本を手渡す喜び 沖縄県産本☆ バックヤード便り[56]

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第56回 本を手渡す喜び

 

夏休みも終わり、とうとう9月! 酷暑・大雨・台風と、自然の強さを実感する夏でした。今年も残り4カ月。「あれもこれもやり残した!」と後悔しないよう、日々元気にこつこつ過ごしたいですね。

今回で私が担当するバックヤード便りも最終回。そこで、書店に勤めていた頃から現在も、よく聞かれる質問について書いてみようと思います。

「本が売れないと言われる時代、なぜ書店員・本屋になったのですか?」
聞かれるだび、納得してもらえる理由を見つけようと考え考え、いつも単純な答えに辿り着きます。
「本屋に集まるいろんな本・いろんな人が面白いから」
「本屋以上に関心を持って打ち込める仕事がないから」
そんな気持ちだけで仕事ができるの? と疑問に思われることは承知で、自分でもいい年をしてこんなに単純でいいのかと呆れつつ、これ以上しっくりくる言葉を見つけることができずにいます。

一番最初は、確かに、自分自身の「本が好き」という気持ちでした。本や映画、音楽という創作物に感動し、心を救われたことが何度もあり、それが「本に携わる仕事がしたい」という目標に変わり、書店への就職に結びつきました。働き出してからは「自分の好きなことをしたい、伝えたい」というよりも「お客さまが望むものを手渡したい、喜んでもらいたい」という気持ちが強くなっていきます「本を手渡す喜び」それが実感できる本屋という仕事に、やりがいを感じるようになりました。

例えば、開店当初、くじらブックスには大人向けの絵本がありませんでした。子ども向けを重視するあまり、仕入れを控えていたのです。ところが、お客さまから「子どもを持つお母さんにプレゼントできる本がほしい」と言われたことで、気持ちを慰める、やさしい大人の絵本を仕入れてみたのです。すると、入荷する度にすぐ売り切れる、当店屈指の人気コーナーが出来上がりました。「とてもいい本ですね」と、自分用・贈り物に購入される方々を見て、毎回「置いてよかった」とほっとしています。私は結婚をしておらず、子どももいません。やさしい言葉を求めるお母さんたちの気持ちを、お客さまから教えていただきました。自分と異なる立場の人が何を必要としているか、どう感じているのか。より意識して本を置くようになった貴重な体験です。

このようなお客さまとのやり取り一つ一つが、毎日の仕事の糧であり、私を育ててくれる生活の一部です。バーチャルでは体験できない、実感そのもの。こんなに楽しい経験は、そうそうありません。これを読んでくださる方々も、本屋の店頭で、どこかの図書館で、一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

またどこか本がある場所でお会いしましょう。
 


お客さまのやりとりで生まれた大人向けの本棚

子を持つお母さんへのプレゼントにおすすめの1冊



渡慶次 美帆(とけし みほ) 1984(昭和59)年生まれ。豊見城市出身
大学卒業後、株式会社ジュンク堂書店入社。池袋本店・那覇店勤務を経て、2015年小さな本屋「くじらブックス」として独立。那覇市・松川で店舗営業の後、2018年2月八重瀬町にて「くじらブックス&Zou Cafe」オープン。これからも無料の読み聞かせ会など、いろいろな企画を考え中です。TwitterやFacebook等で発信していきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。



くじらブックス&Zou Cafe  
http://kujirabooks.blogspot.jp/




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