<社説>第46回琉球新報活動賞 沖縄の未来を描く道標に


<社説>第46回琉球新報活動賞 沖縄の未来を描く道標に
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 社会の一線で活躍する気鋭の人物、団体を顕彰する第46回琉球新報活動賞が1団体、4氏に贈られた。賞の基本理念は「一隅を守り千里を照らす」である。地域の子育て、経済・産業振興、芸術の各分野における地道な活動に光が当たった。受賞者・団体の高い志に学びたい。

 NPO法人こども家庭リソースセンター沖縄は、子どもの一時預かりを地域の協力会員が担う「沖縄市ファミリーサポートセンター事業」を受託し運営する。課題を抱えている家族の子育てを地域の中で支えてきた。幅広い年齢層のサポーターが家庭に寄り添ってきた。地域に根ざした活動を続ける與座初美理事長は贈呈式で「子どもの貧困は家庭の貧困。貧困の連鎖を断ち切る活動でありたいと常々願っている」と誓った。
 FMよみたん社長で読谷村商工会長の仲宗根朝治氏も地域に拠点を置き、幅広い活動を展開する。「地域のために働こう」という思いで2008年に創設したコミュニティー放送局「FMよみたん」は、100人のパーソナリティーが村民に話題を提供している。18年に村商工会長に就任し、地域が抱えるさまざまな課題にも関わるようになった。「地域のために非営利団体としての活動を頑張っていきたい」と意気込む。
 建築内装材を製造・販売する沖坤(おきこん)社長の宮城勝氏は「沖縄らしさ、なるべく自然に近いもの」にこだわった製品開発に力を注いできた。そのこだわりは琉球石灰岩や風化造礁サンゴを活用した「塗り壁」などの開発につながった。2000年以降はリサイクルを意識した資材も提案する。贈呈式では「地域にある資源や廃棄物、一見すると無価値に見えるものを価値あるものにしたい」と、ものづくりへの信念を語った。
 海外に拠点を置き、創作活動を展開する芸術家の照屋勇賢氏は社会的な問題をアートで表現してきた。沖縄の歴史や社会を題材にした作品の数々は海外でも高い評価を得た。さまざまな作家とのコラボレートも注目を集めている。来年にはオペラの総合演出・舞台美術を予定する。活動の幅を広げながら根っこは常に沖縄にある。「多様な人を受け入れ、期待される沖縄像をどんどん発信していければいい」と意気込む。
 漫画家の新里堅進氏は、高校生の時に読んだ鉄血勤皇隊の手記「沖縄健児隊」に衝撃を受け、漫画による沖縄戦表現に挑んできた。デビュー作「沖縄決戦」から45年になる。これまでに30作品を手掛け、ウチナーンチュに愛されてきた“県民的漫画家”だ。「五十何年間、沖縄戦を勉強してきたが、分からないことが多い。受賞を機にますます勉強する」と沖縄戦漫画の先駆者は謙虚に語る。
 贈呈式で各受賞者は、地域や沖縄へのこだわりを語った。その活動を道標とし、沖縄の将来像を描きたい。