<南風>日本の海岸線を辿る


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 日本写真家協会が65周年を迎え、写真展「日本の海岸線をゆく―日本人と海の文化」が、先月、東京芸術劇場で開催された。周年記念の写真展のため、3年前に実行委員会が発足し、約10万点の写真の中から197点の写真が厳選された。

 そのうちの1枚に、私も参加させていただいている。私自身は協会に所属しているわけではないが、65周年記念の写真展では会員以外からも幅広く作品を集めたのだそうだ。
 日本列島は島国であることから、テーマを「海岸線」として、北は北海道から南は沖縄までを辿(たど)り、各エリアの海辺の絶景や史跡、海と共に生きる人々、祭りや風習―などで構成されている。著名な写真家の作品も多数あり、とても見応えのある展示となっていた。
 今回の私の作品は、市場の人を写した写真が選出された。那覇市第一牧志公設市場の老朽化による建て替え問題が浮上している中、市場で働き、力強く生きる人の姿を収めさせていただいた。
 そして、海といえば、東日本大震災から丸5年が過ぎた。第2展示室では、「震災、その後」と題した関連写真展も同時開催された。震災直後の息を飲むような瞬間を捉えたものや、その後も地道に追い続け、少しずつ復興していくさまに希望の光を見い出すことができる写真などが展示された。
 中央には、津波で輪転印刷機が水没し、手書きで発行し続けた石巻日日新聞の現物があった。絶望的な状況の中でも使命感をもって、地域に必要な情報を届け続けたジャーナリスト魂に心奮い立つ思いだった。
 東京での写真展は終了したが、6月は京都、来年4月は横浜で同展の開催が予定されている。
 また、同展と同名の写真集が平凡社から出ている。関心のある方は、書店でご覧いただけたらと思う。
(桑村ヒロシ、写真家)