沖縄の海の砂がカラフルな絵に変身 砂絵屋 おせあーの

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沖縄の風景と旅が生み出す砂絵

長嶺克洋さんは沖縄の風景を砂絵で表現する作家だ。海岸線の眺め、サトウキビの収穫、集落の憩いの場…。沖縄に住んでいれば何気ない日常の一幕を、優しくも存在感のある雰囲気の砂絵で表現している。日々制作を続ける長嶺さんに、作家になったきっかけや、彼の人生と作品に影響を与えた「旅」の経験について聞いた。



斎場御嶽にもほど近い、南城市知念に「砂絵屋 おせあーの」を構える長嶺克洋さん。やさしい雰囲気の作品が並ぶ店頭には、道行く人々がつぎつぎと足を止める 写真・村山 望

南城市知念、斎場御嶽へ続く道を歩いていると、道端に建てられた小屋が目に入った。軒先に、色とりどり、それでいて優しい雰囲気の絵画が並んでいる。遠目に見ても手作りしたということが分かる小屋だが、気づけば作品を眺めてしまっていた。ここは「砂絵屋 おせあーの」。砂絵作家の長嶺克洋さんの工房兼店舗だ。



沖縄の風景を砂絵に



どこかの集落の昼下がりの様子を描いたもの

「砂絵屋 おせあーの」でとりわけ目を引くのは、店舗入り口にかけられた大判の作品。砂で繊細に色を塗り分け描かれた風景画で、お店からほど近い知念周辺の海岸線を砂絵で描いたものだということがすぐにわかった。

作品の中央部分では、ダイナミックな空と雲、そして光を反射する海の色合いが目を引き、右手側には、津堅島が浮かぶ。また、左手には勝連半島の形も見て取ることができる。絵の手前下側には、地域の家々が緻密に描写されている。パステルカラーを多用した砂絵は立体的で、おだやかな印象を受ける。沖縄の海岸線を描くにはとても相性が良いようだ。

「大判の作品は作るのが大変なんですよ」。店主で作家の長嶺さんがにこやかに笑いながら出てきた。下絵を描いた上で、のりを使い色ごとに砂を定着させていくという砂絵。のりの乾燥を待つ時間や、アクリル絵の具で着色した砂を用意する必要もあるので、1つの作品を仕上げるにはかなりの時間を要するということを教えてくれた。大判の作品は、キャンバスを適宜動かしながらの力作業となるので、制作には体力も必要とされるそうだ。

お店には、大判の作品だけでなく、シーサーやヤンバルクイナをモチーフとしたタイル、長嶺さんが沖縄を表現した作品が他にも並んでいる。



旅人、砂絵屋になる



楽器の演奏で生計を立て、ラテンアメリカを旅していた時代の長嶺さん(中央)。2008年頃、エクアドル中南部の都市クエンカにて

店名になっている「おせあーの」とはスペイン語で海(oceano)を意味する言葉だ。実は長嶺さんは、砂絵を始める前はアメリカからペルーにいたるラテンアメリカの国々を陸路で旅していたという。旅の目的は「世界を見たい」という漠然としたものだったが、約3年間を費やす大旅行となったそうだ。「3年間旅するうちにスペイン語も話せるようになってしまいました」と本人も笑う。それだけでなく、旅行中の生活費も現地で音楽演奏をしてまかなっていたというから驚きだ。

ラテンアメリカの国々では、旅をしながら音楽を演奏し、その公演費で生活する楽団がいる。長嶺さんは、ボリビア、アルゼンチンなど各国の楽団と行動を共にし、ギターやサンポーニャ(ラテン音楽で使用される笛)を演奏。ペルーまでの旅を行うことができたそうだ。この時に得た「自分の好きなことで暮らしていける」という感覚が、独立して砂絵屋さんを開く際の原動力になったという。


サトウキビの収穫を描いた一枚

長い旅の後、沖縄に戻ってきた長嶺さんは、何か独立してできる仕事を模索した。そして、偶然出かけた辺戸岬でとある砂絵師に出会ったことをきっかけに、自らも砂絵の制作を開始。没頭する中でこれで生活していくことを決意したのだとか。旅の中で培ったおおらかさとフットワークの軽さも、表現活動を始めることを後押しした。

ゆったりと、しかし着実に制作を続けてきた長嶺さんの作品は、各地で評判を呼び、今では県内の料理店などで目にすることができる。大きいサイズの作品はオーダメイドでも制作も受け付けているそうだ。どこかで見かけることがあれば、ぜひ、その繊細な表現を楽しんでみてほしい。

(津波典泰)



タイルに描かれた作品は、お土産として観光客らに人気だ

砂絵屋 おせあーの

(与那原方面から来た場合)国道331号を知念郵便局脇の道で右折。
斎場御嶽入り口に続く道をしばらく進むと右手側。
店舗向かいに駐車場あり




(2019年8月15日付 週刊レキオ掲載)




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