AI時代に使える英語とは。あきらめないで、大人も子どもも学び方のコツがある ~沖縄キャリア教育EXPO2018からのヒント~


社会
この記事を書いた人 仲程 路恵

AI(人工知能)の発達により人間の仕事がロボットに奪われる?!と言われる昨今。時代が変わっても生き残れる仕事って何だろう・・と、皆さんも一度は思いを巡らせてみたことはあるのではないでしょうか。昨年12月、那覇市内で開催された「沖縄キャリア教育EXPO2018」(主催・沖縄キャリア教育EXPO実行委員会)では、英語教育をはじめ、各分野のスペシャリストが新しい時代に応じた人材育成について講演しました。その中から、英語学習のこれからについて語ってくれたECC総合研究所所長の太田敦子さんの講演を紹介します。子どもの英語教育だけでなく、今からでも遅くない大人の英語学習法のヒントも教えてくれました。

学習〝早期化〟への幻想

「最近のTOEICでは、英語の上手さや正しさではなく、タスクハンドリング(課題解決)できるかどうか、相手が求めている情報を提供できるかどうかが評価基準になっている」と語るECC総合研究所所長の太田敦子さん。

2011年に小学校5、6年生への外国語活動が必修になったことで、日本社会で「子ども向け英語教育」の熱が過熱したと太田さんは分析する。この時、大人側に見られた反応が「(幼少期など)早めに英語学習を始めさえすれば話せるようになる、万能だと思っている人が多い」ことだった。太田さんはこれを〝幻想〟と呼ぶ。小学校での年間英語学習時間は35コマ、時間数にして約1日分しかない。

 

小学校での英語教育の内容について「中学で学び始める英語がそのまま小学校に下りてくるわけではない。文法的な説明を理解するには一般的な知能が育つまで待つ必要がある」とも指摘した。

子どもの英語教育で気を付けることとして「即効性を求めない」と力を込める。子どもはリスニングを聞き取る力が目覚ましいため、つい大人側に欲が出てしまい次々と成果を期待しがちだという。しかし「英語力は800時間のインプット後に急激に伸びる。アウトプットに至るまでには時間が必要だと理解した上で取り組むべき」と強調する。その上で「やり方と目標さえ間違わなければ小さな子どもほど何をやっても良い」と語った。
インプットの800時間は、一日15分を6年間続けることで達成できる計算だ。

ユーザーに徹す

一般的に日本人が英語をマスターするには2400~2800時間の英語への接触が必要とされる。太田さんは、「日本人は『間違ってはいけない』という強迫観念が強いが、学ぶ英語と使う英語は違うということを認識すべき。自分の中に染みこんだ英語しか出てこない。自分の中にある英語を使い切るという意識が大切だ」と背中を押す。「英語learner(学習者)」ではなく「英語User(使用者)」として間違いを最初に気にするのではなく「使いながら修正していく」という気持ちで気楽に英語を使っていくことが上達への早道だとした。

英語をマスターするのに必要とされる時間は2400~2800時間だが、高校卒業時までの学習時間は約1000時間。残り1000時間以上をいかに確保し、学習を継続していくかが重要だ。

目、耳、口、手をフル活用し、4技能(読む、聞く、書く、話す)を組み合わせて学習することがコツとなる。

「リーディングと音読は並行して行う。音読は万能。だまされたと思って、たくさん音読をしてほしい。リスニングは集中力が途切れないように、ディクテーション(書き取り)やシャドーイング(聞き取りながら真似して発音する)を同時にやった方が良い」とアドバイスした。