『凱里ブルース』 詩的で幻想的な、水彩画のような世界

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(C) Blackfin(Beijing)Culture & MediaCo.,Ltd ☆(二分ダーシ) Heaven Pictures(Beijing)The Movie Co., - LtdEdward DING - BI Gan /ReallyLikeFilms

 前代未聞のラスト60分間に及ぶ“3Dワンカット”が話題を呼んだ『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(全国順次公開中)。その、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノも高く評価する中国の新鋭監督ビー・ガンが、2015年に発表した長編デビュー作が日本初公開される。亜熱帯の貴州省凱里(かいり)市にある小さな診療所に身を置く主人公が、弟から虐待されていた甥っ子を捜し、老齢の女医の思い出の品をその元恋人に届けるべく旅に出る。たどり着いたのは、過去と現在、夢と現実が錯綜する街だった…。

 至る所に時計=時間のイメージがあふれ、常に滝や雨の音が背後で響く。情報量の多い映画で、それらが油絵のように塗り重なることで、むしろ真逆の詩的で幻想的な水彩画のような世界が編み上がる。まさに唯一無二の作家性。『恋恋風塵』のトンネル、『憂鬱な楽園』のバイクの二人乗り…台湾のホウ・シャオシェンの影響も指摘されるが、似て非なるように思う。

 むしろ本作にも、40分間にわたる超絶的なワンカットがあったり、カメラがパンすると目の前を列車が走っていたり、チェン・ヨンゾンに音痴な歌を歌わせたり…と次作『ロングデイズ・ジャーニー』で洗練される前の才能の原石のような味わいがある。しかもそれは、粗削りながら見たこともない光を放つダイヤの原石なのだ。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:ビー・ガン

出演:チェン・ヨンゾン、ルナ・クォック

近日公開


(共同通信)


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