浦添市牧港にある巨大煙突が解体されているのはなぜ!?【島ネタCHOSA班】


この記事を書いた人 仲程 路恵

浦添市牧港にある火力発電所の煙突が解体されていますね。2本の高い煙突が並んでいる光景を長年見慣れていたので、なくなると少し寂しいです。解体の理由は何なのでしょうか。そもそもあの煙突についてあまりよく知らないので(汗)、調べてみてください。

(北谷町 オーワン石井さん)

浦添市と宜野湾市の西海岸側を通ると目にすることのできる巨大な2本の煙突。沖縄電力牧港火力発電所にある地域のランドマークです。現在、2本ならんでいる煙突のうち、1本が解体されていることにお気づきの方も多いのではないかと思います。調査員も気になっていました。現場へ行ってくわしく話を聞いてみましょう!

戦後を支えた発電設備

仲里修さん
我那覇斉さん

出迎えてくれたのは、牧港火力発電所所次長の仲里修さんと、発電企画グループ課長の我那覇斉さん。煙突を含めた牧港火力発電所の概要から説明してもらいました。

牧港火力発電所は、1953年に運転開始した沖縄県初の大型発電施設です。仲里さんによると、当初は沖縄を統治していた米軍への電源供給が主な役割だったとのこと。その後、沖縄県内の戦後復興とともに電力需要が拡大すると、発電設備が増設されました。

現在、解体されている煙突は1974年に運用開始された牧港火力発電所5~8号機のもの。「牧港火力5~8号機集合煙突」という名称がつけられています。なるほど、発電設備4つ分の排煙をする設備なので、よく見ると4つの煙突が束ねられていることがわかります(写真参照)。こちらは、2014年に使用が休止されており、2016年から解体が始まっていたとのこと。

沖縄電力では、現在、電力の安定供給を行うために、石油・石炭・天然ガスの3種の燃料を使った発電を行っています。牧港火力発電所は石油を燃料とする発電所で、今回の解体は設備の老朽化によるものだそうです。

ちなみに隣に立つもう1本の煙突は牧港火力発電所9号機のもので、こちらは今後も継続して使用するとのこと。

160㍍を輪切りに

解体前、2本の煙突が並んでいた牧港火力発電所 (2011年撮影、提供:村山望)

集合煙突の高さ(解体前)は約160㍍。解体作業はどのような方法で行っているのでしょう。我那覇さんにたずねてみました。

「作業員がバーナーを使い、煙突を上から順に輪切りにしています。切り取られた煙突の一部は、隣接させてあるクレーンを使い、地上に下ろします。」

ほう、方法はとてもわかりやすいですね! しかし対象が巨大なので、その難易度はかなりのもの。バーナーで一度に切り取る煙突の部分は高さ約2㍍程度ですが、鉄と断熱材で構成される煙突を切るのは容易ではありません。作業が順調に進んでも、1日で地上に下ろすことができるのは「輪切り3つ程度」だそう。また、クレーンに吊るすための重量やバランスも計算しながらの作業となるため、切り取る場所によってはさらに時間がかかるのだとか。加えて、高所での作業なので、悪天候時は中断となります。

解体作業の様子。「輪切り」と例えられている理由がよく解る一枚  (提供:沖縄電力)

ダイナミックかつ正確さが求められる現場ですが、今年1月から始まった解体作業は佳境を迎えています。集合煙突は在りし日の姿からするとかなり短くなっています。調査員が取材した8月中旬の時点で約30㍍だそう。

「作業終了は11月の予定ですが、煙突だとわかる構造を見ることができるのは、早ければ9月いっぱいとなるでしょう」と我那覇さんは言います。地域で親しまれた巨大煙突は、すでにずいぶん短くなってしまっています。その姿が見れるのはあとわずかのようです。

(2018年8月30日 週刊レキオ掲載)