AIナシでも無人店舗の最先端??土付き新鮮野菜からハイブリッド野菜まで 沖縄の無人販売


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地方部記者が担当地域のイチオシを紹介する「J(地元)☆1グランプリ」。今月は、取材途中に見つけたオススメの無人販売が勢ぞろいしました。鮮度抜群の旬の野菜からマンゴー、こだわり卵まで、農家の皆さんの熱い思いが詰まったものばかり。野菜1袋100円など家計に優しい値段設定に、驚きと感謝。10連休のドライブ中に無人販売を見つけたら、立ち寄ってみませんか? 無人販売は農家さんと消費者の信頼関係で成り立っている素晴らしい制度なので、利用の際はきちんとルールを守ってくださいね。

(次回は5月19日)

本部町北里・謝花松子さん  ★ 激戦区の人気野菜店

ズシリと重い大根を陳列する謝花松子さん。この日は自宅に生えるアマリリスも株分けして球根付きで並べた=11日、本部町北里

土付きで鮮度保証

その店は海洋博公園に程近い本部町北里、国道505号沿いにある。バス停のそば、黄色いカーテンが目印だ。丸々と見事に太った大根が目に飛び込み、思わず「でかっ」と声が出た。キャベツやレタス、ベニハルカ、ニンジン、白菜などがずらりと並んでいる。

店を出しているのは近所の謝花松子さん(71)。道行けば無人販売店に当たる、そう言っても過言ではない(?)本部町で、謝花さんの野菜目当てに訪れる客も少なくない。

「食べ切れないから売ってるだけ。腐らせるよりいいでしょ」と飾り気ない謝花さん。名護に住む兄と弟が野菜作りに興味を持ち、謝花さんの畑で自家用に育てているのだそう。約3年前に始めた店は謝花さんの担当。大量の野菜を洗って運び並べる作業を毎日1人で行う。一つ一つビニール袋に包んでいるところに、心配りが垣間見える。

野菜はほぼ1袋100円。謝花さんは「難儀するばかりで、商売としては成り立たない」と苦笑しつつ「ベニハルカは焼き芋にすると安納芋より甘いよ。大根は柔らかくて人気。都会から移住してきた人は特に、土が付いた野菜を喜ぶね」と話してくれた。

週2回買いに来るという松本浩さん(68)=今帰仁村仲宗根=は「ここの野菜は新鮮。食べたら分かるよ」と太鼓判を押した。

(岩切美穂)

うるま市兼箇段・宜野座嗣文さん  ★ 珍しい野菜も登場

人気のホウレンソウ(100円)を手に「低価格にもこだわっているよ」と話す宜野座嗣文さん=2日、うるま市兼箇段

手紙を支えに挑戦の日々

県道75号(石川線)から西に続く細道を行けば広がる、うるま市兼箇段の住宅地。その一角に、宜野座嗣文さん(68)が個人菜園で育てた野菜の無人販売所がある。ホウレンソウに島ラッキョウ、ソラマメにキャベツ…。毎朝9時半ごろから並べられる色とりどりの野菜はどれもみずみずしく、市外からわざわざ足を運ぶ常連客も多い。

トラックドライバーだった宜野座さんは退職後、所有する土地を活用して菜園を始めた。最初は家族で食べる分だけと思っていたが農業の魅力に引き込まれ、栽培規模も次第に大きくなった。

最近は赤タマネギとラッキョウを掛け合わせたハイブリッドラッキョウや、粘り気と甘みが強いジャガイモ「レッドムーン」など、定番だけでなく珍しい野菜にも精力的に挑戦している。

「畑仕事はやっぱり大変。やめたいと思ったことは何度もあるさ」。だが、料金箱に度々寄せられる感謝の手紙が宜野座さんの心を癒やし、やる気に火を付けるという。「喜んでくれる人がいる限り、頑張りたい」。真っ黒に日焼けした宜野座さんは爽やかな笑顔を見せた。

(当銘千絵)

糸満市北波平・上原養鶏場  ★ サイズも選べる販売機

日々真剣勝負で鶏と向き合う上原肇さんと、年中無休でいつでも新鮮な卵が購入できる販売機=17日、糸満市北波平の上原養鶏場

24時間年中無休で新鮮卵

24時間365日、新鮮でおいしいこだわりの卵を購入できる糸満市北波平の上原養鶏場の無人販売機。内部にクーラーを設置して室温管理した無人販売の進化形だ。季節によって鶏ふんで栽培したジャガイモなど野菜も並ぶ。

代表の上原肇さん(54)は大学卒業後、1989年に養鶏場を引き継いだ。現在は、青い卵を産むアローカナ、ウコッケイ、肉用も含めて5種で約1万2千羽を飼育する。

「鶏は思っていた以上に敏感」と上原さん。鶏を良い状態にするため、食べた餌の量や飲んだ水の量、ふんの状態を日々、細かく観察。餌の配合割合などを微調整している。約10年前から鶏ふんを活用し、約100坪の畑でジャガイモやニンジンなども栽培する。

敷地内の店舗で卵を販売するが、営業時間は午前9時~午後5時30分。「戸締まりをしている時、仕事帰りに卵を買いに来る人が多かった」という。客の要望に応えるため、7年ほど前に無人販売機を設置した。人気は規格外の卵20個で320円の「中身満点」。

上原さんの「鶏愛」がたっぷり詰まった卵が購入できる販売機。わが家の近所にもぜひ設置してほしい1台だ。

(豊浜由紀子)

宮古島市城辺・山里勝夫さん  ★ 自家用の無農薬野菜

里さんが無農薬で育てた野菜が並ぶ無人販売所=18日、宮古島市城辺長間

夏にマンゴーばら売りも

宮古島の強烈な日差しを浴びた野菜はとてもおいしい。トマトは青臭さがなく果物のような甘さで種類も豊富。レタスやルッコラにはみずみずしい生命力を感じさせる強い苦みがある。宮古島市平良の市街地から車で10分ほど走ると、車窓の風景は街から一面の畑に変わる。

平良市街地から県道78号平良城辺線を東向けに走る道沿いに、唐突に「いらっしゃいませ」というのぼりがはためき、こぢんまりとした小屋の下にトマトやチシャ菜、サヤインゲンなどが並んでいる。山里勝夫さん(75)が無農薬で作った野菜だ。退職後に畑を始めて独学で農法を学びながら作物を作り、11年前から無人販売をしている。「たまたま気が向いて遊び半分で始めたようなもんだよ」と語る。山里さんが自身で食べる分以外の作物を並べているという。「買ってくれるとうれしいから続けたら、もう10年以上もたってしまったよ」と話す。

作物が並ぶのは基本的に火・金曜日の週2日で、価格は野菜や果物によって50~150円で値付けされている。時期によって並ぶ作物は変わり、7月にはなんとマンゴーもばら売りで無人販売。「あんまり他ではやってないだろうね」と笑った。

(真栄城潤一)


商売の原点を思う

農産物を中心に無人販売所は、全国的にあるようです。安心、安全で、しかも低価格の時も。今回紹介したのは全県的にも一部の店舗でしょう。それでも販売所オーナーの心意気や心配りが伝わります。

自らの商品にリピーターが増えたり、客からの感謝の手紙が生産者に届いて、それが生産意欲につながる発奮材料になったりと。まさに、商売の原点を見る思いです。

生産者と消費者がじかに結びつくだけに鮮度は折り紙付き。地産地消を地で行く無人販売所に足を運んでみてください。何か発見があるかもしれません。

(学)

(2019年4月21日 琉球新報掲載)