「○○甲子園」、調べてみた。→それぞれの青春があった。 「てみた。」47


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

夏の甲子園といえば甲子園球場で熱戦を繰り広げる高校野球を思いつく。

しかし高校生の「甲子園」は野球だけではない。大会名称に「甲子園」がつくものは全国で80以上開催されている。

全国の甲子園に向け青春をささげる県内の高校生たちを調べてみた。

農高生、パリに挑戦

高校生がデザインの発案から作品制作、ファッションショーまでを担うのが「ファッション甲子園」(全国高等学校ファッションデザイン選手権大会)。第18回を数える今年の大会には、北部農林高校3年の大宜見盛悟さん(18)と座間味寿々奈さん(18)が出場する。

熱帯農業科の2人は、キビや果樹の栽培・管理などを学んでいる。デザイン科などがない同校からの出場は2人が初めて。

2人を指導する教諭の加治工陽子さんが選択授業で甲子園について紹介したことが出場のきっかけだ。加治工さんは那覇工業高校や北中城高校で生徒を指導し、ファッション甲子園出場に導いてきた。「優勝してフランスに行ってみたいなと思った。自分の手で洋服をつくってみたかった」と振り返る大宜見さん。優勝者には副賞としてパリ派遣があるのだ!

出場が決まったデザインは大宜見さんが発案したもので、テーマは「人間の煩悩」。テーマを何にしようか決めかねている時、「優勝したい」「パリに行きたい」という願いで頭がいっぱいになり、人間は欲深いと感じたという。デザイン画には大宜見さん自身の「煩悩」が一つ一つの模様になって描かれた。ブーツは農業高校生らしく、作業用のゴム製長靴に革を張り付けた。

夏休み中も農園の管理などの合間の時間で作品制作に没頭した。週に約3回、多いときは午前9時から午後5時まで制作に明け暮れた。座間味さんは「手縫いで腰が痛くて大変だった。制作時も煩悩でいっぱいになる時があった」と話す。

夏休みが明ければ進路に向かって本格的に取り組む。パイン農家に生まれた大宜見さんは県立農業大学校へ進学を目指す。座間味さんはブライダル関係の専門学校へ進学が決まっており「ウェディングドレスをつくりたい」と目を輝かせた。

最終審査会は26日、青森県弘前市で開催される。

手縫いの作業をする大宜見さん(左)と座間味さん=名護市の北部農林高校
人間の煩悩がテーマの作品と大宜見盛悟さん(左)と座間味寿々奈さん

弁舌熱く、頭はクールに

「日本を一院制にすべきである。是か非か」。大人でも頭を悩ませるような難題に挑むのは昭和薬科大学付属高校ディベート部だ。

4日から6日までの3日、東京都内で開かれた第23回「全国ディベート甲子園」(全国中学・高校ディベート選手権)に出場した。出場は2年ぶり10回目。

ディベート甲子園は一つのテーマを巡って肯定側と否定側に分かれて討論する。1チーム4人が向き合い、資料をかざしながら丁々発止の激論を交わす様は、テレビの国会中継を上回る迫力とスリルがある。

部員はテーマに関係する本を100冊近く読み込むという。「本を手に入れるのが難しい」と離島県ならではの苦労もにじむ。

どのように議論を進めるか、大会直前まで粘り強く検討を重ねた。部長の黒島佳乃さん=2年生=は「時間をかけ一生懸命組み立ててきた理論だからこそ、評価され勝った時がたまらなくうれしい」と声に力を込める。試合ぎりぎりまで議論に磨きをかけ続ける。

中学1年からディベートをしてきた黒島さんにディベート甲子園について聞くと「毎年、この大会にかけている」と即答。「大会に向けて取り組んでいるのが一番の青春だと感じる」と笑顔を浮かべた。

結果はベスト8。満足はしていない。「来年こそさらなる上位を」と新たな目標を掲げている。
 

ディベート甲子園に向け質疑応答の練習をする生徒たち=浦添市の昭和薬科大学付属高校
「カメー!ウチナーの巻」(JTB沖縄提供)

「おいしい」求め 試行錯誤

宜野湾高校3年の木下夏葵さん(18)と宇良梨々花さん(17)、新城美友さん(17)が県代表として出場するのが第7回「ご当地!絶品うまいもん甲子園」だ。4日に那覇市旭町のおきでん那覇ビルで開かれた県選抜大会で、3人が考案した「カメー!ウチナーの巻」が県代表に選ばれた。同校の教員や家族、友人などに試作品を何度も味見してもらい、ゴーヤーによく絡む甘辛いソースにたどり着いた。

3人が出場を決めたのは書類選考の応募締め切りの約1週間前。県産野菜の代表であるゴーヤーを使ったレシピを発案し、片手でも気軽に食べられるようにトルティーヤで具材を巻いた。ゴーヤーが苦手な宇良さんは「ゴーヤーが嫌いな人でも好きな人でも食べられる料理をつくりたかった」と話す。

3人とも大学入試を控えている。出願書類などを書き上げながら、味の研究に取り組んだ。夏休みもほぼ毎日学校に通った。10回以上作り直し、教員たちや家族に感想を聞いた。「みそおにぎりみたい」「野菜の味しかしない」などの酷評にもめげず、試行錯誤の日々。「一番辛口だった副担任の佐久本桐江さんが完成品を『おいしい』と言ってくれた時がうれしかった」と話す新城さん。宇良さんも太鼓判を押した。

県選抜大会では声を掛け合い、チームワークを心掛けた。自作の小道具などで披露したプレゼンテーションも好評だった。11月2日に東京都で開催される決勝大会に向けて、木下さんは「今までお世話になった人たちに優勝を報告したい」と意気込んでいる。

うまいもん甲子園に出場する(左から)新城美友さん、木下夏葵さん、宇良梨々花さん=宜野湾高校

5・7・5の句を作り出すため、ノートにはびっしり文字が書き込まれる

言葉磨き つむぐ17音の物語

正岡子規や高浜虚子ら日本を代表する俳人を生んだ愛媛県松山市で17日から19日までの3日間、第21回「俳句甲子園」(全国高校学校俳句選手権大会)が開かれた。県代表の興南高校はベスト8、個人の部で桃原康平さん=2年=が県勢初の最優秀賞、上里匠さん=3年=が優秀賞に輝いた。

ベスト8という結果について部長の安里恒作さん=3年=は「優勝を目指していたので悔しいが、後輩につなげる大会になった」と達成感をにじませた。

俳句甲子園は5人1組のチームで出場する。事前に出題された季語に沿って詠んだ俳句の出来栄えを評価する「作品点」と、俳句の基本的な知識を元に相手チームへの質疑応答を通しその内容を評価する「鑑賞点」の合計点で競う。

部員らは大会に向けて約3週間、大会テーマの季語を使った俳句を1日25句以上詠んできた。いい句を作るため「多作多捨」を徹底し、それぞれの句力に磨きをかけてきた。俳句を詠む場所は人それぞれ。安里さんは句集を読んでいる時に思いつくことも多いという。すぐに句を作ることもできれば、1時間悩んでも思いつかないことも多くあるのだとか。

入部から半年になる桃原さんは俳句の魅力について「言葉を選び、いろんな見方を考えながら17音に詠んでいくこと」と力説する。
 

各自の俳句について意見を述べる俳句部員ら=那覇市古島の興南高校

1度しかない夏、写す

“写真の町”北海道東川町で繰り広げられる写真甲子園(全国高校写真選手権大会)。毎年のように県内高校が好成績を収めている。今年は九州2枠を勝ち取った浦添工業と真和志高校が出場した。

30度を超える猛暑の中、8月1日から3日間の戦いの火ぶたは切って落とされた。全国513校の応募から決勝進出は19校。カメラの設定は常にオートのわかな記者が同行した。

カメラ片手に決められた撮影場所を延々と歩き回る高校生たち。「お宅にお邪魔させてください」「お写真取りたいんですが」。被写体を見つけては、撮影に臨む。記者団は、その後ろをストーカーのごとく付いて回る。

審査会は、地元の人も駆け付ける人気ぶり。審査員のきついコメントに、悔しさをこらえきれない表情を見せる生徒も。

県勢はというと、浦添工業が2年連続の優秀賞に選ばれた。「やりきりました!」。カメラに青春をささげる高校生の色鮮やかな夏は幕を閉じた。

競技前日の浦添工業(前列)と真和志の生徒たち。リラックスした表情でパチリ=北海道東川町

(2018年8月26日 琉球新報掲載)