<社説>新聞週間始まる 真偽見抜く報道に徹する


<社説>新聞週間始まる 真偽見抜く報道に徹する
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 15日から新聞週間が始まった。読者に新聞やその報道についてより関心を持ってもらうために毎年10月に設定されている。新聞報道に携わる者がその使命を改めて確認する機会でもある。

 ことしの代表標語は「流されない 私は読んで 考える」。全国から寄せられた約1万編から選ばれた。めまぐるしく飛び交う情報の中から必要な情報を精選し、紙面で報じる新聞への期待、信頼が込められていよう。

 単にニュースの価値を判断し、整理して示すという従来の役割に加え、新聞をはじめメディアには、はびこる誹謗(ひぼう)中傷や偽の情報への対応が求められている。ヘイトや無関心を含め、真偽を見抜き、読者に正しい情報を提示する報道姿勢に徹しなければならない。読者が考えるための正確な情報をどう提供するのか。代表標語は新聞制作に関わる者への戒めにも受け取れる。

 ことしの新聞週間は衆院選の選挙期間と重なる。一斉にスタートした選挙活動で交わされる論戦で憲法改正は主要テーマとなろう。憲法記念日に合わせた近年の世論調査では、改正が「必要」と「どちらかといえば必要」で7割となることが続いている。

 ただ、改憲の進展について国民は慎重である。ことしの共同通信の憲法世論調査で国会議論を「急ぐ必要がある」としたのは33%で「急ぐ必要はない」は65%だった。

 岸田文雄前首相は自身の自民党総裁任期中の改憲を目標に定め、国会内の改憲勢力は議論を急いできた。

 改憲勢力が衆参両院で改憲発議に必要な3分の2を確保していたことも考えれば、議論の進展はやむなしと受け止めた人もいただろう。世論調査を踏まえた報道は読者が「流されず」に考えてもらう論点を提示したと言えよう。読者に多様な判断材料を提供する報道を心がけたい。

 南西諸島での防衛力の強化が急速に進められる。政府は中国や北朝鮮の脅威に対する備えの増強と言う。しかし、北朝鮮のミサイル発射実験のたびに出される全国瞬時警報システム(Jアラート)などによって国民、県民の危機感を過剰にあおってはいないか。敵基地攻撃能力(反撃能力)を保持する一方で、周辺国との対話を深める外交努力は尽くされているのか。絶大な権力を持つ国の動向を監視する役割を果たしたい。

 発行部数の減少傾向など新聞を取り巻く環境は厳しい。インターネットの普及が要因とされるが、それだけだろうか。多様な読者のニーズに応じ、魅力ある紙面づくりへの挑戦はできているだろうか。

 新聞週間標語の佳作10編の中には、浦添市の金城沙代さんの「めくるたび 未知の世界を めぐる旅」も選ばれた。日々の紙面をめくってもらえるよう読者の信頼と支持に応える新聞制作に徹することが報道の自由の基盤となるのだと肝に銘じたい。