<社説>教職員の働き方改革 家庭、地域の協力も必要


社会
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 勤務時間外や土日の電話対応を留守番電話にする小中学校が、本島南部を中心に広がっているという。心身の健康保持や法令順守の要請の中で、教職員の働き方改革は待ったなしだ。子どもの安全に関わる部分で保護者に不安を抱かせることがないよう、地域の理解を得ながら教職員の負担の軽減を進めなければならない。

 学校現場では長時間労働や休日出勤が慢性化している。県教育委員会が2018年11月に実施した実態調査によると、勤務時間外の業務時間が1日平均4時間以上の教職員が小学校で9・2%、中学校で11・4%だった。毎日忙しいと「感じている」と答えた割合は小学校で50・9%、中学校で53・2%に上る。
 学級担任制をとる小学校では児童が下校するまで休憩を取ることも難しく、翌日の授業準備や教材研究を勤務時間内に終えることができない状況がある。部活動の指導で全員顧問制をとる学校も多い中学校では、放課後の部活終了後に授業の準備をせざるを得ない。部活動指導で土日がつぶれる教員が少なくない。
 高校を含め県内教職員の17年度の病気休職者数は前年度比11人増の424人で、在職者に占める割合は2・8%と全国の0・85%より約2ポイントも高い。病休者のうち171人が精神疾患となっている。
 日々の授業や生活・進路指導に加え、学力向上の対策、いじめや不登校への対応、グローバル化が進む新しい時代に必要な資質能力の育成など、学校や教員に求められる役割は複雑、多様化している。業務の負担増加と疾患発生との関連が考えられる。
 教職員の健康を守るため長時間労働は放置できない。優秀な人材が教職を志望して教育の質を確保する観点からも、教育現場の働き方改革を急がなくてはいけない。
 教員の多忙化解消は国全体の課題だ。文部科学省は学校外の人材による「部活動指導員」を17年度に制度化し、小学校高学年への「教科担任制」導入も検討している。
 県教委は今年3月に「教職員働き方改革推進プラン」を策定し、21年度までに時間外勤務を20%削減する目標を立てた。留守番電話による時間外の対応もそうした改革の一環となる。電話対応に追われる負担を軽減し、児童生徒と向き合う本来の業務の充実につなげるというものだ。
 もちろん不審者情報の通報や帰宅が遅い子どもの安否確認など緊急を要する内容は、別の連絡手段を確保し、保護者と共有する必要がある。一方で、たむろする学生への声掛けなど、学校への通報ではなく地域の連携で対応できる内容もあるだろう。
 多様化する業務の見直しは教員の意識改革だけでは難しく、保護者、地域の理解と協力が欠かせない。教育に関する役割の多くを学校に期待するだけでなく、家庭や地域の教育力も高めていきたい。