愛らしさも日本最大級 やんばるの森に住むリスのようなネズミ

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日本最大の愛らしいネズミ


やんばるのイタジイ林に生息する日本最大のネズミ「ケナガネズミ」。ヤンバルクイナ、ノグチゲラと同じく、国の天然記念物に指定されている貴重な生き物だ 写真・村山 望


やんばるの森林に生息する「ケナガネズミ」をご存じだろうか。特徴の一つは、その大きさ。頭から尻まで約30センチ、尾も約30センチ。小さな猫ぐらいのサイズがあり、日本で最も大きなネズミだ。見た目はリスのようでもあり、和名の由来である長い毛も愛らしい。ヤンバルクイナ・ノグチゲラと同じように国の天然記念物に指定され、世界を探しても近い種がいない一属一種の貴重な生き物だ。



「ネズミとしてこれだけ大きく、性格もおとなしくて、かわいいですよ」

5年ほど前から数年にわたり県によるケナガネズミの調査に参加してきた糸満高校教諭・日本哺乳類学会会員の丸山勝彦さんはこう話す。

ケナガネズミは、げっ歯目ネズミ科。頭胴長約30センチとネズミとしては日本で最も大きく、尾も30㌢と長い。尾は、半分から先端までが白いのも特徴だ。背中には名の由来ともなった5~6センチの長い毛が生えており、モフモフした愛らしい印象を与える。

世界でも沖縄本島、奄美大島、徳之島にしか分布せず、近縁種もいない。ヤンバルクイナ、ノグチゲラに比べると知名度は劣るが、同じく国の天然記念物に指定された貴重な生き物だ。


(写真左)樹木の種子を食べるケナガネズミの幼獣(写真中央)幼獣の時は灰色の長い毛、(写真右)成獣は褐色の毛 写真提供:村山 望


個体数少なく目撃まれ



ケナガネズミの成獣。尾が半分白いのが特徴 写真提供:村山 望

ケナガネズミの姿を見るのは難しい。沖縄本島では、塩屋湾以北のやんばるの森林にだけ生息し、個体数が少ないためだ。2000年以前は数年に一度目撃される程度で、詳しい生態も知られていなかった。

そうした状況の中、08年ごろから目撃例が増加。理由ははっきりしないが、戦後、大規模に伐採が進んだやんばるの森で、再び樹木が成長し、エサとなる木の実が増えてきたことが一因ではないか、と丸山さんは推測する。ケナガネズミは雑食性だが、主に樹木の種子を食べて暮らす。一年を通して飢えないためには、多様な植物がいろいろな時季に果実を実らせるイタジイ林が必須だ。また、林道の周辺にリュウキュウマツが育ち、その実を求めてケナガネズミが林道の近くに姿を現すようになったことも考えられるという。

ケナガネズミは夜行性。昼間は木のうろなどの寝ぐらで眠る。調査では、昼にケナガネズミの食痕やふんから生息場所を探り、夜間に観察に出る。「ふんは小指の先ほどもあり、すぐケナガネズミのものと分かります」と丸山さん。だが「いることは分かっていても、見られないことのほうが多いですね」と苦笑いする。



絶滅のおそれも



丸山勝彦教諭

ケナガネズミは警戒心が薄く、おとなしい。主に木の上で生活するため樹上では素早く行動するが、地上に降りた時には比較的ゆっくりした動きになる。「やんばるの森林には、かつて肉食獣がいなかったため」と丸山さんは説明する。

だが、そんな性格が危機を招いている側面もある。一つは、人間に捨てられ野生化したイヌ・ネコによる被害。また移動や、車につぶされたカエルなどを食べに林道に出てきた時に、車にひかれてしまうこともある。

ケナガネズミは09~11年をピークに、13年から再び目撃頻度が激減。16年以降は、以前のように出合えない状況になってきたという。

個体数の減少に伴い、遺伝的多様性が失われたボトルネック効果も懸念材料だ。「遺伝的多様性が低ければ、伝染病などが発生した時に、一気に絶滅するおそれがある」と丸山さんは指摘する。

沖縄県レッドデータブックでは、ケナガネズミは「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」絶滅危惧IA類(CR)に分類され、16年には国内希少野生動植物種にも指定されている。私たちにできることは限られるかもしれないが、「イヌ・ネコを捨てないこと」「夜間の林道は注意して走ること」の2つを守るだけでも、ケナガネズミをはじめ、やんばるの貴重な生き物たちの保護につながる可能性がある。

未解明な部分も多いケナガネズミ。この貴重な生き物が、いつまでも生息できる沖縄であってほしい。

 (日平勝也)



(2019年5月2日付 週刊レキオ掲載)




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