試合の前後も楽しみ満載 ベンガラ色のスタジアムで観戦デビュー


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プレビュー
FC琉球、ホームで応援してみた。
→1万人と心が一つになった。

2019年のシーズンからサッカーJ2に昇格したFC琉球。8月には元日本代表の小野伸二選手が加入するなど注目度はうなぎ上りだ。

プロサッカー観戦は未経験のゆうき記者とよしや記者が17日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで開催された横浜FCとのホーム戦にサポーターに交じって応援してみた。

試合前から熱い!

初めての観戦で右も左も分からないよしや記者とゆうき記者。試合開始前の会場の雰囲気を味わおうと、午後4時すぎに沖縄市の県総合運動公園に到着した。午後7時の試合開始まで3時間もあるが、入場口付近には既に長蛇の列ができていた。この日はホーム観客数として最多の1万2019人が詰め掛けた。

試合開始2時間半前にもかかわらず長蛇の列ができていた

FC琉球の取材に慣れているきせカメラマンも「普段の試合でこれだけの行列ができるのは見たことがない」と驚いた。小野伸二選手の加入や横浜FCの中村俊輔選手、松井大輔選手らスター選手の存在が注目度を高めているらしい。

会場周辺に広がる食べ物や飲み物の屋台で試合前の腹ごしらえをする人の姿もあった。
「1キロ弁当」の黄色いのぼりが目立つお店は、FC琉球の試合会場には欠かせない。名物のキロ弁当やチキンカツ丼などを売っている。常連客も多く、客足は途絶えない。

カレーを買いに来た山里茂正さん(47)=沖縄市=は「キロ弁は試合前のルーティーンだ。これを食べないと始まらない」と両手に袋を持って立ち去った。

どうやらグラウンドの裏口辺りにサポーターが集まって応援の練習をしているようだ。話を聞くと、会場入りする選手らはバスで裏口に直接乗り付けるとのこと。よしや記者も応援の練習をしつつバスの到着を待ち構えた。

試合前に会場の外に集まって応援練習するサポーター

しばらくすると、警備のスタッフが観客に「バスが来るので道を空けてください」と声を掛け始めた。ほどなくバスが到着し、選手一人一人が降り立っていった。

FC琉球サポーター代表の池間弘章さん(55)は「今日は特に多くの観客が来ている感じがする。琉球らしい攻撃的なパスサッカーでピッチを沸かせてほしい」と期待を込めた。

試合会場入りし笑顔で握手する琉球の小野伸二選手(右から2人目)と横浜の中村俊輔選手(左)
試合会場入りした選手たちに声援を送るFC琉球のサポーターら

まずは格好から

「まずはチームTシャツを買わないとね」と物販コーナーに向かった記者2人。FC琉球のグッズを販売するテントには人がいっぱい。チームカラー“ベンガラ色”のTシャツやユニホーム、マスコットキャラクター「ジンベーニョ」の柄が入ったタオルなどが並んでいる。時期によってTシャツの柄も変わるのだそう。

2人も早速、Tシャツとタオルを購入した。ミーハーなよしや記者は7番の番号と「SHINJI」の名前が入った小野選手モデルTシャツを購入。

物販コーナーで小野選手の名前入りのTシャツを購入し、すぐに着替えていた幸地雄介さん(30)=那覇市=は「やっぱりチームのTシャツを着ると一体感が出る」と試合への期待満々。

ゆうき記者も「これで準備はOK」とワクワクしながら初のJリーグ観戦に備えた。

試合観戦に向けてTシャツを買う記者2人

初心者歓迎!

2人はTシャツに着替え、いよいよ会場入り。試合開始前からサポーターは巨大な旗を振り、応援歌を歌っている。その熱と一体感に押され、輪に入っていいのかためらっていたよしや記者とゆうき記者。おそるおそる「サポーターの皆さんと一緒に応援してみたくて…」と伝えると、「こちらにどうぞ」と笑顔で迎え入れてくれた。初めての人でも歌えるよう歌詞カードも配っている。

大勢の観客の声援を受けて入場するFC琉球の選手ら

さっそくモンゴル800の「琉球愛歌」の替え歌が始まった。「琉球の心/島を愛し平和を唄う/勝利を信じ/ともに進もう/誇りを胸に」の歌声が満員の会場に響き渡った。

試合開始後も応援はノンストップだ。太鼓やパーランクー、指笛、手拍子に合わせて「攻撃!攻撃!行け琉球」など、十数曲に及ぶ応援歌を切れ目なしに歌い継いでいく。

雰囲気づくりの要となる太鼓を担当しているのは屋良朝紀さん(28)。90分間たたきっぱなしでもリズムを崩さない。最初は手の皮もむけたというが「もう慣れましたよ」と笑う。

コーナーキックなどチャンス時には会場の大型モニターで「タオルを振り回せ」と呼び掛け、サポーターを盛り上げる演出もあった。

応援をリードするサポータ―代表の池間弘章さん(左)

前半10分ごろ、相手チームに先制点を許したが応援は途切れず、むしろ声量を増していく。点を取られた時こそ選手を盛り上げようと意識しているという。

その思いが選手の背中を押したのか、前半19分、上門知樹選手が同点のゴールを突き刺した。バックスタンドは歓喜に沸き、よしや記者も近くのサポーターとハイタッチ。「次は逆転だ」と応援に熱を込めた。しかし相手もただでは点を取らせてくれず、前半でさらに2点を奪われ、1対3のまま後半戦へ。失点時やピンチ時に歌う「琉球ちばりよー、ちばりよー」で迎えた後半20分。小野選手がピッチに降り立つと、「小野伸二、小野伸二」のコールに次いで「勝利目指し、気持ち一つ、最後まで戦おう」の応援歌でサポーターのボルテージは最高潮に達した。よしや記者とゆうき記者も90分間歌い続けた。

途中出場し、華麗なプレーでサポーターを魅了する小野伸二選手(右)

試合は1対3のまま終了し、FC琉球は敗れたが、池間代表は「ここで声を出そう。選手に声を届けよう。次につながるから」と試合終了後もしばらく声援を送り続けた。

友人に誘われて初めてサポーター席で観戦した當間曉さん(32)は「最初は応援歌を歌うのは恥ずかしかったが、一緒に盛り上がって楽しかった」と話した。全力で試合観戦したいという人にサポーター席はお薦めだ。

選手に熱い声援を送るサポーターら=17日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム

すぐそばに選手が

試合終了後も楽しみは続く。選手の出待ちだ。選手が乗るバス周辺に大人から子どもまで、スマホや色紙を持って待ち構えている。記者も待ってみることに。

しばらくするとブラジル元U―17代表のハモン選手が現れた。ゆうき記者も「ハモン!」と叫び手を伸ばすと、笑顔で握手をしてくれた。他の選手も疲れを見せず丁寧にサインを書き写真撮影までしていた。小松駿太選手のサインをもらった長田欣志郎さん(11)=浦添市=は「毎回色紙を持ってきている。サインもらえてうれしかった」と満足げだ。ファンとの距離の近さもローカルチームの良さなのかもしれない。

(2019年8月25日 琉球新報掲載)