「まとめサイト」が敗訴!「まとめただけ」でも責任あり モバプリの知っ得![86]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

まとめサイト「保守速報」の差別的な記事によって名誉を傷つけられたとして、在日朝鮮人ライターの李信恵さんが保守速報側に損害賠償を求めていた訴訟で最高裁は11日、保守速報を運営する男性に200万円の支払いを命じました。

これまで、保守速報側は「ネット上の書き込みをまとめただけで、自分たちに責任はない」と主張してきましたが、今回の一連の裁判で「まとめ行為も新たな表現として成立し、責任も発生する」と判例が示されました。

保守速報に限らずネット上にはまとめサイトが多数存在し、不確かな情報・デマの出所となったり、差別扇動に繋がったりするなどの社会的な問題が指摘されてきました。

改めてまとめサイトの構造・問題点を考えるとともに、私たちの社会に蔓延する「差別」についても考えたいと思います。

まとめサイトとは

まとめサイトは、匿名掲示板「5ちゃんねる(旧 2ちゃんねる)」の書き込みの中から、有益なものだけをまとめてコンパクトにし、体裁を整えた記事を作るサイトです。

特定のアイドルについて書き込む掲示板をまとめた「アイドルまとめサイト」や、ゲームに関する書き込みをまとめた「ゲームまとめサイト」、あるいは最新のニュースに対するコメントをまとめたサイトなど、ジャンルは多岐に渡ります。また、5ちゃんねるだけでなくTwitterの投稿を用いたまとめサイトも存在します。

Webサイトでは、企業などの広告を貼り付けて「クリック数」や「成約」に応じてお金がもらえる「広告収入」ビジネスが存在します。まとめサイトに限らず、お金儲けに目が眩んだWebサイトの運営者は、アクセスを少しでも増やすため、過激な内容やや、嘘の情報を掲載するようになります。

まとめサイトはネット上の書き込みをまとめたサイトです。
これまでにも内容が問題となったまとめサイトはありましたが、運営者側は「私たちはネット上の書き込みをまとめただけなので」と責任を逃れてきました。

しかしながら今回の一連の裁判で、「まとめた側にも責任が発生する」としっかり判決が出たことで、今後はまとめサイト側も一定の掲載責任を負うことになります。

また、まとめサイト以外にも「NAVERまとめ」「Togetter」など、個人が簡単にWeb上の投稿をまとめるサービスがあります。今後こうしたサービスも責任が問われることになりそうなので、まとめ記事を作る際には注意が必要です。

保守速報と「差別」

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

今回裁判となった「保守速報」はTwitterプロフィールによると「政治、東亜(注:東アジア)ニュースを中心にまとめています」と書かれています。本来、保守とは自国の文化や伝統を愛し、これらを後世にしっかりと残していく政治的な考え方です。

しかしながら保守速報のまとめている記事を見ると、中国・韓国・北朝鮮への差別的な書き込みが目立ち、本来の「保守」とはかけ離れています。

日本と中国・韓国は尖閣諸島・竹島をめぐる問題、南京事件や従軍慰安婦をめぐる歴史問題などから政府間で対立することがありますし、北朝鮮に対しても拉致問題やミサイル実験をめぐる多くの解決すべき問題を抱えています。

しかし、相手国の「政府」に対する批判ならともかく、在日コリアンや中国からの訪日観光客などの一般の人々への差別・誹謗中傷などは「言論」と呼べるか怪しいものです。

今回の裁判でも、李信恵さんに対する「差別」も指摘されています。在日コリアンである李さんをターゲットにし、「ゴキブリ」「死ね」「ババア」「朝鮮の工作員」などとした書き込みを大量にまとめて傷つけ、李さんと同じ境遇の在日コリアンに対する差別的な態度や偏見も助長しています。

まとめサイトは、ネット上の短い記事をまとめているので、新聞やWebの長文記事と比較しても「サクッと」読みやすいという特徴があります。楽な方に流され、まとめサイトばかり読んでいたために、差別的な態度や言動を知らず知らずに学んでしまった、とならないよう、情報を多角的に取り入れるよう意識する必要があります。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」12月23日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/