「なぜ」の質感にとらわれて―本村ひろみの時代のアイコン(7)すずきまことさん(沖縄県立芸大大学院 造形芸術研究科 生活造形専攻2年)

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県外の個展で初日開店前にお客さんが並んでいる。器が出たら即完売。欲しくてもなかなか手に入らない。そんな人気作家に取材に行く。それもまだ学生ということで興味津々で。



誰かの日常の一部に



梅雨の土砂降りの週末、工芸棟で作品の仕上げをしているすずきさんを訪ねて県立芸大のキャンパスに出かけた。雨の音しか聞こえない校内。
「初めまして、すずきまことです。」
人懐っこい笑顔に大きな瞳。
「お名前を見た時、男の子かと思っていました」と挨拶する私に「よく勘違いされます」と笑って答え、実習室に案内してくれた。

昨日窯出ししたばかりなんです、と店頭に並べばすぐに完売してしまう器が目の前にズラリ!しばし興奮気味の私に、クイナの醤油差しに水をいれて、以前のものよりちょっと改良されたんですよと実演もしてくれた。このクイナとキウイの器もきっと即完売に違いない。彼女の作品に登場してくる動物たちはどこかユーモラス。仔ヤギ、ヤンバルクイナ、キウイ、犬、ワニ、狐にリス、ネコ。色あいも表情も「すずきまこと」の世界は物語に溢れていて、愛おしさを感じさせる器なのだ。






自分の器が誰かの日常の一部になる嬉しさ。その器が食卓にある風景を想像して、「使って楽しくなる」「何かを載せたら華やかになる」を大切にしているそうだ。器の後ろに動物を描くのも皿洗いを楽しくするため。時にはお菓子を焼いて皿に載せたりもする。
「食べ物がのっているお皿はカワイイから」だそう。写真を見る感じからお菓子作りもなかなかの腕前。



感情を可視化



「 Pájaro 」(スペイン語で「鳥」)。大学三年生の時に制作、ネガティブ技法で初めて作った作品

すずきさんはオブジェと器の両方を同時進行で制作している。器の素朴な印象と違い、オブジェはとてもスタイリッシュ。ちょうどコンクールに出品する作品を仕上げていた。



「悶々」2017年卒業制作 ネガティブ技法

「春のジレンマ」アジア国際陶磁展出品作品


彼女がずっと追求している“潜るシリーズ”。「意識の中に潜って、言葉にしづらい感情を可視化する」というのがコンセプト。同シリーズで過去に有田国際陶磁展にも入選した。特徴は、土器の表面をピカピカに手で磨いてその上に金彩を施すこと、ネガティブ技法を用いること。


「潜る」シリーズ。表面に金を施し幾何学的模様を表現

大きな作品なのに、見た目に重さを感じさせない質感と柔らかさ。その不思議な形のインスピレーションは、大阪の国立民族博物館で見たペルーの土器から。土器や陶器と違う、石のような、でも軽やかな。そんな「なぜ?」の質感を彼女は追求し続けている。オブジェは油分の多いマンゴーの葉っぱで燻(いぶ)し、煙で油がのる。その表面には金を施した幾何学的な模様(ネガポジ)。


「潜るⅡ」

作品“潜るⅡ”はOIST(沖縄科学技術大学院大学)の学長が購入されたそうだ。今回の作品は現代陶芸の「今」を競う公募展「菊池ビエンナーレ」に出品される。結果が楽しみだ。

超売れっ子の陶芸作家、すずきまことさんは一人静かに雨の午後を作品作りに没頭していた。深夜はラジオを聞きながら制作することもあるそうだ。好きなラジオ番組の話もしてくれた。「深夜のラジオは私に語りかけてくれている」。その言葉が胸に響いた。
沖縄での個展開催はまだ決まっていないそうですが、開催の時は私も初日に並びます!

今後の予定

個展 9月21日〜28日
 セレクトショップ Eckepunkt(エッケプンクト)
                              (東京 自由が丘)
* 新作の器150点を販売!
https://eckepunkt.com/



【すずきまこと プロフィール】


すずきまこと

1995年生まれ 
開邦高校芸術科から県立芸術大学工芸科へ。
現在 沖縄県立芸術大学大学院 修士過程2年在籍。
個展情報などはSNSで発信中。

Twitter
https://twitter.com/AQUARELL21
Instagram
https://www.instagram.com/suzuki_makoto21/?hl=ja




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。




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