県内初の議員産休「固定観念」を取っ払うには


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娘をひざに抱く宮里議員=北谷町認可小規模事業中央保育園

昨年6月、ニュージーランドのジャシンダ・アーダン首相が出産し、6週間の産休を取得した。国の要職に就く人でも、出産・育児のため休むことが受け入れられているが海外に比べ、日本では議員の産休や育休の取得者が少ない。そもそも女性議員自体が少ないことが要因だが、休もうとすると県外では「職務放棄」「公人の義務を果たさないのはおかしい」といった批判を受けることもある。そのような中、県内で議員として初めて「産休」を取得したのが、北谷町議3期目の宮里歩さん(40)だ。

知花亜美(琉球新報編集局記者)

孫や娘の姿重ねた男性議員たち

議会に娘を連れて出勤した当時=2017年

北谷町議会は2015年7月に、議員が出産で議会を欠席する場合の取り扱いを規則改正で明文化した。宮里さんはその規定に則り、一昨年5月長女を出産、同年6月定例議会を休んだ。9月定例議会には復帰したものの、子どもの預け先に悩んだ。「母乳育児への思いと、ゼロ歳のころは保育園ではなく自分で育てたいという思い、そして仕事も両立したいという三つの思いで悩んだ」と当時を振り返る。中学時代に母を亡くし、姉妹も育児などで多忙、外国人の夫の家族も身近におらず、身内の支援が得づらい中、出産前は育児と仕事の両立に「相当不安だった」と打ち明ける。

そこで考えついたのが、子どもも一緒に〝出勤〟し、議会開会中は議員控室でファミリーサポートに子どもを依頼し、育児も仕事も両立する方法だった。先輩議員や議会事務局に議員控室を利用させてもらえないかと相談したところ、快く賛同してくれた。議会運営委員会などを通し、了承を得た。「男性議員も、子育てに積極的だったり、自分の娘が孫の子育てで大変な状況を見ていたりしていて、理解してくれたのが大きかった」と感謝する。

「県内初」に気負いなく

自身の経験をもとに、女性の社会進出への思いを語る宮里さん

県内初の産休に、子連れで出勤し乗り切った宮里さん。「県内初の産休、と言われても思い切った行動ではなく、状況がそうだっただけ。数十年前、他の市町村の女性議員も、子どもが熱を出してどこにも預けられず議会に連れて行ったことがあるという話を聞いたことがある」と述べ、気負いはなく自然体だ。

出産前、男性議員から「子どもは社会全体で育てていかないとね」と声を掛けられたり、保育園に入園後、子連れ出勤をしなくなってから「きょうは、娘さん一緒じゃないの?」と議員仲間に聞かれたりすることもあった。周りの温かい目で見守る姿勢に助けられた。ちなみに北谷町議会は、定数19人中女性議員は5人。女性比率が約26%と県内トップとなっている。

沖縄では法事の時など、女性が食事作りや後片付けを主に担い、男性は台所には立たず、男女の役割が明確な場合が見受けられる。宮里さんは「男女ともに固定観念を取っ払い、育児や家事を共に担えば、少しずつ社会も変わり、女性も社会進出しやすくなるのではないか」と語る。
宮里さんは子育てで得た経験を、今後は町の施策に生かしていくつもりだ。
 

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