日本最古の技法を継承する「伊波メンサー織」 8人の織り手たちの挑戦


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 国内でも貴重な手織り 

うるま市の文化財に指定されている伊波メンサー織は、うるま市石川伊波に古くから伝わる織物だ。竹や木で作った道具と「イザリ織り」という技法が特徴で、日本に残る最も古い貴重な技法の一つとして知られている。20年前に建てられたプレハブの「伊波メンサー織作業所」では週2回、8人の織り手が集まりメンサー織の制作に励んでいる​

写真・村山 望

うるま市の伊波地域で受け継がれてきた伝統の織物技法「伊波メンサー織」。数百年前、琉球王国時代に南方貿易で伝わったとされる。かつて、女性が男性への贈り物として作っていたといい、素朴な色彩や模様が印象的な細帯の織物だ。

竹や木などで作った10種類の道具を使い、足を前に伸ばし座り、織りながら前進していく「イザリ織り」と呼ばれる技法が特徴。これは日本で一番古い織り方とされ、国内では北海道のアイヌ民族の「アッツウシ織」など数例しか残っていないという非常に貴重な技術でもある。

これまで、技能保持者の故・伊波カマドさん、故・伊波貞子さんが技術を継承してきた。「貞子先生は途絶えかけていた技術をカマドさんから学び、若い人たちに継承するために努めていた」と話すのは、伊波メンサー織を始めて12年の大重泰江さん。現在は貞子さんから共に技術を学んだ山城初美さん、比嘉悦子さんと「伊波メンサー織作業所」で、作品を作りながら技術指導も行っている。

(前列左から)伊波由美子さん、山城初美さん、大重泰江さん、(後列左から)折越暢子さん、善財暢子さん、屋我育子さん、仲本千恵子さん

創作作品も展開

メンサー織は織り具もすべて手作りだ。「最初は道具作りから。竹や木を切ったり、削ったりすることから始まった」というのは大重さんと同時期にメンサー織を始めた山城さん。織り手は体力も要する。山城さんは「通常、こういう姿勢で座ることはないから腰も腕も痛いし、最初のうちは2時間座るのがやっとだった」と振り返る。

伝統をかたくなに守る一方、数年前からは名刺入れ、小銭入れ、財布、ティッシュ入れなどの小物類の開発も開始。伊波メンサー織を広めるために現代の生活に適応した新しいスタイルの作品にも取り組んでいる。

物作りや手作業が好きで制作は「楽しい」と笑う大重さんと山城さん。山城さんは「時間を忘れてしまうほど夢中になってしまう」と目を細め、大城さんは「大掛かりな機械を使わなくても作れるところが魅力。家などでやろうと思えばできる」と話す。

織り機を使わず、竹や木でできた手作りの道具を使用する。経糸の片方の端を柱に固定し織り進めていく

地域の工芸 保存・継承へ

小物などの作品も展開。うるま市の産業まつりなどの際、販売されている

旧石川市がうるま市に統合されて以降、これまで伊波地区に限定していた研修生も、うるま市全体に対象を広げて募集し、後継者の拡大を図っている。また、今年は、「伊波メンサー織保存会」が発足。公民館講座や学校での講座なども開始した。

伊波メンサー織は「伊波の宝で沖縄の宝」と力を込める大重さん。伊波メンサーに魅せられた研修生も育ちつつあるものの、「やりたいという人が少なくなっている。若い人たちに継いでもらえれば」と語る。貴重な技術を伝えながら、仲間とともに美しい伝統を支えていく。

(坂本永通子)

うるま市産業まつり

日時:12月15日(土)・16日(日)
場所:うるま市石川庁舎周辺
期間中、伊波メンサー織の展示販売展示を予定
☎︎098-923-7634 
〔うるま市産業まつり実行委員会〕

(2018年11月01日付 週刊レキオ掲載)