災害時の動画撮影で気を付けたい二つのこと モバプリの知っ得![75]


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今年の沖縄は台風の当たり年でした。 
数多くの台風が上陸しただけでなく、何度も週末に押し寄せるため、イベントの中止・延期が相次ぎました。 

中でも台風24号は、9月30日に行われた沖縄県知事選挙のタイミングで上陸したため、一部地域では投票締め切り時間が繰り上がりになるなど、異例の選挙戦を演出する形となりました。 

近年、台風などの自然災害の時に、被害の様子を動画に撮影し、SNSに投稿されているのを多く見かけます。 
例えば、強風によって看板が吹き飛んだり、車が横転したりする様子を収めた動画です。 

こういった動画を投稿するほとんどの人は「これだけ風が強いから、他の地域の人も気をつけてください」とした思いを込めていると思います。 

確かに「猛烈に強い台風が〜」とニュースで見るよりも、車が横転する動画を10秒ほど見た方が台風の強さを実感しやすい部分もあります。 

こうした動画が投稿される背景には、スマートフォン・SNSの普及が関係しています。みんなが高性能のカメラを常に持ち歩いていて、撮影してすぐネットに投稿できるからです。 
テレビなどで見かける「衝撃映像」の撮影者に、災害時は誰でもなれる可能性があるということです。動画が投稿される流れは止められないでしょう。 

しかしながら災害時の動画投稿は気をつけないといけない部分が2つほどあります。「プライバシー」と「安全の確保」です。

撮影場所の特定は本当に簡単

台風の時に投稿される動画で多いものは、自室から窓の外を撮影したものです。 
投稿者は「このくらいなら場所は分からないだろう」と思っていても、近所に住んでいる人であればすぐに気づく目印の建物などが写っていたりします。 

動画が拡散されると、数十万人〜数百万人が目にする可能性があります。 
その中で誰か一人が「この場所◯◯だよね」と書き込めば一発で住んでいるところがバレる可能性があります。 
また気がついた人が「この撮影場所、近所だ」などと地名を書き込まなくても、その人の普段の投稿により連鎖して場所が特定されることもあります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

またネットの怖いところは、削除しない限りずっと投稿が残るということです。 
例えば動画を投稿した直後は問題がなくても、ずっと後で問題発言をしてネットで炎上した際に、過去の動画や写真を掘り返されて、住んでいる場所や地域が特定されるなどもあります。 

今は大丈夫だからといって、これから先も大丈夫である保証はありません。 

一番いいのは動画を投稿しないことですが…どうしても投稿したい場合は「偶然通りかかった場所で撮影しました」などと少しぼやかすことで特定されにくくなります。 

気をつけたい「正常性バイアス」 

個人情報の特定と並んで、「身の安全」もしっかりと意識しなければなりません。

災害時、人は過度にパニックにならないため「自分は大丈夫」と思い込む癖があります。この現象を「正常性バイアス」と呼びます。 
マンションで火災報知器が鳴っても「誤作動かな?」と思ったり、大雨で避難勧告が出ていても「ここは大丈夫だろう」と正常性バイアスで思い込んだりしてしまう心理です。
これによって、逃げ遅れたり、被害が出たりするのです。 

本当は今すぐに避難しなければいけない場合や、対策を取らないといけない事態であるにも関わらず「まだ大丈夫でしょ」と動画を撮っていると大きな被害にあう可能性があるということです。 

2011年から2017年の間に、自撮りに夢中になったため259名が命を落としていることが分かりました。 
https://www.bbc.com/japanese/45756245

良い写真を撮りたい一心で崖から転落したり、動物に襲われたり、溺れたり。
災害時であれば、よりリスクは増すでしょう。 

災害時に撮影された動画が多く投稿され、広く拡散されているのを何度も見ることで、「自分も撮影できるかもしれない」と思うかもしれません。 

しかしながら自分の住んでいる場所が特定されたり、災害被害にあう可能性があることを改めて意識する必要があるでしょう。 
 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」10月7日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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