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不純物「逆転の発想」 情熱で独自の道開く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 琉球ガラス界を引っ張った稲嶺盛吉さんの死去を受け、関係者から普及と発展に貢献した功績をしのぶ声が聞かれた。
 RGC株式会社(琉球ガラス村)=糸満市=の稲嶺佳乃代表取締役(49)は「ガラスを再生する際に不純物と言われた泡を、稲嶺さんが逆転の発想で技法として取り入れ、“泡ガラス”を作った」と功績をたたえた。同社の稲嶺盛福会長は盛吉さんの親戚に当たると言い、佳乃さんは「(盛吉さんは)ものすごく研究熱心だったと会長から聞いている。先駆者の一人として新たな世界を切り開き、琉球ガラスを底上げしてきた。訃報は沖縄県のガラス工芸にとって悲しいことだ」と語った。
 現代の名工でもある琉球ガラス職人の末吉清一さん(61)は「ガラスに対する情熱、一心不乱に仕事に打ち込む姿を見せてくれた存在だった」と訃報に肩を落とす。「心の内にあるものを表現する方法を教えてくれた。今度は私たちが次世代に技術を伝えたい」と継承へ思いを新たにしていた。
 長男の盛一郎さんは2020年に宙吹きガラス工房「虹」を盛吉さんから引き継いだ。盛一郎さんは「師匠として、父の存在は大きかった。信念を貫く姿を学ばせてもらった」と語った。24歳で工房に入った時、盛吉さんを超えたいと思っていた。しかし仕事に対する盛吉さんの姿を見ていく中で心境が変化。「父がしてきたことを守り続けたい」と決意した。(中村万里子、玉寄光太)