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障害ある子や家族に園開放 ゆっくり動物と触れ合って 「思い出つくる機会に」


障害ある子や家族に園開放 ゆっくり動物と触れ合って 「思い出つくる機会に」 障害のある子どもらに施設が開放され、間近でウマを見る来園者ら=2022年11月、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド(同園提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 障害のある子どもやその家族らにゆっくり動物との触れ合いを楽しんでもらおうと、夜間に園を開放したり終日貸し切りにしたりする動物園や水族館の取り組みが好評だ。オランダの動物園発祥の活動で国内では年齢制限を設けないところも含め沖縄こどもの国など30以上の施設が開催。識者は「家族で安心して思い出をつくれる機会だ」と話す。
 8月中旬、閉園後の茶臼山動物園(長野市)に歓声が響いた。夜間に障害のある子どもたちを招待する「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」。親子約130人がスタッフの説明を受けながら、活発に動き回るライオンに目を輝かせたり、ゾウに餌をやったりした。
 車いすを利用する同市の中学生高橋美羽さん(13)はモルモットをなでて「かわいい!」と笑顔を見せた。父秀典さん(53)は普段、混雑する細い道などで迷惑をかけているのではないかと心苦しく感じることがあるといい、この日は「周りの目を気にせずゆったりできる」と喜んだ。
 同園は職員の提案で2010年にイベントを始めた。利用者から「勾配が急で車いすの移動が大変」との声があったことでバリアフリーの重要性にも気付き、改善策を検討中だ。
 17年から続ける和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドは21年、それまでの夜間から終日貸し切りの開催に変え、昨年は約4千人が来園。大きな音をストレスに感じる子どもに配慮し、アトラクションの音を下げたり高音を調節したりした。
 和歌山県がさまざまな障害を理解するため実施している研修を自主的に受講したスタッフもおり、声かけやサポートの技術は年々向上している。
 放課後等デイサービスなどを提供するメディケア・リハビリ(大阪府羽曳野市)の浜弓場節さん(35)は「貸し切りで安心して動物を見て触り、においを嗅ぐことができる。五感が刺激され、心身の成長にとって貴重な機会だ」と取り組みを歓迎する。保護者は子どもができないことに目が行きがちだが、イベントに行くことや餌やりなど「できる」を知るきっかけにもなる、と強調する。
 松浦教授は「他園でも知識を持ったボランティアがいれば、より安心できるのではないか」と指摘。「(子どもの障害を気にして外出を控える)保護者やきょうだいにも支えが必要。家族皆が楽しめるこのような取り組みは重要だ」と話している。
障害のある子どもらに施設が開放され、間近でウマを見る来園者ら=2022年11月、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド(同園提供)