サッとひと工夫 野菜を食卓に~新報子どものための家庭料理セミナー

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「新報子どものための家庭料理セミナー」(主催・琉球新報社、共催・県PTA連合会、開催校PTA、後援・県教育委員会、県学校給食会、県学校栄養士会、協賛・キユーピー株式会社)が2018年度も県内小中学校12校で開かれた。松本嘉代子さん(松本料理学院学院長)、西大八重子さん(西大学院学院長)、伊是名カエさん(トータルウエルネスプロジェクトオキナワ代表理事)の3人を講師に、手軽に野菜をたくさんとることができる家庭料理を紹介している。野菜が苦手な子どもでもおいしく食べられるよう、味付けや調理法に工夫を凝らし、各学校の栄養職員が児童生徒の健やかな成長に必要な栄養のとり方や正しい食生活を講話で指導している。2018年度のセミナーの様子を紹介し、参加した講師、給食調理場、教育の現場から、それぞれ食に関する課題や改善に向けた取り組みを聞いた。



野菜たっぷり簡単メニュー



松本嘉代子さん(右)が手軽にたくさんの野菜がとれる料理を紹介した「新報子どものための家庭料理セミナー」=2月17日、那覇市泉崎の開南小学校

2月17日、那覇市立開南小学校で本年度最後のセミナーが開かれた。父母ら約30人が参加し、松本嘉代子さん(松本料理学院学院長)が「具だくさんクリームスープ」と「切り身魚のマヨネーズ焼きと野菜のドレッシング炒め」を紹介した。


具だくさんクリームスープと切り身魚のマヨネーズ焼きと野菜のドレッシング炒め


「具だくさんクリームスープ」は玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ベーコンをマヨネーズで炒める。松本さんは「玉ねぎは炒めるほど香りや旨味が出る。なるべく食材の良さを引き出すことが大切」とアドバイス。「さまざまな色味のある食材を使うことで栄養バランスもとりやすくなる」とメニューのメリットを強調し、バジルソースをひとかけすることで風味にアクセントが生まれることも紹介した。

「切り身魚のマヨネーズ焼きと野菜のドレッシング炒め」では、魚をマヨネーズで焼くことで風味やコクが生まれ、深煎りごまドレッシングを合わせることで、濃厚かつ深みのあるソースが魚のおいしさを引き立てる。付け合わせの野菜の味付けには、すりおろしオニオンドレッシングを使用。短時間で調理でき、簡単においしく野菜をとることが可能だ。

松本さんは、「沖縄は食生活を巡る環境が悪く、特に野菜の摂取量不足が深刻」と指摘する。「野菜をとらなくなり、それと同時に全国の長寿ランクも下がった。栄養バランスのとれた食事をしっかりとって、朝食もしっかり食べ、そしてよく噛む。そうした習慣を家庭からつくっていこう」と父母ら受講者に呼び掛けた。

開南小栄養職員の荻堂麻吏子さんは、昨年11月に実施した給食の残量調査について報告した。荻堂さんは残量が最も多かったのがけんちん汁で、豆サラダがワースト2位に続くなど、児童が野菜の量が多いメニューを残しがちであると分析する。塩分過多で脂肪の多い食品をとりがちな子どもたちの食生活の危険性を訴え、「今回のセミナーで紹介されたメニューを参考に、家庭で野菜をたくさんとりながら食を楽しむ環境づくりに努めてほしい」と訴えた。
子どもが野菜嫌いな上、食事のメニューに苦労しているという前田むつみさん(45)は「働いているということもあって朝は時間がなく、子どもたちも野菜嫌いなので、育ち盛りの中でどう食べさせたらいいか悩んでいた」という。「具だくさんのスープは時間がかかって難しいのではないかと思ったが、こんなに簡単に調理できるんだと感心した。ドレッシングを使った味付けもびっくり。ぜひ自宅で実践したい」と満足そうに感想を話した。


学校給食の現状について説明する、那覇市立開南小栄養職員の荻堂麻吏子さん

浦添市立浦添小で調理実演する西大八重子さん=1月20日





伊是名カエさん(トータルウエルネスプロジェクトオキナワ代表理事)

◆◆◆講師から◆◆◆
“食事を選ぶ力”を養成
伊是名カエさん(トータルウエルネスプロジェクトオキナワ代表理事)

家庭料理セミナーは料理講習会だけでなく、学校栄養士から給食の現状を聞くことができ、子どもの食や栄養、健康について改めて考えるきっかけとなる催しだと思います。学校給食は小学校から中学校までの9年間、その学年で必要な栄養素をバランスよくとれるよう工夫されたメニューが提供されます。成長期と重なる大切な時期にこのようなセミナーで子どもの食環境について学ぶ意義を、多くの保護者に理解していただきたいです。

今の日本は豊かになり、食べ物がいつでも安く手に入ります。半面、健康のために何を食べるのかを選ぶ力が必要になりました。多忙な大人が増え、調理する時間や片付ける手間を考えると、つい便利な総菜や外食に頼ってしまうこともあるでしょう。だからこそ栄養に関する知識と選択する力を身に付けないと、食事はたんぱく質、脂質、炭水化物に大きく偏り、野菜が不足してしまいます。食事を選ぶ力の大切さをセミナーでは強調しています。

野菜をさらにおいしく食べるために、セミナーでは簡単な下準備の方法、冷凍野菜の使い方、切り方で食感や見た目が変わり新鮮に感じられることなどを紹介しています。誰もが毎日の食卓にバランスよく野菜を取り入れるべきだと思っていますが、それが負担になっては意味がありません。簡単に楽しく取り入れる方法も併せて提案していきたいです。

家庭でできる一番の食育は買い物に行く、作る、食べる、片付けるという一連の流れを子どもと一緒に行うこと。調理方法を学ぶだけでなく、食材への理解を深め、作り手への感謝の気持ちも芽生えます。子どもと自然に向き合って会話ができる食卓はとても大切な時間です。毎日でなくても、家族みんなで食事をする時間を設け、楽しい食卓を作ってください。






安里育美さん(読谷村立学校給食古堅給食調理場 学校栄養職員)

◆◆◆給食調理場から◆◆◆
工夫重ね、食体験豊かに


給食は子どもたちの心身の発達を支えるだけでなく、郷土愛を育み自立への道しるべとなるものです。そのため積極的に地場農産物や県産品を取り入れています。特に読谷村では毎月16日は「イモの日」となっており、給食では紅芋を使った料理を提供しています。先日は紅芋ポタージュを出し、インパクトある紫色のスープは子どもたちに評判でした。またにんじんや小松菜、しょうがや冬瓜なども読谷産を使っています。給食を通して読谷村の特産品を学んでほしいと思っています。

日々の食事もそうですが、出されたものをただ食べるのではなく、食べたものが自分の体を作ることを意識してもらいたいです。給食では和食、洋食、中華、琉球料理を提供しますが、どうしても日頃食べ慣れていない和食と琉球料理は残量が多くなりがちです。しかし行事食や伝統料理が家庭の食卓に上がることが少なくなっている昨今、地域で受け継がれてきた料理を次世代に伝えることも給食の役割の一つです。かんきつ類の日向夏や黒玉すいか、ムジ汁など見慣れない料理や食材を出すときには配膳時に資料を添えて、どのような果物か、どのような背景のある料理なのかを伝えるようにしています。

学校側と共に、食にまつわる絵本を校内放送で読み聞かせしたり、給食時に調理員や地域の農家を招いて子どもたちと交流する機会を持ったりと、多方面から食に関する興味関心を引き出す工夫を重ねています。骨付きの魚を食べたり、ゆで卵の殻やみかんの皮をむくのを嫌がる子どももいますが、友達と楽しみながら経験することで苦手意識を克服していけます。今後も食に関するさまざまな体験を提供し、子どもたちに食べる楽しさ、大切さを伝えていける給食づくりに力を入れていきたいです。





與那覇哲さん(沖縄市立安慶田中学校校長)

◆◆◆教育現場から◆◆◆
地域の協力で学び推進
 

食育は子どもたちの成長に欠かせない重要なものです。家庭料理セミナーの評判は複数の学校から伺っており、本年度、授業参観日に合わせて開催することができました。参加者からは「簡単なレシピを学べた」と大変好評でした。また栄養士からは特に部活をしている生徒にどのような栄養が必要か、買い食いのデメリットなどを紹介してもらいました。

当校は地域ボランティアによる支援体制が充実しており、食育の分野でも多大なご協力を頂いています。ここ数年は、校内のビオトープで田芋を栽培し、美化委員が収穫。特別支援学級の生徒たちが地域ボランティアとともにターンムジューシーを作って食べるという取り組みを継続しています。自分たちが手塩にかけて育てた野菜を収穫し調理することで食べ物への感謝の気持ちを育めると思います。その他、年末の大掃除後に年越しそばを生徒とともに食べたり、部活対抗駅伝大会の後にバーベキューをしたりと、食を通して地域の方々との交流を深めています。

また独自の取り組みとして本年度、生徒会主催で異学年合同で給食をいただくイベントも実施しました。当校には学年全体が入れるような大きなランチルームがあり、もともと開校から20年ほど前まで毎日全生徒が一緒に給食を食べていました。その再現をしたいと生徒から声が上がり、そこで1年から3年までの同クラスが一堂に会し、給食を囲んで会話が弾むという光景も見られました。本校の学校評価アンケートによると、「朝食をとっている」という家庭が多数を占めますが、食育が十分でなく、栄養面で多少偏りが見られる家庭もあるという課題もあります。彼らにどのように食の大切さを伝えるか部活や学業と絡めて伝えていけたらと思っています。




<セミナー参加校>

 ●うるま市立南原小学校 ●沖縄市立安慶田中学校 ●那覇市立上山中学校 ●琉球大学教育学部附属小学校 ● 那覇市立石田中学校 ●豊見城市立ゆたか小学校 ●読谷村立古堅南小学校 ●沖縄県立沖縄ろう学校 ●うるま市立中原小学校 ●浦添市立浦添小学校 ●西原町立坂田小学校 ●那覇市立開南小学校



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