<金口木舌>生徒に学ぶ


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 日本を代表する客船「飛鳥Ⅱ」が昨年末、沖縄市の中城湾港に初めて寄港した。雨がやみ、埠頭(ふとう)に近づくにつれて晴れ間が出たという。「天使の階段がきれいでした」

▼小久江尚(こぐえひさし)船長は初寄港を祝うかのように差した印象的な朝日をこう表現した。雲間から差す束のような光のこと。天使のはしご、薄明光線ともいわれ、吉兆だと言う人もいる
▼先日、那覇新都心で横断歩道を渡る視覚障がい者の男性を生徒2人が介助しているのを見た。対向車の女性も、バックミラーのバイクの男性も穏やかな表情で見守った。暖かい冬だが、日が差すようなぬくもりを皆が感じたはずだ
▼2人の自然な行動が強く心に残り、後日、近くの学校に問い合わせた。安岡中1年の砂川林檎(すなかわりんご)さんと榊姫奈(さかきひな)さんだった。下校中、青になっても立ったままの男性が気になり「大丈夫ですか」と声を掛けたという
▼前にも同じ男性の横断を手伝ったことがある榊さんは「ほかにも(男性を)助けている人はいる」と面はゆそう。砂川さんは「姫奈と一緒だからできたこと」と話していた
▼まれな現象ではないけれど、薄明光線はいつ見ても美しい。当然のこととして声掛けをした2人の行動も人の心を揺り動かした。困っている人がいたら気軽に手を差し伸べる。何のてらいもなくそんな振る舞いができる中学生がいる。大人が学ばせてもらうことがある。