【沖縄】沖縄市上地にある仙台育英学園高校広域通信制課程「ILC沖縄」の2年生幸喜樹里さん(17)は27日、東京で開かれる「第33回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出場する。両親がろうあのため、幼い頃から手話を使うことは当たり前だった。中学の時は周囲から奇異の視線を向けられ、不登校にもなったが、高校で自分のことを理解してくれる先生と出会い、自信を取り戻した。「手話は“言語”であることを分かってほしい」。コンテストで思いを訴える。
苦しい日々だった。中学校で両親と手話で話をしているのを見た同級生たちに陰口をたたかれ、いじめを受けた。「親が手話を使うからいじめに遭うの?」。追い詰められ、行き場のない感情が親への反発に変わった。不登校になり、手話を使うことをやめた。
中学3年の頃、転機を迎える。「このままではあなたは高校にも行けないよ」。教師から向けられた言葉だ。悔しかった。しかし同時にある思いが芽生えた。「何か特技を身に付けたい」。そして気付いた。「自分には手話がある」
高校ではいい出会いが待っていた。手話ができることを褒めてくれる先生は、親に手話で「こんにちは」と言ってくれた。うれしかった。親への反発はなくなり、今では電話や病院での通訳もする。「社会福祉士になり、困っている人の助けになりたい」。夢も決まった。
コンテストに向け入念な準備をしてきた。4月の入学式では、150人を前に手話付きであいさつ。昨年の第32回で2位に輝いた真和志高校の與那嶺舞寧さん(当時3年)に、スピーチの仕方や表情の作り方などを指導した山城彩音先生にも教授を受けた。弁論原稿を評価する1次審査では69人のうち30人に残り、手話と音声を録画した映像で選考する2次審査でも本選に出場する10人に選ばれた。
「緊張はすると思うけど、練習してきたことを本番で出し切りたい」。控えめな決意だが、思いは強い。「障がい者に対して、差別的に見る人もいる。個性であることを理解し、みんなが普通に暮らせる社会になってほしい」。幸喜さんは手話という特技を手に、自ら発信し、自らの力で社会を変えていく。