不便の解決に試行錯誤中 100cmの視界から―あまはいくまはい―(52)

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15年前、私が学生だった頃の東京と今を比べると、街中で車いすユーザーを目にすることが増えています。エレベーターや多目的トイレが増え、車いすでも過ごしやすくなったからでしょう。でも悲しいことに、電車に乗るにはさらに時間がかかることがあるのです。

ホームと電車の間に隙間や段差があるので、駅員にスロープを出してもらわないといけません。

降りる時もスロープが必要なので、乗る前に降りる駅に連絡し、何時何分の電車の、何号車から降りるのかを伝えます。車いすユーザーが増えると連絡が多くなり、それに対応する人手が増えていないようなのです。土日のJR新宿駅では、連絡がついて電車に乗るまでに30分待つことも。歩ける人ならとっくに目的地に着いている頃なのに。

半年前の冬の寒い夜、ホームで30分近く待たされ、ガチガチに震え、イライラ、クタクタになった私。「もうこれはダメだ!」と思い、それ以後は自分でスロープを買って、持ち歩くことにしました。

中古で買ったので1万円強、重さは4キロで、けっこう重いです。車いすの後ろにかけ、乗る時にヘルパーさんに出してもらいます。これで降りる駅に連絡することなく、目の前に来た電車にすぐに乗れます。

予定通りに移動ができるなんて、快適! 

歩ける人の毎日はこんなに便利なのかと実感しました。


マイスロープを持ち歩いて、電車に乗ります

でも、ここでも悩むことが。私がスロープを持って移動し、周りに助けを求めなければ、駅の使いづらさは何も変わらないでしょう。駅員も増えないだろうし、不便さが誰にも伝わりません。本当は重いスロープを持ち歩かず、スイスイ電車に乗りたいので、根本的な解決にはなっていないのです。

そこで私が選んだのは、駅が混む土日などと、仕事で急ぐ時はスロープを持ち歩き、それ以外は駅員さんに頼むという方法です。

不便を感じている車いすユーザーが声を上げ続け、工夫をしていくのは疲れます。誰かが一緒に「電車に乗るためにそんなに長く待つのは不便だよね」と声を上げてくれたり、「手伝うよ」と手を貸してくれたりしたら、過ごしやすくなっていくでしょう。

沖縄に帰り、うれしいのが、人と人の距離が近くて、知らない人でもすぐに手を貸してくれるところです。エレベーターに乗る時も、ドアを開けて待っていてくれます。ゆっくり動く人をせかすこともないし、イライラすることもありません。そんな思いやりが、県外でも広まってほしいと願います。



(次回は8月6日に掲載します)


伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2019年7月23日 琉球新報掲載)

 



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