やぎのシルーが絵本作家に!? 新しい笑いの形を探求する<いさお名ゴ支部さん>◇沖縄芸人ナビFILE.12

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ナビゲーターの「初恋クロマニヨン」松田正(まつだ・しょう)さんが、沖縄にある三つのお笑い事務所(FEC・オリジン・よしもと沖縄)の実力派芸人を直撃! 今回はFECの「いさお名ゴ支部」さんを訪ねました。楽しいエピソードがたくさん聞けましたよ。

(執筆:フリーライター・饒波貴子)



「沖縄芸人ナビ」は4月から「週刊レキオ」(毎週木曜発行)と連動しました。毎月第1週目のレキオで関連記事が読めるようになりました。ぜひご覧ください。




以前は事務所の先輩・後輩の仲だった、いさお名ゴ支部さん(FECオフィス所属(左)/http://www.fec.okinawa)とナビ芸人の松田正さん(よしもとエンタテインメント沖縄所属http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/

10年以上前から知っている「いさお名ゴ支部」さん。しゃべり方や雰囲気など安心感があり、話しやすい先輩です。最近の活動、特に「沖縄書店大賞」で絵本部門準大賞に輝いた絵本「ぼくもあったらいいなぁ」についても教えてもらいましょう!



飼い主「島袋さん」の秘密



松田ナビ:2003年、FEC主催の「フレッシュお笑い選手権大会」に僕ら初恋クロマニヨンは出場しました。いさおさんも出場していてそれが初対面でしたが、名護なまりの話し方で「ありのままの自分を出す人」という印象。キャラクター作りは意識していましたか?

いさお:自分らしさとか、自分の武器とか全く分からなかった。名護の友達とは、「那覇の人たちはしゃべりがなまってるな」と言ってたさ〜(笑)。でも那覇の事務所に所属したら逆に自分がなまっている扱いされて、あげ〜って戸惑ったけど、このしゃべり方だけは絶対やめないでおこうと思ったね。武器とは思わなかったけど、名護の情報発信ネタと考えていたかもしれない。

松田ナビ:お笑いを本格的にやるきっかけは、何でしたか? 

いさお: 2000年頃にどぅしぐゎー(友達)誘って「フレッシュお笑い選手権大会」に出て、その後2人でオーディションを受けてFECに入った。幼なじみのどぅしぐゎーと絶対一緒にお笑いやりたくて舞台に立ったけど、せりふを間違えたりでフレッシュ感丸出しになってしまった(笑)。やりたい相方とお笑い活動がスタートできて、うれしかったけどね。結局2002年にどぅしぐゎーに逃げられて、その後1人で活動を始めました。コンビ芸がやりたかったんだけどさ。

松田ナビ:「フレッシュお笑い選手権大会」は初めて知らない人の前でやる機会で、とっても緊張しますよね。相方が続けていたら、コンビのままが良かったですか?

いさお:掛け合いが好きだから、コンビがいいかな。このどぅしぐゎー、電話取らんくなって連絡つかなくて。でも他の友達は電話で話していたから、那覇まで通って活動するのが嫌なんだってはっきり分かった。せっかく入った事務所だから1人でもやろうやっさ〜って気持ちになり、2003年に大会に出たんです。その直前に逃げたどぅしぐゎーに久しぶりに連絡がついて、「今度は1人で大会に出るから見に来ないか?」って誘ったら来てくれて、優勝した瞬間を見てもらえました。お前とやりたいよって心の中で思いながら、「一人でがんばっていくから友達に戻ろう。逃げたの気にするなよ〜」って伝えられたと思います。1人でやぎを演じるネタがあって、飼い主は島袋さん。相方だったどぅしぐゎーの名前が、島袋さんだわけさ。どこかで一緒にやりたい気持ちがあるんだよね。

松田ナビ:あの島袋さん・・・やぎが話しかけている島袋さんは、そういう事だったんですね!やぎのシルーは、架空のコンビ芸とも言えますね。面白い! 今も友達でいい関係ですね。

いさお:実は一緒にお笑いやっていた人の苗字って・・・しに(とても)女々しい(笑)。



人の笑顔を作ること



松田ナビ:文も絵もいさおさんが手掛けた絵本「ぼくもあったらいいなぁ」の受賞、おめでとうございます! 反響はありますか?

いさお:まさか賞に絡むって思ってないから、ノミネートされた時点でドギマギでした。表彰式には直木賞作家や絵本作家さん、むる(全部)本物ばかりで「俺行っていいば〜!?」みたいな感覚でした。やぎのシルーの格好で行って、人の島を荒らしてしまってごめんなさい(笑)。受賞はラッキーパンチ。内容は「やーにはやー(君には君)の良さがあるんだよ。必ずみんな1人ずつ光るところを持っていて、それぞれ違っていいんだよ」という絵本です。褒められた子どもの笑顔を見たら、親も先生もうれしくなる。人の笑顔を作ることは、俺たちがやりたいこと。漫才やコントと形は違うけれど、笑顔を作る意味で良かったと思える作品になりました。

松田ナビ:やぎのシルーの紙芝居ネタで、絵を描いていたじゃないですか。その延長というか、少し発想を変えた感じですね。絵本作りのきっかけは?

いさお:描いてみないかって言われました。やってみようかなと思ったけど、絵心なく自信もなかったから賞まで絡んでドゥマンギタ(びっくりした)。

松田ナビ:すごいことですよ。夢がある話です。実際に取り組んで大変でしたか?

いさお:出版社にアドバイスをもらいながら進めました。ストーリーと絵は決めたけど無知状態だったから、色鉛筆で色付けしたら「水彩画でやり直し!」と言われて、下書きから書き直したり。いろいろあったよ(笑)。

松田ナビ:その状態から受賞するとは、信じられない(笑)!

いさお:去年11月に先行発売が決まっていて、余裕がなくて毎日絵本にかかりっきり。老眼鏡を買ってがんばったよ。1枚描き終わるのに2日間かかったりして、台風が来た時は仕事が飛んで「いーばーやっさー。時間作れる!」って喜んだ(笑)。しに(とても)苦しんで苦しんで仕上げたけど完成の日はやまとぅ(県外)にいて、マネージャーから写真で報告されただけ。難産した我が子といえる絵本をめくったのは、知らんちゅ(人)が見た後だったやっさ〜。追い詰められて描いたけれど、編集の手が加わり表紙ができてこうなったんだ〜って報われた瞬間だった。



松田ナビ:本当にゼロから始めたんですね(笑)。こんなに苦労したとは、教えてもらわないとわからない。絵本良かったよ〜って感想を言われたりしますか?

いさお:はい。買ったよ〜とも言われるし、学校からの依頼で子どもたちへの読み聞かせの機会もあります。結構笑ってくれて、子どもたちのピュアな部分に触れている。読み終わった後は相手を褒めてと伝えているので、先生に子どもの名前と長所を教えてもらい「名前呼ばれたら前に出ておいでよ〜」って褒めています。個人だったりクラスや学年単位だったり、規模によって方法は変えているけどね。

松田ナビ:絵本がきっかけの素晴らしいイベント! 楽しくてうれしいですね。

いさお:みんなが喜んでくれて、こういう笑顔の作り方はやって良かったとうれしくなる。読み聞かせという、新しい世界に飛び出したよ。

松田ナビ:やぎのシルーネタは長くやっていますが、いつからですか?

いさお:相方に逃げられた2003年に生まれたやつ。沖縄っぽいことをやりたくて、やぎの気持ちの代弁を思い付きました。顔など今とは違い、おでこに包丁が刺さっていた(笑)。

松田ナビ:コントだったら・・・そうなりますね(笑)。絵本のストーリーはやぎのシルーから思い付いたんですか?

いさお:前に絵本作りをイメージして書いた話があって、新しい話も加えてネタ見せのようにいくつか提案して決まりました。前に書いたのは自分のワラバー(子ども)に、跳び箱や逆上がりができなくてもできることがいっぱいあるから気にするな〜、こうやったらできるよ〜って教える内容。良いところを褒めるのは、子育てから思いついたこと。

松田ナビ:いいお父さん! 大人へのメッセージも付けたんですね。実際に子どもを褒めていますか?

いさお: 叱って育てるのではなく喜ばせた方が子どもは伸びるし、笑顔を見たらあんたも喜び笑いが生まれると伝えたかった。息子は調子に乗る時もあるけどね(笑)。



初恋クロマニヨンを変えた男??



松田ナビ:僕は読谷出身で、のどかな雰囲気が好きなんですが、いさおさんのしゃべり方が好きで、聞くと安心するんですよね。FECに所属していたころの飲み会で、僕ら3人の敬語混じりの会話を聞いたいさおさんに「トリオでお笑いやるんだったら、敬語は止めた方がいい」って言われて変えたんですよ。

いさお:覚えてる! 正(松田ナビ)が先輩で2人が一歳年下なんだよな。2人がさん付けして敬語で話してるから、野球部出身で厳しいのかなとは思ったけれど、敬語抜きで言いたい事を言った方が、お笑いを作りやすいと思った。そしたらスグ変わってたよね。



松田ナビ:それから僕ら普通にしゃべるようになりました。そういうアドバイスもいただいたいさおさんには、安心感がある。子ども時代について聞きたいですが、ウーマクー(やんちゃ)でしたか?

いさお:ずっと外で遊んでる子で、川行ったり自然の中に行くのが好きだった。池の真ん中に島みたいのがあって、橋を作りたくて建築中の家から板切れを持ってきて秘密基地作ったよ。勝手に持ってきたらダメよね(笑)。建築中の家主が小学校の先生で、持って行く時に後をつけられ「先生の家の板を盗んで基地を作るとは違法建築だ! バカヤロウ」って怒られた(笑)。「先生のお家とは知らず、要らない木と思ってました」って答えたけどね(笑)。

松田ナビ:材木屋からって時もありましたよね(笑)。いさおさんが稽古とかでしゃべる、そういうエピソード。昔のやんちゃな話を聞いたりして、面白かったです。ニワトリ・・・つぶした話もありましたっけ(笑)!?

いさお:あったよ~(笑)。食べるってから小学生の時やったけど、調理をまねしてお湯で毛をさばいて、鍋をたぎらせて煮ても圧力釜じゃないから硬くて食べきれず・・・今考えたら怖さよ。絶対できん!

松田ナビ:僕も友達とやったことあります(笑)。子ども時代にお笑いやったりはしたんですか?

いさお:その時分はやってなかったな〜。でも笑わせるのは好きで、歳が離れた友達のにーにー(お兄さん)の影響か、しょうもないギャグを言う人に「出口向こうです」とかクールな対応してたね。小学生だったのに。やばい事あった時は、こめかみに指置いて「汗〜」ってジェスチャーしてたんだけど、何年か後にテレビの「ちびまる子ちゃん」でやってて、「これ、わったー(俺たち)のパクってる! わったーが最初にやったやつ!」って騒いでた(笑)。

松田ナビ:友達同士で、そんなことやっていたんですね(笑)。ネタを作って人前で披露するのは、相方さんと出場した「フレッシュお笑い選手権」が初めてだったんですね!

いさお:そうだね。子どものころは何かをやっていたけど、文章にもショートコントにもなってなかった(笑)。

松田ナビ:最近の活動としては、学校での読み聞かせは多いですか?  子どもたちの前でのお笑いは、優しい気持ちになれそうでいいですね。

いさお:全校生徒の前だったりクラスだったり、時々やっています。息子が小学校一年生なので読み聞かせボランティアに入れさせてもらい、やぎの姿で行っています(笑)。

松田ナビ:息子さんが赤ちゃんのころお家に遊びに行きましたよね。もう一年生ですか〜。最後に展望を教えてください!

いさお:お笑いの場で、憧れの初恋クロマニヨンみたいな大活躍をしたいです! 正直な気持ちだからカットしないで載せてよ。

松田ナビ:いやいや、僕ら活躍していません(笑)!

いさお: 2003年に初めて大会で会った時、ずば抜けたセンスですごかったんですよ! それをいまだに3人で続けているのがかっこいい! コンビの2倍売れてほしい、ギャラの取り分のためにね(笑)。今後は計画していませんが、絵本や4コマ漫画で何かできればという希望はあります。まずはSNSを使って、いずれは出版関係で・・・相談するなら、琉球新報さんでしょうね(笑)。でも絵を描くのは素人だから下絵だけで半端なく時間がかかり、舞台のお笑いに手が付けられなくなる。少しずつコツはつかんできたし、絵を上達させればいい話なんだけど、1枚描き終えるのにとにかく時間がかかる。毎日の連載はできないけれど、絵をお笑いの活動にしていいのであれば、参入させていただきたい気持ちです。

松田ナビ:お笑いの形はいろいろありますし、僕はいさおさんの絵本はお笑いだと思います。子どもたちを笑わせるのも、4コマ漫画もお笑いです。舞台でネタをやるのがお笑い、という時代ではないと思うんですよ。

いさお:そうなったら、初恋クロマニヨンはこっちの世界入ってこないでよ(笑)! あんたなんかいたら、プレッシャー半端ないから(笑)。

松田ナビ:僕らは絵が描けませんよ(笑)。そういうお笑いの見せ方も、いさおさんの武器ですね。

いさお:絵本で喜んでもらえると実感したからね。自分が読み聞かせをしなくても、どこかで読まれていて笑顔が生まれていたらいいなと思います。

松田ナビ:すごいことですよね。舞台でワ~ッてやって笑わせるのが普通のお笑い。でも作った絵本が各家庭にあって、いさおさんが遠隔操作で笑わせている感じですもんね。お笑いをやっている脳みそで絵本を描き、そのネタを読んだ子どもたちがお家で笑う。

いさお:そうだね。見たい時に見ることができる動かない動画みたいな。4コマ漫画はネタの書き方と似ているかも。これもお笑いって正さんが認めてくれて、ジャンルが確立するのであれば、絵を描くことに没頭するさ〜。

松田ナビ:絵本も本も音楽もお笑い。舞台でやるだけがお笑いではない時代ですよ。いさおさんの絵本、すごいと思います! いろいろな話をありがとうございました。




【対談を終えて・・・】

☆いさお名ゴ支部さん☆
「あい、久しぶり。元気そうだね〜」と楽屋でおしゃべりしているようでした。お笑い優秀児だから、お笑いについて熱く質問されたらどうしようかな~と思ってたんです(笑)。構えず気兼ねなく普通にゆんたく(おしゃべり)させてもらって、上等インタビュアーやっさ〜!

☆松田ナビ☆
名護出身のいさおさんは、昔遊んできた感覚など地元を大切に思いネタにしています。読谷で育ってきた僕も、友達と遊んできた感じの漫才ができたらいいなと思うようになり、参考にしていきたいです。ほんわかしながらしゃべれたな~と思える楽しい時間でした。




【プロフィール】


★いさお名ゴ支部
生年月日:1974年9月17日
出身地:名護市
趣味・特技:釣り、キャンプ、
バーベキュー、料理以外の家事
Twitter:@tubuyagi_shiru

★松田 正(まつだ しょう)/初恋クロマニヨン
生年月日:1984年8月22日
出身地:沖縄県読谷村 
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda

 



 


【インフォメーション】



「でーじお笑い劇場~夏休み特別企画!学生×芸人コラボスペシャル~」

日時:7月28日(日) 14:30開場/15:00開演
会場:那覇市ぶんかテンブス館4階 テンブスホール (マップはこちら)
料金:一般前売り1500円・当日2000円(学生は前売り当日共に500円)
出演:FEC芸人      
お問い合わせ:FECオフィス ☎︎098-869-9505
公式サイト==> http://www.fec.okinawa



よしもと沖縄若手ネタバトルライブ「よしもと-Uchinah-ランキング」
日時:7月12日(金)19:15開場/19:30開演
料金:前売り・当日ともに1000円 
内容:よしもと沖縄芸人全組出演!お客様の投票でランキングが決定します!
会場・お問い合わせ:【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 (マップはこちら)
TEL:098-943-6244
http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/pc/




饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。




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