学校前にあった駄菓子屋さんが多機能に“深化”していた!

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プレビュー学校前商店・文具店を訪ねてみた。→変わらぬ笑顔があった。

学校で使う文房具や体育着、上履きなどをどこで買っているだろうか。かつてはどこの小学校でもすぐそばに文具店があり、駄菓子も売っていた。

最近は郊外型の大型ショッピングセンターも増え、買い物ついでに学用品もそろえられるようになった。

では昔ながらの学校前の商店、文具店は今、どうしているのだろうか。訪ねてみた。





昼下がり、那覇市の泊小学校近くにある安次富文具店前には、小銭を握ってやってきた小学生たちの群れができる。店内いっぱいに並べられたのはスナック菓子にチョコレート、アイス…。あれ、ここは駄菓子屋さん?


菓子であふれる店内。選ぶ表情が思わず笑顔になる

店は約60年前、安次富澄榮さん(97)が始めた。10年前から息子の久吉さん(73)ととみよさん(70)夫妻が切り盛りする。当初文房具中心の店だったが、新都心に大型商業施設ができ始めた頃から文具の購入は徐々に減り、駄菓子が主力に。今や文具は店の隅にノートやコンパスなどが並ぶ程度だが、「登校前に買う人がいるはず」ととみよさんは今も朝に店を開ける。

那覇中学校3年の平良未來さんは幼稚園生の頃からの常連。たこせんべいにチョコレートジャムを塗ってスナック菓子をかけるとみよさん特製駄菓子がお気に入りだ。泊小2年の新垣長琉君は「40円で何でも買える」と笑顔。

泊小出身で元プロ野球選手の新垣渚さんがシーズンオフの際に来たこともある。子どもを連れてくる“元子ども”たちも。とみよさんは「子どもたちから元気をもらっている。現役のうちは続けたいです」とほほえんだ。


くじ引きで2番を当てた小学生。くじ引きは子どもたちに人気

片隅に並ぶ文房具。鉛筆やノートなどもある



駄菓子でいっぱいの店内が子どもたちでぎゅうぎゅう詰めになる。せんべいや当たり付きのチョコレートなどが詰まった容器に「10円」「20円」などと書かれている。西原町の坂田小学校前にあるのは「さかぶん」の愛称で親しまれる坂田文具店だ。


子どもたちでにぎわう「さかぶん」。プラモデルやぬいぐるみなどもある

38年前から店を構える砂川洋子さん(68)は「みんな自分の孫みたいなもの」と目を細める。鉛筆や消しゴムなどの文房具もあるが、子どもたちは駄菓子にまっしぐら。大浜碧斗(あおと)君(9)のおすすめは「ガムくじ」だ。「100円分の当たりが出たこともある。さかぶんは当たり付きのお菓子がいっぱいあって楽しい」と笑う。

商品棚の一角に何も置いていない空間がある。「お迎えを待つ間にここで宿題ができるように」と砂川さん。レジの周囲には、子どもたちが描いた絵や色あせたプリクラがたくさん貼ってある。幼稚園の頃から通っていた客が大人になり、子を連れて来店することも珍しくないという。

砂川さんは「似たような店がどんどん閉まっていくのはさみしい。利益はなくても、子どもたちとゆんたくしながら続けていきたい」と話した。


たこせんべいにとんかつソース、おやつラーメン。「駄菓子屋のファストフードよ」と砂川さん

小腹がすいた時にちょうどいい



那覇市の大道小学校近くで、さまざまな文房具や学習帳などを売っているのが「平成事務機」。平成元年(1989年)に開店し、地域で親しまれてきた。


文房具や事務用品に囲まれる宮里孝一代表

子ども向けの消しゴムなどもあるが、棚の大半はファイルなどの事務用品だ。「昔は学用品も今より置いていて、親が『子どもに』と買っていった。最近は厳しい」と語る代表の宮里孝一さん(77)。「文房具の店売りだけではやっていけない。昔は書店に文房具も置いていたが、今は本も売れない」と時代の変化を語る。企業や役所などへの納品が店を支えている。

大道通り会の顧問も務める宮里さんは「昔は市場にも子どもがいて、天ぷらなんか食べていた。今は学校と学習塾の行き来だけで、街で子どもを見ない」とさみしげだ。

ただ店と地域のつながりは深い。長年の得意先は多く、営業に出なくても名刺印刷などの注文が入る。「学校前の文具店は減ったが元気な店もある。得意先への納品など、地域とのつながりが深い店なんじゃないかな」と話した。




那覇市の識名小学校の校門前で50年余、子どもたちの成長を見守ってきた「波平文房具店」は、2017年4月から「いどばた学童クラブ」に生まれ変わった。文房具はないが、今も子どもたちのよりどころだ。


もともと波平文房具店だった「いどばた学童クラブ」。今も子どもたちの賑やかな声が響く

波平文房具店は波平カヨ子さんが経営していたが、17年2月に閉店。地域から惜しむ声が相次いでいた。ちょうどその頃、繁多川公民館を運営するNPO法人1万人井戸端会議などを中心に、識名小周辺で子どもの居場所を探していた。カヨ子さんの夫の元維(もとしげ)さんが同法人の理事をしているつながりもあり、同法人が文房具店の店舗で学童を運営することになった。

学童には1~4年までの22人が通う。識名小4年の上地竜輔君は「遊ぶのが楽しい」と話し、はしゃぎ回る。 教室の忘れ物を持って教員が立ち寄ることもあるとか。「子どもと接する時間が多いので変化に気付いてつなぐこともできる」と学童クラブの續(つづき)洋子所長。「第2の家みたいな放課後の安心安全のよりどころになれば」と話した。




北中城村立北中城小学校の門のすぐ前で「仲泊商店」が子どもたちを迎えていた。入り口に上履きも置いているが、棚の大半を色鮮やかな駄菓子が埋める。仲泊兼誠さん(78)、ヨシ子さん(71)夫婦が45年前から営んでいる。


多彩な駄菓子が並ぶ仲泊商店

現在の主力商品は駄菓子で、当たり付きの商品が人気だ。文房具はあまり売れないという。近くに大型店ができるまでは冷凍食品も売っていたが、今は「近所のおばあちゃんたちのために」(ヨシ子さん)缶詰などを少しだけ置いている。

午後3時を回ると下校する子どもたちが訪れ、部活動を終えた子どもが帰る午後6時ごろまでにぎわう。「親の迎えを待つ子どものために、7時ごろまで開けているよ」とヨシ子さん。閉店時刻はアバウトだ。

店を訪れた仲泊知洋君(8)、東浜成和君(10)に一番好きな駄菓子を聞くと、チューイングキャンディー「ロングチュー」などを挙げた。

秋には消費税率が上がる予定だが、ヨシ子さんは「子どもから消費税は取れない。利益を出すのは難しいけど、子どもたちに雨宿りしてもらうだけでも楽しい。子育ての気持ちで続けている」と笑顔で話した。


端の棚には上履きも健在



学校前の文具店。名札を無くして買いに駆け込むなど、うっかり者のたぶちゃん記者にとってありがたい存在だった。しかし、最近見かけないような…。那覇市内の学校前の文具店を探し回ってみた。

手始めに会社周辺にある小学校の周囲を歩いたものの文具店は見当たらない。気が遠くなり、文明の利器に頼った。グーグルマップで「文房具店」などと検索して出てきた店舗を片っ端から当たる。これなら確実だ。ところが、地図にある文具店を実際に訪ねると、書道教室やアパート、建物だけが残り、看板が外されていたところも。数年で急速に減っているのでは…。絶望的な気持ちになった。

ようやく見つけた文具店も「あと1年くらいしか営業しないから」と取材を断られた。那覇市の仲井真中学校前で営業する新垣文具店も所用で店を閉めることが多いとか。店にいた棚原美枝子さんは「今は100円で文具が買えるからねえ」と寂しそう。

そういえば、文具店に必ずあった学校の名札がない。安次富文具店の安次富とみよさんが「今は個人情報保護とかで、名札がなかったり、校外に持ち出したりしないみたい」と教えてくれた。



(2019年2月10日 琉球新報掲載)

 



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