海兵隊移駐 「県内」論は破綻している


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 まるで巻き戻した映像を見せつけられたかのようだ。米海兵隊の第1海兵航空団が山口県の岩国基地から普天間基地へ移駐して37年が過ぎた。当時の県議会や県内政党は一斉に反発したが、お構いなしの移駐だった。今回の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備もまた、岩国からの飛来であり、問答無用でなされた。

 昔も今も、沖縄の民意は露骨に無視されるという点で変わりはない。われわれも差別的取り扱いの現実を正面から見据え、理不尽をはね返す取り組みに腰を据えて取り組まなければなるまい。
 それにしても、岩国からの移駐だったという事実が象徴的である。昨年2月、在沖米海兵隊の岩国基地への一部移駐を米国が検討していると報じられるや否や、玄葉光一郎外相(当時)はすぐさま岩国市長に「(一部移転を)お願いすることはないので安心してほしい」と述べた。
 沖縄側が一致して普天間飛行場の県外・国外移設を求めても受け付けないが、米国が県外を検討し始めるといち早く火消しに回る。この歴然とした違いは何なのか。
 まだある。昨年12月の総選挙直後、自民党の安倍晋三総裁は普天間飛行場について「名護市辺野古に移設する方向で地元の理解を得たい」と述べた。沖縄の当選者全員が県内移設反対を主張していたのに、である。
 その記者会見が安倍氏の地元・山口県庁だったのが象徴的だ。岩国から航空団が移駐していなければ、今ごろ沖縄はこれほど苦しんでいない。過去に痛みを沖縄に押し付けておいて、痛みを取り除いてほしいという沖縄の望みは聞こうとしない。これを差別と呼ばなくて何と呼べばいいのだろう。
 安倍首相は1日の参院本会議でオスプレイの沖縄配備について、「沖縄に対する差別とは考えていない」と答弁した。だが野村浩也・広島修道大教授が指摘する通り、差別の客観的証拠があるにもかかわらず、その自覚がないこと自体が、差別そのものなのである。
 過去に岩国にあった事実一点をもってしても、海兵航空団、すなわちヘリ部隊、ヘリ基地を沖縄にしか置けないという論理は破綻(はたん)している。安倍首相も、沖縄への差別でないと主張するなら、普天間問題の解は県外・国外移設以外にない事実を直視すべきだ。