沖縄と政府の対立深まり民主主義が形骸化 在職最長の安倍首相で波平恒男・琉大教授


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波平恒男 琉球大学教授

 自民党内に安倍晋三首相に代わる人がいないことだけが長期政権となっている理由だ。沖縄との関係で言えば、安倍政権が誕生して以降、沖縄と政府との対立はますます深まっている。安倍政権は沖縄との話し合いの姿勢を示さず、力で押し切ろうという姿勢が続いている。

 これまで米国主導だった国際情勢は中国が台頭したことで、変化を踏まえた新たな国際関係が問われているが、安倍政権は米国のパートナーに徹して、対米追従姿勢をより強めている。しかし肝心の米国はトランプ政権が誕生したことで自国第一主義が強まり、その結果、米国からの高額な兵器購入や在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の増額要求などがあり、従来の対米路線は行き詰まりを見せている。

 辺野古新基地建設問題については、県民総意として埋め立て反対を言い続けることが重要だ。とりわけ、首里城火災により辺野古問題の後景化が懸念される。首里城再建で国が協力するからといって辺野古で妥協することがあってはならない。そこは注意すべきだ。国の金は国民の税金であり、安倍政権の財産ではない。

 安倍政権下で民主主義の形骸化も進んでいる。単に数の力ではなく、互いに根拠のある主張を出して、その中で最も合理的かつ利害の普遍化を探るのが本来の民主主義だ。

 数に任せて多数の損害を少数者に押し付ける状況がずっと続いている。少数派は沖縄だ。例えば、9人が楽するために1人に10人分のかばんを押し付ける構図だ。民主主義の形骸化は対米追従と地続きであり、安倍政権はこれまで対米追従路線を正当化してきたが、その流れを変える時期に来ている。
 (政治学)