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「何もしない」で解決できること 100cmの視界から―あまはいくまはい―(48)


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小さい頃の私はおばあちゃんっ子。

わが家は2階建てで、2階に私たち家族が住み、1階に祖父母と叔父が住んでいました。朝ご飯も、祖母が2階に上がってきて、あーんをしてくれないと食べない私。祖母は食べたい物をすぐに作ってくれ、ほしい物は買ってくれ、甘えさせてくれました。

学校で嫌なことがあっても「家に帰ったら、おばあちゃんがお菓子を準備している」と思い、乗り切っていたくらいです。絶対的に自分の味方になってくれる人がいることは、何よりも幸せなことでした。

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残念なことに、わが子らは祖父母が離れて住んでいます。でも、家に来た時はわがままのオンパレード。普段は私があげないお菓子も、おもちゃも、買ってくれます。朝ご飯前にアイスクリーム2本を食べていた時にはさすがに怒りましたが…(笑)。

また、子どもが「ファーストフードに行きたい」と言った時、「じぃじがいないから行けないね。残念。いつ来るか聞いてみたら?」と電話をさせる私。

沖縄県と神奈川県、離れてはいますが、先の楽しみがあるのは、祖父母にとっても、孫にとっても、いいことでしょう。私にとってもいい口実です。

ただ、祖父母が離れて住んでいるからこそ、子どもたちが甘えられる場所が一つでも多くあってほしいと願っています。近所の人や友だちの親、お稽古ごとの先生など、安心して話せる人、甘えられる人がいるとありがたいです。

新学期が始まり、もうすぐ2カ月。大型連休も終わり、疲れが出たり、頑張り過ぎたりしている人も多いことでしょう。体の疲れは休めば取れますが、心の疲れは治りません。でも心と体はつながっています。まずは体を休ませるしかありません。

休むことで怠けているって思われないかな、誰かの迷惑にならないかな、と不安になることもあるでしょう。頑張ることがいいことで、休むためにはもっともな理由が必要だと思いがちだからです。でも人は誰でも、できること、できないことがあって、その日の体調によっても変わります。

安心して休める、甘えられる場所がほしいですね。もし今あなたに余裕があるなら、それをつくってみませんか? 疲れていそうな人にも元気そうな人にも「少し休まない?」「いつも見ているよ」と声を掛けてみましょう。同僚でも、友だちでも、ご近所さんやママ友でもいいのです。お茶を出して、そばにいて一緒に深呼吸をする時間。

何もしないからこそ、解決できることがあるはず。そんな居場所になりませんか?

(次回は6月4日に掲載します)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2019年5月21日 琉球新報掲載)