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津覇、沖縄から初の表彰台 “県内唯一”の飛び込み選手「支えに感謝でいっぱい」<北部九州総体>


津覇、沖縄から初の表彰台 “県内唯一”の飛び込み選手「支えに感謝でいっぱい」<北部九州総体> 飛び込み競技で県勢初の3位となった津覇すみれ(左)と長年指導している中野徳広コーチ
この記事を書いた人 Avatar photo 屋嘉部 長将

【北部九州総体取材班】2日連続で沖縄県の競泳、飛び込みの新たな歴史が刻まれた。全国高校総合体育大会・北部九州総体は18、19日に佐賀県と大分県で行われた。競泳では女子50メートル自由形では平良吏美華(那覇西)が25秒76の沖縄県新記録で準優勝した。県勢の決勝進出は2012年の北信越かがやき総体の時に3位となった田中瑞穂(当時・普天間高3年)以来で、準優勝は沖縄の学校から出場した選手の最高位となった。


 女子飛び板飛び込み決勝。全員の演技が終わり、順位が読み上げられる。「3位、津覇すみれ、首里高校」とアナウンスされると津覇は手で顔を覆った。順位を競い合った全国の仲間やそのコーチに声を掛けられると思わず涙した。「目標の表彰台に上がることをかなえられてほっとしている。支えてくれた人たちに感謝でいっぱい」と喜びをかみしめた。

 当日は体が重く、いい状態ではなかった。予選時には土砂降りで状況も悪かった。それでも「沖縄でも雨の日にやっている」と、苦手な前逆宙返り2回半の技もしっかり決め、3位で予選を通過した。

 予選では高さや入水の良さが得点に反映されていたため、「予選のようにやっていこう」と決勝もこれまで通りのパフォーマンスを心掛けた。強みである、板を踏み込み、高さを出した。得点は伸び、自身初の400点台に乗せた。

 城北小2年から競技を始め、現在、飛び込みをしているのは県内で津覇だけ。高校に入ると1年で全国総体出場をつかんだが、コロナの濃厚接触者となり、出場を辞退した。2年生では台風などで大幅に予定が変更された中で7位と順位を伸ばし、3年生最後の全国総体で3位までたどり着いた。「自分1人のために、県の方々が支えてくれた。やってきて良かった」。県勢初となる表彰台に上り、銅メダルを手に笑顔で誇った。

(屋嘉部長将)

女子飛び板飛び込み決勝 自身初の400点台の記録を出し、県勢初の3位となった津覇すみれ(首里)=19日、大分県の別府市営青山プール(屋嘉部長将撮影)

「感無量。あんなにピヨピヨだったのに」コーチも目尻下げ

 津覇すみれ(首里3年)を指導し続けた中野徳広コーチ(64)。津覇から銅メダルを見せられると「本当に感無量。小さいころからの練習風景が浮かんでくる。あんなに、ピヨピヨだったのに」と目尻を下げた。

 予選から演技直後に津覇と話し合った。「いいところは褒め、ミスの原因は指摘する。すると次には修正してくれる」。決勝では苦手な技を最初の方に持ってきた。ミスをしても後半の演技で挽回できるように飛ぶ順番を変えるなど、大会を通して津覇を支えた。

 今大会は1週間前から現地で合宿を実施。飛び板にも慣れ、ひねり技がどんどん良くなっていた。上位5人の順位が読みづらい激戦が繰り広げられた決勝で、3位に食い込んだ津覇を「集大成を見せてくれた」とたたえた。

 静岡県出身で、海邦国体の3年前に指導者として沖縄に移住。国体では教え子が表彰台に上ることはあったが、全国総体はまだだった。津覇は「もしかしたら(中野コーチが教える)最後の選手になるかもしれないので、自分で良かったと思ってほしかった。3位という結果を残せてよかった」とほっとした様子。

 「(飛び込みをやりたい人は)いつでもウェルカムだよ。まだ指導を続けていきたいね」。中野コーチの情熱はまだ消えない。

 (屋嘉部長将)