信頼への一歩「やっと…」 知的障がい仲村さんの高校入試 家族、進展に期待


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高校の校長へ配る資料や合理的配慮の方法について調整する仲村伊織さんの両親(右側)と県教育委員会の担当者(左側)=12日、県庁内

 重度知的障がいがあり、2年連続で高校受験に不合格となっている仲村伊織さん(17)を巡り、「学びを保障できない」との従来方針を撤回した県教育委員会が、合格の可能性にも言及した。不合格になった場合の対処策を示すなど、受験前から不合格を示唆するこれまでの説明から一転、県教委は12日の交渉で「学びを保障できる」とする新たな方針の周知方法まで家族の要望を聞いた。伊織さんの両親は「やっと信頼関係を築くテーブルが用意された」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 1月30日に開かれた前回の交渉では、12時間をかけて「学びを保障できない」という方針の撤回を引き出した。2回目となる今回は、障がいがあってもなくても「学びを保障できる」という共通認識の下、高校の校長に配る資料の選定や入試当日の「合理的配慮」の方法など、具体的な調整が進んだ。父晃さん(53)は県教委への信頼と感謝を強調し「実質的に動き出した」と評価した。

 ただ、合格の可能性に言及したものの、現行の入試制度は「定員内不合格」が出る仕組みを維持したままで、最終的に校長が判断することになる。昨年度は理解が十分でなかったという入試当日の「合理的配慮」も、細かな調整を要する。母美和さん(51)は「実際に配慮するのは教育委員会ではなく、志望校の先生方。できることとできないことがあると思うが、なぜその配慮を必要とするのか丁寧に説明したい」と述べ、学校現場への理解も求めた。

 伊織さんの高校入試挑戦を巡っては、「点数を取れる人だけが高校に入学できる」「障がい者は特別支援学校へ行くべきだ」といった批判がやまないという。晃さんは「優生思想や適格者主義がこびりついたまま、今の高校入試が残っている。(伊織さん以外にも)15歳で教育から排除された子たちの社会的保障は全然ない。子どもの貧困が問題になっているが、その子たちがどこから生まれているか疑問に思ってほしい」と話した。