ゲイでよかったこと問われ、涙【レインボーハート】


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夏休みに入り、校内研修という学校単位の教職員研修でLGBT・性の多様性をテーマにお話しする機会をたくさんいただいています。

教育事務所という、各地域にある県教育委員会の出先機関のいくつかでも、中堅教諭を対象とした研修で講演させていただいています。日々学校で子どもたちに接する先生方にLGBT・性の多様性を知っていただく本当に貴重な機会になっています。

学校講演会では「ゲイでよかったことはありますか?」と聞かれることがたまにあります。

以前、ある離島の高校でこの質問をされた時、全校生徒の前で泣いてしまったことがありました。つらくて、ではなく、うれしくて、でした。

これまで訪問したのは全国の小、中、高、特別支援学校ののべ133校。北は北海道から南は沖縄まで、さまざまな学校で「周りと違っても大丈夫!」というタイトルで講演しました。これは私がゲイだからできることで、もしゲイに生まれていなかったらできなかったことだと思います。

8月6日、八重山教育事務所中堅教諭等資質向上研修で講師をさせていただきました

私は講演するのが大好きです。こんなにもたくさんの学校で子どもたちに講演できることはとても幸せで、それを思うと熱くこみあげてくるものがあり、泣いてしまったのでした。

ゲイで苦労したことは山ほどあります。小学校の頃は地元の男子ソフトボールチームに入りましたが、男子グループでの練習にうまくなじめませんでした。父にやめたいと相談しても「周りの男子はみんなやっているから、やめてはいけない」と言われ、練習に行くしかなかった時はとてもきつかったです。同級生の男子に「しゃべり方が変」と言われた時も、心にグサッときました。

中学・高校時代は、ゲイであることがばれないよう、必死に女性が好きなふりをし、ゲイであることを治そうとさえ思いました。

就職後、両親にカミングアウトをしたら「親への裏切り」と叱られ、本当につらい思いもしました。ゲイだから経験した、つらい思いがたくさんあったのは事実で、もう繰り返したくはありません。

その一方で、これらを経験し、何とか乗り越えてきた経験があるからこそ、今、子どもたちの悩みや不安に共感できたり、その子どもたちに「周りと違っても大丈夫!」と伝えたりすることができています。

私の講演を聞いた子どもたちの心に、少しでも安心や希望を与えることができていたら、これほど幸せなことはありません。

その点で、私はゲイに生まれて本当によかったなと思っています。

(2019年8月20日 琉球新報掲載)

 竹内清文(たけうち・きよふみ) 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。