
地方部記者が担当地域のイチオシを紹介する「J(地元)☆1グランプリ」。まだまだ暑いですが、食欲の秋はすぐそこ。食をより楽しむため、今回は地元特産の調味料を紹介します。脇役ではありますが、その地域の食文化の一端をのぞかせる奥深さもあります。いろいろな使い方ができるのも、調味料の魅力の一つ。この秋、おすすめの地元調味料と使い方を探ってみませんか。
やんばるスパイス ★ 北部各地


地域密着、人気の味

本島北部・やんばるにあるあのカフェ、あのそば屋。あなたのお気に入りの飲食店で、ひそかに使われている魔法の“粉”があるのをご存じですか? その名は「やんばるスパイス」。2011年の誕生以来、やんばるでしか手に入らない地元密着型スパイスとして人気を集めている。
食を通じた地域活性に取り組む農家や飲食店が中心となって設立したグループ「やんばる畑人(はるさー)プロジェクト」が開発した。「家庭の食事にスパイスを」をモットーに開発してから9年、現在では年間約2千本を出荷するほどの人気を集める。
原材料のうち58%が地元産、新鮮さも売りの一つ。名護市と大宜味村で採れたターメリック(秋ウコン)に黄金ウコン、しょうが、島とうがらしの4種にインド産スパイス5種を配合。オリエンタルでスパイシーな刺激の中にさわやかなショウガの香りがふわりと香る。カレーはもちろん、野菜炒めや沖縄そばにも合う。
プロジェクト代表の芳野幸雄さん(49)は「スパイス料理を作るのではなく、普段の料理にさっと一振りしてみてほしい。きっと笑顔になりますよ」と話した。「やんばるスパイス」は業務用のほか、北部各地のプロジェクト協力店舗で卓上瓶(15グラム入り、756円)の販売もしている。
問い合わせは事務局(電話)0980(43)5895。
もずく醤油 ★ うるま勝連


塩分抑え、とろみも

サンゴ礁に囲まれた美しい海を持つうるま市の勝連地域は、全国一のモズクの生産地として名高い。そのモズクを使った調味料で代表的なのが「もずく醤油」だ。通常のしょうゆとは違い、とろみがあるため手の甲に垂らしてもこぼれ落ちない。
モズクを洗浄しカットした後、しょうゆと混ぜ加熱すると出来上がる。一般的なしょうゆに比べ、塩分は半分に抑えられている。しかしとろみがある分だけ、塩分は半分でも口の中で塩味が持続する。
いろいろな料理と合わせられる。一般的な使い方のほか、直接ご飯の上にのせたり、ハンバーグやパスタにかけてもおいしい。ステーキにかける食べ方もあり、用途は実にさまざまだ。
うるマルシェや海の駅あやはし館、うるまーるなどで購入できる。小袋タイプは250~300円、スタンドパックタイプは500~700円。もずく醤油のほか「シークヮーサーもずくポン酢」もある。
勝連漁協の古堅勧(すすむ)さん(48)は「採れたてのモズクで作ったしょうゆを使えば、おいしくおしゃれに食べられる」と太鼓判を押した。
(砂川博範)
美らキャロット入り万能だれ ★ 糸満


何にでも相性ピタリ

サラダから焼き肉、野菜炒め、魚料理まで、名前通り何とでも相性ぴったりな「美らキャロット入り万能だれ」。しょうゆベースに、すりおろした糸満市特産の美らキャロットとニンニクの風味が効いた道の駅いとまんの限定商品だ。
美らキャロットはミネラル豊富な土壌で育ち糖度は8程度で普通のニンジンより甘い。「万能だれ」は10年ほど前、道の駅いとまんのオープンに伴い、特産品を作ろうと開発した。
子どもからお年寄りまで家族みんな大満足の甘口と、刺激がほしい大人向けの辛口の2種類。道の駅いとまん内の糸満市物産センター遊食来(ゆくら)で販売する。直営部店長の浦崎利恵さん(54)は「トロトロの目玉焼きを白米に載せ、辛口をかけると最高。卵焼きにも合う」と、意外な食べ方をオススメする。統括部長の知名定成さん(62)は「やっぱり肉」と焼き肉のたれとして辛口を推す。
一度使うとリピーター間違いなし。わが家の食卓でも大活躍の「万能だれ」。ぜひ一度お試しあれ。
税込み410円。市西崎町4の19の1。午前9時30分~午後7時。年中無休。(電話)098(992)1030。
(豊浜由紀子)
からそばのタレ ★ 石垣


島独自のグルメ再現

袋に入った八重山そばにツナ缶やサバ缶、しょうゆなどを混ぜ合わせて食べる石垣島のB級グルメ、「からそば」。調理も手軽で、子どもから大人までが親しんできた食べ方だが、かつてに比べて下火となっている。そんな石垣島独特の“文化”を残したいとの思いから製造・販売されたのが「からそばのタレ」(税込み750円)だ。
味はピリッと辛(から)い「島唐辛子」と、意外とさっぱりした味わいの「胡麻(ごま)」の2種類が用意されている。考案した金城製麺所の金城秀信さん(43)は「ポン酢をベースに八重山そばに合う味を探った。沖縄らしく、シークヮーサーの風味も感じられる」と語る。
販売開始は2010年。金城さんによると同様の商品はこれまでになく、販売当初の評判は芳しくはなかったよう。だが今ではリピーターも増えており、「からそばの認知度は間違いなく上がっていると感じる」と手応えを語る。
応用幅も広い。「島唐辛子」なら冷ややっこに掛けたり、納豆のタレ代わりにしたり。「胡麻」はサラダに掛けてもおいしい。鍋物にもおすすめだ。
金城さんは「もっと他の味も出したい。八重山そばでつくる焼きそば用のソースとか、別のオリジナル商品も作れたらおもしろいかな」と笑顔を見せた。
からそばのタレは石垣市内のスーパーなどで販売されているほか、インターネット通販でも購入できる。

マイ調味料見つけよう
塩に砂糖に酢にしょうゆ、みそ…。調味料にもいろいろありますが、料理を生かすも殺すも調味料次第となることもあります。
地方独特の調味料として有名どころは秋田県のしょっつるや石川県のいしる、大分県のゆずこしょうなどがあり、県内は島トウガラシを泡盛に漬け込んだコーレーグスが代表格です。また島こしょうといわれるヒバーチ(ヒハツ)も地元オリジナルの香辛料でしょう。
全国的に調味料づくりは盛んです。県内でも料理の味わいを豊かにする調味料づくりに情熱を傾ける人がたくさんいます。食欲の秋に向け、マイ調味料を見つけてはいかがでしょうか。
(学)
(2019年9月8日 琉球新報掲載)