4月から関連法施行「働き方改革」 パート主婦にメリットは?


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

「この4月からスタートした『働き方改革関連法』(以下「関連法」)ですが、もっとも大事なことは、今まで“働きすぎだった人”の意識改革です。そして、古い体質で法律を守らなくてもよいという、雇い主を許さない政府の強い姿勢です」

そう語るのは、元労働基準監督署長で「森井労働法律事務所」の森井博子所長。すでに4月1日から一部が施行されている関連法。どんな制度なのか? 職場でどんな変化が起こるのか、森井さんに詳しく解説してもらった——。

【Q1】なぜ「働き方改革」の法律が作られたの?

過労死や過労自殺につながる長時間の労働、正規と非正規雇用の格差などの問題を解消するために70年ぶりに大改正したのが「働き方改革」です。

とくに、議論が加速したのは、’15年に電通の新入社員の高橋まつりさんが過労自殺した違法残業事件がきっかけ。現在も過労死はなくならず、長時間労働がまん延しているのが実情です。

【Q2】違反すると、会社はどんな罰を受けるの?

罰則規定がついたのは、残業する時間の上限を定めた「時間外労働の上限規則」(6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金)と有給休暇を確実に取得させる「年次有給休暇の時季指定義務」(30万円以下の罰金)の2つです。違反すると会社や時間管理の責任者に罰則が科せられます。

施行前とはいえ、電通の違法残業事件では、社長が辞任し、会社と上司が刑事責任を問われました。

【Q3】この法律のおかげで給与が減ることも?

それまで青天井だった残業時間の上限が、原則として月45時間、1年360時間とされました。繁忙期などでも、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、6カ月までの月平均80時間以内にしなければ法律違反になります。残業時間は抑えられるため、時間外手当を当てにしている人は、給与が減ることになるでしょう。

しかし、そもそも日本は、欧米諸国と比べても、労働時間が長い割に生産性が低い。長時間働くのが尊いとされていた企業風土が根強く残っています。少子高齢化が進み、人手が不足していくなか、労働時間を削減し、生産性が上がれば、賃金もアップすることが期待されます。さらに兼業や副業が容認されるようになれば、収入を増やすことも可能です。

【Q4】正社員じゃなくてもメリットがある?

パートタイム、アルバイト、契約、派遣など、呼び方が違ってもすべて労働者です。たとえば、条件を満たせば有給休暇を取得することができます。

さらに今回は、会社の規模にかかわらず、年間10日以上の有給休暇がある人に対して、会社が1年に5日以上取らせることが義務化されています。

また、同一労働同一賃金が’20年4月(中小企業は’21年4月)から義務づけられます。同じ企業で働く正社員と非正規雇用との間で基本給やボーナス、手当などあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されています。

非正規から“待遇の格差やその説明”を求められた会社側は答える義務がある。不合理な格差があった場合、裁判で会社が支払いを命じられる可能性も。実際、すでに改正内容を先取りして非正規労働者に各種手当、退職金やボーナスの支払いを命じる判決が出ています。

【関連記事】

“残業代ゼロ法案”の罠…荻原博子指摘する「安倍政権」の改悪

日本郵政社員から悲鳴!「“働き方改革”で年収最大32万円減」

負債10億円からV字回復…老舗旅館の若女将の「働き方改革」