<社説>2018年回顧 諦め狙う国には屈しない


社会
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 沖縄は今年も激動の1年となった。

 一番の衝撃は翁長雄志知事の急逝だった。米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地問題で、政府と真っ向から対峙(たいじ)し、県民世論を背景に建設反対を訴えてきた。信念の政治家を失い、県民の悲しみと喪失感は大きかった。
 翁長県政の3年8カ月間は、埋め立て承認の取り消しや政府との訴訟など、ウチナーンチュの誇りと尊厳を取り戻す闘いだった。国策で分断されず、沖縄が一つになることを訴えた翁長氏の言葉は重い。
 2カ月早まった知事選では、翁長氏の後継・玉城デニー氏が当選した。県民は過去最多得票の39万票余で再び新基地ノーの知事を選んだ。しかし、安倍政権は明確な民意を無視して、沖縄を抑えつけようと力ずくで襲いかかってきた。
 翁長知事の遺言となった埋め立て承認撤回に対して、国は私人になりすまし、市民救済のための行政不服審査制度を使って工事を再開した。さらに県に届け出た港とは違う民間桟橋から土砂を搬出するなど、法令を恣意(しい)的に解釈し、あくどい手法を重ねている。
 今月14日には、ついに辺野古への土砂投入を強行した。岩屋毅防衛相は辺野古移設は「国民のため」と明言した。沖縄を捨て石にして、国策の犠牲に追い込んだ沖縄戦を想起させる思考は許せない。
 土砂投入は既成事実を積み重ね、県民の諦めを狙うものだ。だが、投入区域の面積は全体の4%でしかない。大浦湾側の軟弱地盤は大規模な地盤改良と設計変更が必要で、新基地の完成は見通せない。
後戻りできない次元ではない。
 国の横暴にあらがう市民の動きも特筆される。9万筆以上の直接請求を受けた県民投票が来年2月24日に実施される。6市の参加が未定だが、自治体が投票する権利を奪うことはあってはならない。
 埋め立て中止を求める米ホワイトハウスへの請願署名の動きも急速に広がり、30日現在で17万筆を超えた。国際世論の後押しにも期待したい。
 基地重圧の一方で、社会現象となったのが県出身歌手・安室奈美恵さんの引退だ。9月の最終ライブには県内外から多くのファンが訪れ、経済効果をもたらした。
 歌手としての功績にとどまらず、自立した女性の生き方も多くの共感を呼んだ。「平成の歌姫」の存在は県民に自信と勇気を与えた。
 明るいニュースでは、プロ野球の山川穂高、多和田真三郎両選手の活躍、FC琉球のJ2昇格が来季に期待を抱かせる。宮古島のパーントゥのユネスコ無形文化遺産登録は地域に活力を生みだしそうだ。
 経済では、観光産業を筆頭に好調さが続いている。基地に依存しない沖縄の潜在力、可能性が広がっている。
 来年は国策に振り回されず、自力で沖縄の活路を見いだしていきたい。政府の強権が強まっても、諦めることなく道を切り開いていこう。