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記者の賠償命令取り消し 神奈川 名誉毀損認めず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 在日コリアンに関する言動を「悪質なデマ」と報道されるなどして名誉を傷つけられたとして、川崎市で政治活動をしていた男性が神奈川新聞の石橋学記者に計約280万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は4日、石橋記者の発言の一部を名誉毀損(きそん)と認めて15万円の賠償を命じた一審横浜地裁川崎支部判決を取り消し、請求を棄却した。
 中村也寸志裁判長は「発言の前提事実は真実で、意見や論評としての域を出ない」と判断した。
 判決によると、男性は2019年5月にJR川崎駅前で演説した際、16年にデモ行進の集合場所として公園の使用を市が認めなかったことについて「(当時施行前の)ヘイトスピーチ解消法を理由にしている」と主張。現場で取材していた石橋記者は、市の都市公園条例が根拠だと指摘し「勉強不足」「でたらめ」と発言した。
 一審判決はこれについて賠償を命じる一方、男性について「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗(ひぼう)中傷」と記載した記事には公益性を認めた。
 判決後、東京都内で記者会見した石橋記者は「差別に対して批判的に取材し、記事を書くことの正当性が認められた」と話した。神奈川新聞社の秋山理砂取締役統合編集局長は「今後もあらゆる差別根絶のための報道を続け、記者をサポートし、『論評の自由』を抑圧する訴訟には屈しない」とのコメントを出した。