わせ:沖縄県立博物館・美術館 ☎098(941)8200

(2018年7月26日付 週刊レキオ掲載)